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ラノベ作家志望、文化祭の劇で台本書くことになったんだが  作者: 雨水雪


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3/23

3話

 午前〇時、魔法が解けた。

 

「うそうそうそうそ、なんでぇ? うそうそうそうそうそ! ない、ないぃ!」

 

 布団の上でゴロゴロネットサーフィンを楽しんで、かなりウトウトしてきた。そろそろ寝ようかな、と思った時。ふとお昼の会話が脳をよぎった。せっかくなので狙っている賞の募集要項だけササっと確認してから明日を迎えよう、そう考えてハイパーリンクを指で突いた。

 

 やばい。やばいやばいやばい!

 

 今年度から手書き原稿での応募は不可。

 

 たったワンセンテンスで、ヒトは天国から地獄へ急降下させられるらしい。冷や汗がダラダラと額を伝う。この一文を、見逃していた。見逃してしまっていた。

 

 他の出版社の新人賞はどうだ。必死に画面をスクロールする。ここはダメ。ここもダメ。ここも、ここもここもここも…………。

 

 調べた結果、大御所のコンテストはほぼ全て専用の応募プラットフォームでの投稿となっており、郵送での参加を募る会社はなかった。提出するには、ファイル? というもので出さなければ規約違反になるらしい。試しにスマホで専用フォームを開いてみたものの、真っ白のまま固まって動かなくなった。私パソコンとか持ってないし。お父さんのは仕事で使ってるから勝手に触るなって言いつけられてるし。

 

 ラノベというカテゴリーにさえ拘らなければ、直筆のものでも受け付けてくれる場所はある。が、それはいわゆる五大文芸誌が主催しているもの──集英社が取り仕切る小説すばる新人賞は既にエントリーを全て電子化した──であって私が好んで出力するカジュアルなテキストは論外かもしれない。下読みの方が愚痴をこぼしながらクシャクシャに丸めてゴミ箱にポイしてる情景がありありと瞼に浮かぶ。文學ガチ勢御用達の聖域に踏み入れる勇気など私には微塵もない。

 

「どおしてぇ、なんでよもおぉぉ…………」

 

 詰んだ。

 

 さよなら、私の四ヶ月分のお小遣い。さよなら、私の華麗なる小説家デビューへの道。さよなら、携帯にコソコソ認めた堂々完結の異世界もの。

 

「ユウカー? すごい大きな声聞こえたけど大丈夫?」

 

 ドアを数回素早くノックする音。あ、お母さん起こしちゃった……。

 

「あっ、ごごめん。なんでもないよ。大丈夫。大丈夫だから!」

 

「そう? 夜中だからあんまり大きな声出さないでよ。お隣さんにも迷惑なんだから」

 

「ぁうん。そうだね、ごめん……。うん。もう寝るから! おやすみ!」

 

 半ばヤケになってシーリングライトの紐を引っ張る。辺りが真っ暗に。勘で夏掛けと布団の間に潜り込んだ。

 

「ったく…………まったくあの子ったら……」


 こんなことになるんだったらイキって付けペンなんて買うんじゃなかった。通学路に点在する買い食いの誘惑に耐え難きを耐え忍び難きを忍んだ日々はなんだったの………………。

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