九話 そして水着に着替えます
九話 そして水着に着替えます
卵焼きを取るとまずは黒星が味見をする。
「この前のオムライスと違って甘いな」
きちんと感想も言ってくれる。
「砂糖入れてます」
「甘いのか? 卵焼きに塩が入っているはずだが」
アックスがケチをつけてくる。でもそれも想定内。
「卵焼きは大体三種類あるんだ。砂糖と塩と出汁。うちは砂糖派だったな。アックスが食べたところは塩派なんだろう」
「料理に正解なんてないんだよ」
「要さんの料理にケチつけんな」
アックスへの風当たりがまだまだ強い。かわいそうに思うけれど、要に食ってかかったのでフォローはしない。
「「イヤなら食べなくても良いのよ。その分食べられる」
「要、おいしいよ」
そして味方も完全にいなくなった。
「ありがとう。まだ作れるよ」
箸が争うように伸び、瞬く間に卵焼きが減っていく。
「これからプールだから、食べ過ぎるとお腹出て見えるかもね」
能に言われて、エスパーダとサイズの手が止まる。それでもスミス姉妹と男勢は容赦しない。
「見た目より、食べ過ぎるとプールの時に気持ち悪くならないかな」
就の発言でスミス姉妹の手が止まった。
それでも男勢は食べる。結果、文句を言っていたアックスが一番食べた事になり、大不評。
「黒星だって食べてた」
アックスはそう主張した。
「黒星は悪くない」
「悪いのはアックスさ」
理不尽な論理がまかり通り、アックスは断罪される。
「まだ卵があるから、後で食べようか」
さすがに見ていられなくて、要は提案した。食べ物の事は食べ物で解決しないと禍根を残す。そしてそれには時効がない。
エスパーダ達は完全ではないが喜んだ。アックスは一応許されたのだ。
食べ終えた女性陣は能から水着を受け取り、エスパーダの部屋に着替える事にしたらしい。
男勢と人間達が残されて、座っている。食べ終えた食器を片付ける人はいない。要は三度台所で聞き役に徹する事になった。
「アックスって、女好きだよね」
「男は女好きだろ」
「でも子供のサイズにエロい目を向けるのは許せません」
就の言いかたは本気だ。返答によってはアックスを握り潰しかねない。
「セクシーな女がいたら見てしまうだろう。俺は聖職者じゃない」
「まあまあ、就。アックス、セクシーは褒め言葉じゃないよ。だからかわいいって褒めよう」
「そうなのか? 分かったやってみよう」
要が洗い物を済ませて出てくるのと、エスパーダ達が水着姿で現れたのはほぼ同時だった。
スミス姉妹はシマシマで全身スーツ型の水着を着ている。
サイズはスクール水着で、なぜかひらがなで名前が書かれたゼッケンが縫い付けられていた。
そしてエスパーダはビキニ姿で腰にパレオを巻き付けている。
「似合っているよ」
要が言うとエスパーダははにかんだ。
「私は?」
とサイズが聞くと、
「かわいいよ」
とアックスが言った。
「なんでアックスが答えるの?」
聞き返され、アックスは言葉を失った。タイミングが悪いなと要は思った。