三話 スポドリを飲ませました
三話 スポドリを飲ませました
「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」
エスパーダが息切れしてしまい、追いかけっこは終わった。ライトハンドとレフトハンドは逃げた。ただ小人族の本気はピクシー族にも過酷だったようで、寝転がって動けなくなっていた。
誰も喋られる状態ではないので、要は朝ご飯を用意する。
朝から刺身とは豪勢だ。要は刺身が残ったらもらおうと思っているが、彼女達の執着からすると無理っぽい。いざとなればトーストにとろけるチーズくらいで食べるしかない。
「とりあえず飲みな」
刺身の解凍待ってる間、エスパーダにはスポーツドリンクを、スミス姉妹にはミネラルウォーター渡しておく。スポーツドリンクは体液に近い成分だが、甘みは人間仕様なのでピクシー族にはきついかもしれないと判断したためだ。
「ぷはぁ」
「ぷはぁ」
「水うまいね」
「生き返る」
「でも甘すぎるよね、これ」
「何?」
「甘い?」
エスパーダに視線が集中し、その後要を見上げる。
「エスパーダにはスポーツドリンクをあげた。二人には味が濃いかと思って水にした」
「ズルい!」
「差別だ!」
「へへーん、私は要の彼女だから待遇が違うの」
それは要が理由を言う前に、言うべきドヤりである。当然反感を買った。
「姉御、マウントなんて流行らないよ」
「愛されているのが嬉しいの分かるけど」
先ほどのキスをまだイジってる。
「私でも甘いのに二人が耐えられるわけないじゃん。刺身だっておいしく食べられないよ」
「それでも飲みたいじゃん」
「僕等は人間の飲み物なんで手に入れられる機会が要さんのところしかないんだよ」
エスパーダは頭を下げた。
「悪かったわ。ちょっと調子に乗ってたかもしれない」
「分かれば良いんだよ」
「要さん、僕等にも甘いのよろしく」
言われた通りに、スポーツドリンクを渡した。
「う……甘いし、しょっぱい」
「でもなんか効いた気がする」
二人は飲んだ事を少し後悔してるようだった。でも二人が望んだ事だ。
要はそこに刺身の乗った皿を持ってくる。
「要さん、今刺身の口じゃないんだ」
「リセットしたいからお茶が欲しいんだけど」
「だから言ったじゃん」
スミス姉妹は言い返さなかった。