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4-5

メルグウェンは身を隠す場所を探していた。


父親の城なら絶対に見つからないという自信のある場所もあったが、ここは知らない城だ。


広間の下は台所だろう。


衣裳部屋はどこだろう?


礼拝堂は?


父の城には礼拝堂の隣に書物を保管している小部屋があった。


広間の横の小さな扉を開き階段を上がり始めた時、下から叫び声と入り乱れる足音が聞こえてきた。


とうとう敵が主塔に入って来たのだ。


メルグウェンは慌てて階段を駆け上がり、初めに目に入った扉を開いて中に入った。


何のための部屋か分からないがここに隠れよう。


あまり使われていない部屋の様で、中の空気は冷たく黴臭い。


メルグウェンは燭台の火を消すと邪魔にならないように隅に置く。


そして、剣を持って扉の横に立ち、侵入者を待ち構えた。




自分より若い騎士を相手に戦っていたザルビエルは次第に疲れてきた。


自分の側にいた家来は二人共騎士達に斬られ、地面に横たわっている。


今相手をしている騎士は、打ち合いながらも色々話しかけてくるのでザルビエルは苛立っていた。


相手を何度か傷つけたが、いずれも軽傷だったようで攻撃は弱まらない。


「お相手しよう」


ザルビエルと同じ位の背丈の騎士が近づいてきた。


交代するようにおしゃべりな騎士は横に飛び退いた。


今度の騎士は他の者とは比べ物にならぬほど強かった。


だがザルビエルは最後の力を振り絞って戦う。


前領主から受け継いだバザーン。


ザルビエルの代になってから、道路の整備、大聖堂の修復工事、港の拡大等によってより多くの商人を向かえ、更に繁盛した町。


この一瞬で失うにはあまりにも惜しかった。


しかし疲れはザルビエルの動きを鈍らせ、肩に強い一撃を食らった城主はついにガクリと膝をついた。


剣を下げたガブリエルが近づいて来る。


「私は城主殿を殺すつもりはありません。隊長に判断を任せます」


そう言うとザルビエルの腕を取って立ち上がらせ、捕虜を丁寧に扱うことを頼んだ上でメレイヌの兵に引き渡した。




乱暴に扉が開かれた。


メルグウェンは両手で剣を持ち、誰か入ってきたら斬りつけようと身構えていた。


「何もねえよ」


「何だ、つまんねえ」


強い訛りでそう話し合う声がする。


入っては来ないようだ。


メルグウェンは足音が遠ざかるのを待って扉を閉めた。


しかし見ていた者がいた様だった。


「おい、誰かいるぞ」


「誰だ」


「出て来い、城は落ちたぞ」


口々に扉の前で叫んでいる。


何人いるのだろう?


メルグウェンは唇を噛み剣を握り締めた。


ではザルビエルは殺されたのだ。


奥方と娘達はどうなったのだろう?


メルグウェンは胸に溢れる不安を無理矢理打ち消し、扉が開かれるのを待った。


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