「伴死」と荒野のグルメレース!
注意!
一、ここから先は、チャレンジステージです。途中で力尽きたら、その場でリポップはできません。
一、このお話の主人公は、人間より遥かに強いです。急いでご飯を食べる描写が見られますが、決して真似しないでください。
「死を思い、死を拒み、死を呪え」
荒野に広がる世界の臍穴。荒風撫で吹くフライドキャニオンの熱谷にて、片羽織の女が縁に立つ。
「伴死とは迫る死、伴う死」
高い位置で結んだサイドテールが熱風にあおられて、のたくった形でバラけて、なびく。
袖無しにした剥き出しの肩が、日射しに照りつき、白くひかる。
「死をうたい、死を与え、死を刻む」
女は手首の具合を確かめ、両手の中ほどから指先までを、葡萄酒色のビームで薄く包む。
それからアンクルブーツの底を擦り、一気に穴へと飛び込んだ!
「わたくしは「伴死」。切りつける、タリアトーレ」
唐揚げ衣の谷壁を滑り、穴の底へと降りてゆく。
途中に生えたトマトやメロン、ソフトクリームにクリームソーダ、マカロンひとつを拾うと伴死は、第1ステージのレーンへ入場。
そこは巨大なホールケーキに囲まれた縦穴。
すぐさま、ボスキャラクターのガイナズカルが、クリームまみれの巨大トラバサミ口を開く。
「うお~! ステージ1の番人、ガイナズカル! ここを通るものは、母親だろうと容赦はしない!」
「押し通る! フンッ!」
伴死は両手にビームで形成した西洋小太刀を握りしめると、二刀流でガイナズカルに襲いかかった。
スポンジ生地の足場に降り立ち、ドラゴン頭のガイナズカルに太刀を振るう。
「ガキーン! 愚か者めっ。このガイナズカルの唯一の武器、サーベル海キバが単純な攻撃に破れるか~!」
「なるほど硬いし、言うだけあるわね。ならば、"硬さ"斬り。無敵よ、さらば」
弾かれた太刀を慌てずに、伴死は片手のもうひと振りで切りつける。
すぐさまガイナズカルの自慢のキバが、そよ風にヒビ割れ、砕け散る。
「ボッコ~ン! あががっ!? そんな~!」
「終わりよ、ガイナズカル。"生命"斬り!」
「うわ~! ズカル死せども、牙歯は死せず~!」
手足を伸ばして、弾けて消えるドラゴン頭。
伴死は足下のドーナツを拾うと、辺りのホイップ壁をすくって、幸せ目閉じで頬張った。
第2ステージはお団子横丁。空間が歪んでいるので、晴れた空を屋根にしており、伴死は原住民の岡っ引きどもからアスファルトを蹴って逃げていた。
「ケーキ、ソーダ、アイスクリーム。ようかん、きんつば、串だんご……」
「待て~! 待ちやがれィ、ケーキ泥棒!」
「お姉さん! 作りたてのカップ焼きそば、いかがですか?」
「もらうわ。ありがとう」
伴死は神速でたぬきそばをすすり飲み、雪女のフリザーからカップ焼きそばを受け取る。
焼きそばを拾ったご飯と一緒に食べて、伴死は小太刀を両手に振り向いた。
「ごちそうさま。そして、さようなら。おまわりさん達」
「うわ~! 止まれ、やめろっ。その武器を手放せ~!」
岡っ引きのヴェロキラプトル軍団が慌てて立ち止まろうとするが、伴死は容赦なく小太刀を閃かせて、駆け出した。
「うぬ、向かってくるだと!?」
「生意気な、小型肉食恐竜の格闘性能を分からせてやる!」
「うわぁ! 消えたっ。は、速いっ!」
伴死は人外じみた超スピードで軍団の山を駆けずり回り、ひらひらと剣閃をはしらせる。
ラプトルどもも頑張ってツメを振りかざすが、そのどれもが、はためく羽織の裾にすら当たらない。
やがて、伴死が山から離れたアスファルトの上に膝をついて着地すると、ラプトルの山に無数の斬撃が吹き荒れた。
「"生命"団子、乱れ斬り」
「うわわわ~! 参りました~!」
ラプトルの山が弾けて星となり、起立した伴死が道路を駆ける。
固めのプリンをとって食べると、第2ステージはゴールクリアだ。
次のステージはソーダゼリー湾。
南国のヤシのみ島を走って走って、とにかく走って、アロハを着た伴死はサングラスの目でボスを見た。
「止まれいっ。ここは海洋ステージ! 天玉オトビメたる、この吾に勝てると思うてか!」
「どきなさい、オトビメ! ゴールは貴方の背後にある!」
ピンクリボンの輪っかを揺らし、海の衣の裾がたゆたい、天玉オトビメが立ちはだかる。
伴死はサングラスを投げ捨てて、小太刀を構えて走り出した。
ガキンキンキンギキン! 刀と水の玉が何度もぶつかり合い、両者の位置も荒れ変わり入れ替わり、激しい攻防の嵐が砂と白波を弾き散らす。
ついにオトビメが空へと飛び立ち、長いピンク髪を尾ヒレのように揺らめかせ、最強の技を発動する。
「落ちよ、高波。荒げよ、嵐。渦ふり落ちれば辺りはまさに、絵にも描けない地獄絵図!」
「伴死は迫る死、伴う死。死を思い、死を拒み、死さえも死なせてみせましょう」
負けじと伴死も背中を向けて刀を交差させて、最強の技を発動する。
たちまちオトビメの頭上で展開された渦が落とされ、伴死の小太刀が振り抜かれた。
「黙示録の赤い渦!」
「最強"威力"斬り。周断ち!」
無数の水の柱が注ぎ落ち、渦が台風となって暴れ狂う。
一種の固有世界と化した空間は、しかし瞬時に真っ二つに切り裂かれた。
即座にオトビメは片手を構え、素早く水の渦を詠唱する。
伴死は神速で砂を蹴り、オトビメへ跳躍で肉薄した。
「万濤。洪水胎砲!」
「"生命"斬り!」
小太刀が閃き、水の竜巻が発射される。伴死の姿は瞬時に消え去り、渦の柱が地面に届いて抉りとる。
うねる柱が砂地を削り、島を貫き、海を揺るがす。その時間の長さは、オトビメがする伴死への警戒の度合いを、如実に表していた。
が、しかし。
「"距離"斬り。知ってるかしら、オトビメ。勝利の一撃こそ、人は最も油断する」
「なっ!? いつの間に背後に! 貴様ァ!」
「これが瞬間移動よ。遅いわ、オトビメ! "生命"斬り!」
背後に現れた伴死に、オトビメはキャンセル動作が間に合わない。
振り向いたオトビメは切り捨てられて、怒りの顔で炸裂四散した。
「……ふうっ! さあ、そろそろチェックポイントね。今度こそゴールしてやるんだから」
ざしゃっ、と砂地に着地して、オトビメの残骸雨を浴びながら、伴死はハンバーガーに、ぎゅっと噛みつく。
この先は第1チェックポイント。セーブ地点の王城の間だ。
「わ~はははは! 我こそキング、食べ皇帝キング帝王!」
「出たわね。……我ながら、あのマヌケ面に勝てないなんて、何度やっても納得いかない」
デカ広い、長い謁見の間。足を生やした皿の上で、塔のように高い山盛りパンケーキがフォークの杖を振り上げた。
ばらばらと各種ベリーが溢れ落ち、山盛りフライドポテトを抱えた伴死が、しかめ面でホットドッグをかじる。
パンケーキ王はロングナイフの槍を召喚し、高らかに掲げて宣言した。
「でぇい! 王の宝剣、キング・エクスカリバー!」
「槍よ?」
「放て! フランクフルト・ハープーン!」
たちまち王の背後に油まみれのフランクフルトが何本も現れ、ケチャップとマスタードの尾を引きながら伴死へと殺到する。
伴死は"時の流れ"から自身を切り離し、抱えた全てを急いで食べた。
鳴り響く連続爆発音。王城の壁を蹴り駆けながら、伴死は残りのフライドポテトを口に詰め込む。
背後に最後のフランクフルトが突き刺さり、爆炎を背にして伴死は王へと躍りかかった。
「死ね! "パンケーキ"斬り!」
「王は死なん! ナイフ盾ガード!」
ナイフの面で斬撃を止められ、床に転がる伴死の体。
転がった勢いで起き上がる彼女めがけて、フォークの杖がキラめいた。
「でぇい! 王の崩槍、ロンゴミニアード!」
「杖よ?」
「いちいちウルサイ! 民の犬好きとて、王が猫と言ったら猫なのだ!」
ガギンバギンガキン!
太刀とクソデカ食器が嵐の雨風のように弾かれ合い、雷のように火花が飛び散る。
しびれを切らした王が、食器をクロスして振り上げた。
「支配、支配、支配! 王、かくあるべし! タイラントクラ~ッシュ!」
「受けて立つ! 砕け散れ、暴君政権っ」
白く眩い、巨大なビームボールがクソデカ王の頭上でクソデカく形成され、王城の間をギラギラに照らす。
伴死も背を向けて太刀を交差させ、ひとつの巨大なビーム太刀を作り伸ばした。
「支配、支配、主の支配! 民が持つ自我を撃滅せよ!」
「ビーム伸ばし剣。周断ち!」
叩き落とされる、失墜の太陽。それを二つに割ると剣閃は、パンケーキの塔に振り上げられた。
「何っ!? バカな──」
「ケーキ入刀。剣振り下ろし!」
「わ、わしはウェディングケーキではな~い! ごわぁ~っ!」
剣に伴って何本も何本もビーム残像が振り下ろされる。
全ての剣が落ちきった時、なぜかパンケーキは放射状に綺麗に割かれた。
「うわ~! ケーキは切れども、王意は死せず~!」
フォークとナイフを空高く放り投げ、膝を折って弾けるパンケーキ王。
伴死は拳を握りしめて、跳び上がってガッツポーズを決めた。
「やったぁあああ! 勝ったーっ!」
その直後。
涙で目を閉じていた伴死へと、落下したナイフが突き刺さった。
「ぎゃぶっ!?」
床へ潰れて、仰向けで吐血する伴死。
着ている着物が血に染まり、かすれた視界にフォークの切っ先がキランと見える。
「うそ……うそウソ嘘々。嘘でしょ~? そんなあ──」
ドッゴォオオン!
フォークが絨毯を貫き砕き、伴死の頭が弾けて消えた。
さて、ここはフライドキャニオンの縁台地。
リポップした伴死が頭を抱えて崩れ落ちた。セーブ地点に間に合わなかったのだ。
「しゅ……修行不足ね。わたくしには、まだ早かった」
グルメレースのボスラッシュチャレンジ。うめいた伴死は泣く泣く、その場をあとにするのだった……。
YOU Lose…
勝てない時はキャラクターのレベルを上げたり、ビーム技を増やしたりして再戦しよう。