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2-6

それから、見違えるほど大人しくなったメルグウェンを見て、やはり厳しく指導したことが良い結果を招いたと教育者達は頷いた。


やがて季節は移り変わり、陽の光は弱まって風は冷たくなり木々は黄金色に染まった。


ある午後、薬草庭園の手入れをしていたメルグウェンは、頭上から聞こえてきた鳥の騒がしい声に痛む腰を伸ばし空を仰いだ。


渡り鳥が群れを成して南に向かって飛んで行くところだった。


鳥は自由だ。


翼の無い私はここに縛られている。


鳥達が戻って来る頃には、婚礼の支度のため城に帰らなければならない。


そして、夏至の祭りにはネヴェンテルの奥方となる。


夜、終課を終え自室に引き取ってから、メルグウェンはマルゴーと悩みを打ち明け合うことが多くなった。


マルゴーは子供の頃から一緒に育った従兄と婚約していたが、隣国の大学に行っていた従兄が1年前病で亡くなってしまった。


花嫁修業のため修道院に入れられていたマルゴーは、そのまま親が新しい結婚相手を見つけるまでの間、バザーンに残ることになった。


マルゴーは従兄が忘れられず、修道女になるつもりはないが、家に戻るのも気が進まないのであった。


「フロリアンとは5年前から離れ離れだったから、死んでしまったという実感がわかないの。他の人と結婚はしたくないけど、家のためだから諦めてるわ」


「私は諦めきれないの。家のためでもあんな爺と結婚するなんて死んだ方がましよ」


「でも具体的に結婚を止めさせる手立てはないんでしょ?」


「色々考えているの。逃げ出しても野垂れ死にはしたくないし」


「女が一人で生きていくのは無理よ」


「あーあ、私が男だったら、剣一本で身を立てるのに」


「そういえば、夏に家に帰った時に噂で聞いたのだけど、最近お金で雇われて戦をする雇われ兵が西部に増えているそうよ。何でも貴族の次男坊が金稼ぎのために自分の部下の騎士を引き連れてそういうことをやっているという話だったわ。いざという時には戦力になるから王も非公式には認めているみたい。バザーンは絶対落ちないと言われているから安心だけど、故郷の町では戦に備えて色々準備をしていたわ」


「物騒な世の中よね。私の家も隣人との領地争いが絶えなくて、父は私を戦力を持っている男に嫁がせることで自分の城を守ろうとしているのよ。あんな山奥の領地なんかあったってどうってこともないと思うんだけど。どうして男って自分の持っている物だけで満足しないのかしら?」


「それが人間のさがなんでしょうね」


「嫌だわ。そんなことのために犠牲にされる娘達はそういう運命だったっていう訳?私は絶対に最後まで諦めない」


そう言い切ったメルグウェンだったが、良い考えは全然思い浮かばなかった。


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