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メルグウェン姫と騎士ガブリエルの物語  作者: 海乃野瑠
第8章 - ワルローズ城
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8-7

「少し考えてみる」


「既成事実を作ってしまう訳にはいかないのか?」


「結婚ということか?」


「ああ、そうだ」


「誰と?」


「おまえと」


ガブリエルは眉を顰めた。


「俺はまだ結婚するつもりはない。それにあいつはまだ子供だ」


ジョスリンが気遣わしげにガブリエルを見た。


「だが彼女を大切に思っているんだろう?」


「俺はスクラエラの時と同じ過ちを犯す訳にはいかないんだ」


「妹の死はおまえの所為ではないだろう?」


「ちゃんと最後まで反対しなかったのは俺の責任だ」


「父上の決定におまえが逆らえる訳はないと思うが」


「確かにそうだ。だがスクラエラが自分も結婚を望んでいると言った時、俺はそれなら仕方がないと思ってしまったんだ」


ジョスリンは声を荒げたガブリエルに近づき肩を叩いた。


「分かったよ。妹もこんな兄貴がいて幸せだったな」


「だから、あいつは幸せにしてやらないと俺の気が済まないんだ」




ノックの音がすると扉が開いてアナが顔を覗かせた。


干した杏と葡萄、それに胡桃を載せた皿を持っている。


心配そうに二人の顔を窺うアナを見てジョスリンは笑った。


「何だ?俺達が隠れて悪戯していないか見に来たのか?」


「アナ、夏から忙しくなるぞ。パドリック殿をここで預かることになった」


胡桃を齧りながらガブリエルがそう言うと子供好きなアナは嬉しそうにした。


「おやまあ、それは賑やかになりますね」


「できるだけガビックに世話をさせるようにしろよ」


笑いながらジョスリンがそう言うと、アナはガブリエルを見ながら言った。


「姫も小さいお友達ができて喜びますよ」


「そうだな。あいつに子守をさせてもいいな」


アナは二人の顔をかわるがわる見て言った。


「姫は本当に優しくて気立ての良い方です。それに我慢強くて働き者で…」


「何だ急に」


「分かってるよ。それにとても美しい方だ」


ジョスリンが宥めるようにそう言うと、アナはホッとした顔をする。


「スクラエラ様はそれはそれは見事な金髪を持っておられましたけど、姫の黒い髪も艶があってとても美しいんですのよ」


「あいつの髪って黒かったか?」


「ガブリエル様!!姫は何か叱られるようなことをしたのではないかと心配なさっています。何かございましたか?」


ガブリエルはチラッとジョスリンの方を見た。


「いや、何もない」


「そろそろ広間に戻るか?」




ガブリエルとジョスリンが広間に入ると、そこにいた全員が話すのを止め二人を見た。


部屋でアナを待ちきれなくなり、広間に下りてうろうろしていたメルグウェンも不安そうな顔でガブリエルを見つめた。


ガブリエルが話し始めた。


「夏から兄上の長男のパドリック殿を我が城で預かることになった。彼が一日も早く立派な騎士となるように皆の協力を頼む」


「ふつつかな息子だが宜しく頼みます。厳しく育ててやってください」


ジョスリンも頭を下げた。


皆ががやがやと話し始める中、メルグウェンは目を丸くした。


ガブリエルの甥のパドリックのことはルモンから聞いていた。


何でも叔父そっくりで大変な悪戯っ子らしい。


でもまだ幼いのではないか?


そんな小さな子を親から引き離しても大丈夫なのだろうか?


メルグウェンは自分の弟を想った。


二人の兄弟が相次いで亡くなった為、父親はマルカリードを別の城主に預けず手元で育てることを望んだ。


この前会った時は随分としっかりしてきた様に感じたが、幼い時は本当に泣き虫で意気地なしの子供だった。


乳母や子守がついてくるのかしら?


母親の代わりとはいかないけれど、姉の代わりに優しくしてあげようとメルグウェンは思った。


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