八話 まずは遊ぶ準備です
八話 まずは遊ぶ準備です
揚げジャガイモのそぼろ煮でご飯を食べたが、小人達からはブーイングの嵐だった。
「僕等のご飯は?」
「人間の分だけでズルい」
「そうだそうだ」
「要がそんな人間だとは思わなかった」
ライトハンドとレフトハンドだけでなく、サイズとエスパーダも同調した。
「まあ焦るな。俺が作ってやるから」
「黒星はおよびじゃない」
「僕等は要さんの作る料理が良いんだ」
「そうだそうだ」
「黒星がそんな小人だとは思わなかった」
黒星の発言に四人は猛反発する。
師匠に人気で勝った要であったが、居心地が悪かった。当事者がいる場で言わなくてもと思う。
「要、作ってやれ」
黒星が拗ねてしまった。ここで黒星に作り手を任せても、誰も納得しない。
「はい」
小人達の食事を作る事にした。メニューは卵焼きにした。もちろん鶏の卵である。鶏肉に抵抗ある小人族だが、卵に対してはそれほどうるさくなかった。
また、料理を作りながら、台所で聞き耳を立てる事になる。
「食べたら、退治するの?」
「ううん、あいつら夕方から動き出すから。戦う体力を温存しながら遊ぶの」
「遊ぶ? 水鉄砲?」
「プールにつかる」
「え?」
「なぜ俺を見る」
アックスの非難の声。
「水着は?」
「作ってあるよ。エスパーダからオーダーあったし」
能が答える。
「僕等のは?」
「あるのかい?」
「あるよ。オールドスタイルとハイレグの二択」
「ハイレグはねぇ」
「オールドスタイル一択でしょ」
ライトハンドとレフトハンドはセクシーを嫌がった。
「じゃあ、私、ハイレグ」
「ダメ、サイズは子供だからスクール水着って決まってんの」
サイズには能からセクシー禁止令が出た。
残るはエスパーダ。要も少し期待した。が、特にアックスに見られると思うと不安になる。
「私は持ってるから」
「残念だね。貼り付ける水着用意してたけど」
「そんなの着ないよ。能ちゃんが試せば良いじゃん」
「え? 作る時に試してるからもう良いよ。就にだって見せてるし」
妹の聞きたくない姿だった。小さく就の慌てた声が聞こえる。人前で、特にサイズの前でバラされたのが堪えているのだろう。能としては意趣返しみたいなものだ。
「就、好きなの? 貼り付ける水着」
「サイズは気にしなくて良い」
「だったら私が着る。能だけに着せたくない」
「ダメ、サイズは子供だから」
「ヤダ! 着る」
「アックスにジロジロ見られるんだよ」
「……だって、就、見たって言うし……私も着たいし」
泣きそうになりながら、主張している。アックスに性的な目を向けられるのが、そんなにイヤなのか。
でも就と能だけでなく、エスパーダやスミス姉妹も反対に回った。誰もサイズにエロを求めていない。
「今のコスプレだってセクシーなんだから、そんなに変わらないだろ」
アックスがそう言うと、たくさんの「サイテー」が聞こえてきた。
要は黙って、砂糖を混ぜた卵液を熱したフライパンに流し込んだ。雉も鳴かずば撃たれまいと思いつつ。