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メルグウェン姫と騎士ガブリエルの物語  作者: 海乃野瑠
第3章 - ガブリエル
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3-2

ジョスリンとガブリエルは子供の頃から仲の良い兄弟だった。


剣が持てる歳になると二人共、母方の叔父ルゲーンの城に送られた。


近くの貴族の家から同じ様に送られて来た同年輩の少年3人と、ルゲーンの小姓として4年間勤めた。


その後、二人は近習に昇格し、ルゲーンの側で更に4年間勤めた。


ルゲーンは自分の甥達を他の少年達と少しも区別せずに厳しく鍛え上げた。


特に乗馬、剣、槍、弓等の武器の扱い、一対一の戦い、多数の敵を相手にした戦いの戦略等、様々な厳しい稽古を受けた。


全てにおいて平凡なジョスリンに対して、ガブリエルは乗馬と剣術の上達がずば抜けて早く、実戦の経験も多いルゲーンが舌を巻くほどの戦略を考え出した。


確かに子供の頃から、誰も思いつかないような突飛なことをやらかしては、周りの人々を散々な目に遭わせてきたガブリエルであった。


ガブリエルがまだ幼いうちにジョスリンと一緒に叔父の城に送り込まれたのは、彼を扱いかねた両親が困って叔父に頼み込んだという理由がある。


彼が考えつく数多くの悪戯のとばっちりを一番先に食うのは兄のジョスリンだったが、ジョスリンはあまり怒ることも無く弟を庇っていた。


叔父の城に着いて初めに思いついた悪戯は、人間大型投石器を作ることだった。


小姓の少年達が誰も実験台になろうとしなかったため、自分自身で試し、手足を縛られたまま川に飛ばされ溺れかけた。


それを知った叔父はガブリエルを殴ったが、説教をしているうちに笑い出してしまい、それっきりになったのだった。


数年後、近習の少年達と僅か5人で、叔父の隣人の城主を騙して誰も傷つけることもなくその城を占領した時には、大騒ぎになった。


騙されて自分の城を追い出された城主が激怒して王に訴えると言い出し、訴えを取り下げてもらうためルゲーンは苦心惨憺した。


その時もルゲーンはガブリエルをきつく叱ったが、その後にあれは名案だったと笑ったのだった。


大きくなるにつれ多少落ち着いてはきたが、怖いもの知らずで短気、そして楽天的な性格はそのままだった。




成人したジョスリンは翌年の春、父親と叔父に付き添われ首都に赴き、王に騎士の称号を授けられた。


故郷の城に戻ったジョスリンは妻を娶り、時期城主として父親と行動を共にしていた。


ジョスリンよりも3歳年下のガブリエルは、ジョスリンがいなくなった後も叔父の側に残り、やっと半年前に騎士となり、キリルの城に戻って来た。


この時代、貴族の長男以外の息子は、軍人になるか、聖職者になるかのどちらかだった。


ガブリエル達の弟もまだ幼い頃から修道院に入って暮らしている。


その弟とは殆ど顔を合わせることがない。


ガブリエルの将来はもう決まっていると言っても良かった。


他の城主のお抱え騎士となるか、首都に上り王軍の兵となるかのどちらかである。


しかし、父親のキリルはガブリエルが自分の側から離れることを望まなかった。


彼の無鉄砲な性格が災いして何か騒ぎを起こし家の恥となることを恐れてもいたし、城主として彼の力を頼りにしていた。


キリルが跡継ぎのジョスリンと話し合って決めたことは、ガブリエルに少しの土地を与えて管理させることだった。


その土地には、キリルの父方の祖母が夫を亡くした後、余年を過ごすため建てられた小さな古い城があった。


ずっと使われていなかったため、多少の修復工事が必要だった。


キリルが金を出し、工事がやっと終わったのが一ヶ月前だ。


それからガブリエルはその城で暮らしていた。


彼は城主ではない。


城主はあくまでもキリルであり、ガブリエルはキリルの持ち物である城に住まわしてもらっている訳だ。


そのため、一ヵ月に一回キリルへの報告を義務付けられていた。


そして今日は2度目の報告の日だった。


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