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その日のうちにガブリエルは騎士達に仕事の話をした。
4人共乗り気だったが、ガブリエルは少々確認したいことがあると言ってすぐには決断しなかった。
翌朝早くから父親に会いに行ったガブリエルは、キリルとジョスリンに大雑把な話を伝え、この依頼が本当に王から出ているのか内密に調べてもらうように頼んだ。
後で王からではないと分かり、罰せられたり責任を取らされるのは真っ平だった。
自分一人だけならまだしも、仮でも城主の立場にあるガブリエルは、他の騎士や家来をそのような危険にさらす訳にはいかなかった。
落ち着かない数日を過ごした後、ガブリエルは、貴族の連絡網を使って情報を調べたキリルから呼び出された。
「確かに王から出た話だそうだ」
「そうですか」
「メレイヌ家、フィルド家が拘っているので、おまえ達が非難されることはないと思われる」
「はい」
「この話、受けるつもりか?」
「そうしたいと考えております」
「非情なことはするな」
「分かっております」
ジョスリンは弟の身を案じているようだ。
「ガビック、気をつけてな。ちゃんと帰って来るんだぞ」
「ああ、勿論だ、兄上」
ガブリエルは城に戻ってこの話を騎士達に伝え、約束通りに答えを聞きに来た使者に依頼を受けると答えた。
使者は早速7500ゾルをガブリエルに渡すと、作戦の詳細を語り始めた。
使者を引き止めて、ガブリエルは他の騎士達を書斎に呼んだ。
作戦を説明すると案の定、騎士達は色々と質問をしてくる。
「バザーンの城主とその家族は生け捕りにすればいいのですか?」
「王はザルビエルとその奥方、娘二人を捕虜にすることは望まないと仰せられた」
何事もはっきりさせないと気の済まないモルガドが尋ねる。
「殺せということですね?」
使者は言葉を濁しはっきりと答えなかったが、王の望みはそういうことだろう。
「作戦は収穫感謝祭の前夜と聞きました。神々の祟りはないのでしょうか?」
信仰が厚いパバーンが聞いた。
「王はベルビザンの神を信仰されている。それ故、収穫感謝祭に纏わる迷信は信じておられない」
「ベルビザンとはここ何年かで信者が急激に増えている新しい宗教だ」
「アイルカ島から来たベルビザン教の僧が宮廷に来てからですね」
セズニはおしゃべりで話を逸らすのが得意だ。
「今やロパルゼ僧は王のお気に入りと聞いている」
「まあ、それはいいさ。だが私達にも祟りはないのだろうか?」
既にキリルの城の祭司に確認しているガブリエルが答えた。
「感謝祭の期間は休戦する習慣だが、宗教的には何も定められてはいないそうだ」
「礼拝の最中ならともかく、前夜だから問題ないだろう。どうぞ続きをお話しください」
使者に話を続けるよう促した。
「貴方方には変装してバザーンに潜り込んで頂きます」
「何に変装するかは自由なのだろうか?」
騎士達の中で一番若く洒落者のドグメールが尋ねる。
「騎士と分からない服装だったら何でも構いませんが、あまり目立つようなご格好はお止めください」
メレイヌの軍との合流の時刻と場所を伝え使者は帰って行った。