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第一章 14 リズカード・オーウェン

 その日、リズカードを襲ったのはフーロによる質問の嵐だった。


「ねえねえ、リズ様、リズ様って呼んで良い? 昔ってホントに魔法あったの? 大学都市の全部の学位取っちゃったのってマジ? 十六歳から市政委員になったのってヤバない? アモルドの戦いで川の向き曲げたのってホント? というかどうやって最後の戦い生き延びたの? 他の十賢晶も生きてるの? ねえねえ……リズ様!」


 賢迅がよほど大好きらしくてどんどん訊いてくる。本当のこともあれば、何の話だということもあって逆に興味もそそられるが、リズカードの態度は一貫していた。


「悪いが教えることはできない」


 社風として丁寧な口調は不要、ということなので、リズカードは使い慣れた語調でそう告げる。その回答にフーロは目を剥いた。


「ええ、なんでー!」

「歴史上の本人が登場して、本当かどうか教えたら〈それ〉でしかなくなる。俺は矢をかわしながら敵陣に突っ込んで魔法をぶちかましたことなんてない、って言ったら興醒めだろう」


 少し読ませてもらった漫画「クリスタル・ハーツ」の一場面だった。


「うー……それはそうかもだけど、それとこれとは話が違うっていうか……」

『どっちにしたって初対面で質問攻めはないぜ。ボスはそういうとこあるよな』

「うっさいなー! 賢迅が自分の会社に来たら誰だって浮かれるだろ!」


 頭の上に飛んできたスナウをフーロは上目遣いで睨みつける。見たこともないその喋る黒いヒヨコに、リズカードは訊ねた。


「ところでその人形はなんだ? どうして喋る? どうやって飛ぶ?」

『あん? オレはスナウだよ。汎用AI搭載のドローンで、フーロが寂しさ紛らわすために作ったんだ』


 フーロが「おい、言うなって!」と暴れるので、スナウはリズカードの肩へ避難してくる。


「ふむ……汎用AIとは何だ?」

『ざっくり言うとAIは人工的に作られた知能のことだよ。で、もともとAIは会話とか画像生成とかひとつの得意分野しか持たなかったのを、全部できるようになったのが汎用AIだ』

「ほお? どうやって知能を作る? 知識がその身体に全て入ってるのか? どうやってこちらを認識している? どうやって飛んでいる? その声はどこから出している?」

『昔はビッグデータっていう厖大な情報から機械学習させてたんだけど、途中から──』

「……確かに質問攻めはないかも知れない」


 疑問を無限に繰り出すリズカードといくらでも答えるスナウの間で、置いてけぼりにされたフーロは真顔で言った。

 ──その後、リズカードはいくら質問してもうんざりせずに、正確な情報を返してくれるスナウと大量の対話を重ねて、この時代の知識をものすごい勢いで吸収していったのだった。

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