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メルグウェン姫と騎士ガブリエルの物語  作者: 海乃野瑠
第8章 - ワルローズ城
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8-6

黄金色に染まった木々の間をゆっくりと進む皆の所にガブリエルが蹄の音を轟かせて戻ってきた。


片手に鴨をぶらさげている。


「久し振りにすっきりした」


獲物を狩猟係に渡すと、そう言って笑いながら袖で額に光る汗を拭った。


皆が口々に絶賛する中、メルグウェンはメリアデックと話しているガブリエルを見つめて呟いた。


「運が良い人だこと」


黒い帽子を被り濃い青の外套を纏ったガブリエルは、その所為でいつもは灰色の目が青く見える。


隣にいるメリアデックは緋色と鼠色のいでたちで、それが髪の色を際立たせ大層似合っていた。


それぞれ鼠色の芦毛と純白の月毛の馬に跨った二人は絵から出てきたように凛々しく美しく見えた。


その後は騎士達は競い合って獲物を狩った。


ミルディン2世も立派に勤めを果たし、メルグウェンは得意げに美しい緑色の雉を狩猟係に差し出した。


結局、鴨2羽と野兎1羽を仕留め一位になったのは意外なことにメリアデックで、嬉しそうに皆の賛辞を受けている。


メルグウェンが側に行って祝いの言葉を述べると照れたような笑顔を浮かべた。


城に戻った一行は広間に赴き食事の準備してあるテーブルに着いた。


次から次へと運ばれてくる料理に皆は感嘆の声を上げた。


習慣で狩猟の後は客を招き何時間も続く豪華な食事を楽しむ。


それは城下町の貧しい者達にとっても嬉しい習慣で、余った食べ物は皿代わりに使われたパン切れと一緒に彼らに与えられる。


メルグウェンは隣に座ったメリアデックと話し、外見に反して彼がルモンと同い年だということを知って驚いた。


メルグウェンの素性については何も尋ねずに自分の話、過去の失敗談や子供の頃の話をするメリアデックにメルグウェンは好意を持った。


メリアデックは少年時代を首都に近い城で過ごしており、メルグウェンがまだ行ったことのない首都の話を聞かせてくれた。


王の宮殿がある、ワルローズやバザーンよりももっと大きな都ラゾン。


石畳で敷き詰められた道や美しい広場、高く聳える塔を持つ聖堂、貴族の住む豪奢な城、地方や外国から来た商人が集まる大きな市や沢山の店の話にメルグウェンは目を輝かせた。


だが騎士達はそれよりも都で行われる競技大会や馬上槍試合、それから王の軍隊に興味があるようだ。


またジュディカエル王が改宗し、国内で信徒を拡大しつつあるベルビザン教も話題になった。


王に近い貴族達は入信した者が多いそうだ。


メルグウェンは皆の話を黙って聞きながら、でも神々は自分達から去っていく人々に罰を与えないのかしらと思った。


新しい神が守ってくれるのかも知れない。


メルグウェンは聞いた人が皆涙を流して感激するというロパルゼ僧の説教を聞いてみたいと思った。


その夜はメリアデックとその騎士達はワルローズ城に泊まり、翌朝早く自分の城に帰って行った。




ある冬の日、朝からワルローズの城は騒がしかった。


ガブリエルの兄のジョスリンが尋ねて来たのである。


メルグウェンはジョスリンに会うのは初めてであったが、一目でガブリエルと兄弟と分かる容貌とその柔和そうな感じに親しみを覚えた。


ジョスリンはガブリエルについて城を見学した後、二人で書斎に閉じ篭った。


広間に集まった騎士達は何かあったのだろうかと不安げに顔を見合わせた。


メルグウェンも先程廊下で擦れ違った時にガブリエルの様子がおかしかったことを思い出し不安になった。


まるで私を怒っているような目で見ていた。


全然怒られるようなことはしていないと思うのだけど。


部屋に戻ったメルグウェンはアナに言った。


「アナ、書斎に葡萄酒を持って行って、様子を見て来てくれないかしら?」


「葡萄酒は先程ガブリエル様がご自分で持って行かれましたから、何か摘む物でも持って行きましょう」


アナがそう言って出て行ってから、メルグウェンは落ち着かずに部屋の中を歩き回っていた。


風が強いので雨戸を閉めてあり、部屋の中は薄暗い。


暖炉には赤々と火が燃えている。


時折雨戸の隙間から風がヒューと鋭い音を立てて吹き込んだ。




棚に飾ってある砂時計を次々とひっくり返しながらジョスリンが言った。


「うまくいっているようだな」


立ったまま壁に寄りかかっているガブリエルが答える。


「まだやらなきゃならぬことは山ほどあるけどな」


「ワレックの家来にも慕われているようだし、こんな短い期間でたいしたもんだ」


「自分に仕える者を大事にしろ、家来に背かれるほど城主として惨めなことはないと父上が言っていただろ。それを実行に移したまでさ」


「それで、息子の件は受けてもらえるか?」


「ああ、勿論だ。来年の夏だったらパドリック殿は6歳になったばかりか?俺が叔父上の所に行った時と同じ歳だ」


「叔父上の苦労が身に染みて分かるだろうよ」


兄弟は顔を見合わせて笑った。


二人は暫く思い出話に花を咲かせていたが、ふと真面目な顔に戻ったジョスリンが聞いた。


「それから先程の件だが、どうするつもりだ?」


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