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13-12

ガブリエルは小姓の差し出す布を何も考えずに受け取ったが、その時ちらと見えた横顔がメルグウェンに似ているように思え苦笑いした。


のろまの小姓があいつに似て見えるなんて、俺も相当重症だな。


頭をガシガシ拭きながら、洗面道具を片付けている小姓の方を横目で見る。


小姓はガブリエルの方に背を向けて屈み込んでいて顔は見えない。


だが、その腰の辺りを眺めていると、何故か体が熱くなりガブリエルは慌てた。


おいおい、俺はおかしくなっちまったんじゃないのか?


確かに随分と女には無沙汰しているが、何で男に欲情しなければならないんだ。


大股に衝立の方に歩いて行きながら、ガブリエルは首を捻った。


衝立にかけてある新しい肌着を身に着けると、もう一度小姓の方を見た。


二人の目が合った。


小姓は赤くなり、さっと顔を背ける。


やっぱりあいつに似ているぞ。


ガブリエルはそう思って小姓に近づいた。




メルグウェンは逃げ出すことしか考えていなかった。


どうしても男の方に目が行ってしまうのだ。


顔をみられてしまったわ。


私だって気づかれたかしら?


ガブリエルが近づいてくるのを見たメルグウェンは、何も考えられなくなり、身を翻すと扉に向かって駆け出した。


だがガブリエルに先を越され、メルグウェンは扉に手を突いたガブリエルに囲われる形になった。


「何故逃げる?」


メルグウェンは扉の方を向いたまま、小さな声で答えた。


「台所に戻らなくては叱られます」


「おまえは台所で働いているのか?」


「はい」


ガブリエルはメルグウェンから離れた。


「そんなに怯えなくてもいいぞ。俺は男には興味ないから」 


メルグウェンは扉に手をかけたが、ガブリエルの声を聞いて立ち止まった。


「台所に戻る前に服を着るのを手伝ってくれ」




ガブリエルは自分の体を持て余していた。


逃げ出そうとするのを見ると、我慢できずに追いかけちまった。


服を身に着けながら、苦笑いする。


こいつが怯えるのももっともだ。


俺だってこの位の小僧で、俺みたいな大男が半裸で襲って来たらそりゃ逃げ出すわ。


「何て名前だ?」


「……グウェネック」


嘘だろ?


あいつの弟……の訳ないよな。


「グウェネック、おまえは俺に誰かを思い出させるんだ」


小姓がはっとした顔をしてガブリエルを見た。


その期待を込めたような眼差しを見てガブリエルは思った。


こりゃ、似ているなんてもんじゃないぞ!


何であいつがこんな格好をしてここにいるんだ?


期待しちまっていいんだろうか?


「だが、おまえが薄鈍の粉屋の息子に似ているのか、怠け者の馬丁に似ているのか、さっぱり分からない」


顔を赤くしたり青くしたりしているメルグウェンを面白そうに見ながらガブリエルは続けた。


粉屋の息子は領地を見回りに行った時にメルグウェンも見ているし、酒飲みの馬丁は城でも有名なのだ。


「それとも、俺がこれから結婚を申し込もうとしている娘に似ているのか」


メルグウェンはビクッとすると悲しそうに項垂れた。


ガブリエルは堪らずにその手を取った。


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