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小人も夏はプールで遊ぶんです  作者: 古山 経常


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最終話 義父がマダムの名を呼びました

最終話 義父がマダムの名を呼びました



「そうか。大きくなったな」


 ずいぶんあっさりしている。文句もあったが、それよりも聞きたい事がある。


「どうしてここに来たんだ?」


「答える義理はあるか?」


「ある! ここは俺の家だ」


「そうか。確かにそうか。なら、言うか。実験動物の捕獲に際し、外部に探知ソフトを開発してもらった。それは超能力を使うと位置を特定する物だ。ただ実験動物は小さい。場所の特定に手間取っている時に運良く反応があってな。探知したと言うわけだ」


 シールドに超能力を使った事が裏目に出てしまったらしい。


「さあ、実験動物。戻るぞ。お前にはやってもらわねばならないことがある」


 応該はサイズに手を伸ばす。しかし就が立ちはだかる。


「何だ? 知り合いが?」


 応該は要に聞く。


「二瓶就君。能の彼氏だよ」


「能もそんな歳になったか。捨てたら許さんぞ」


 一丁前に娘の心配をしている。


「あの、サイズの事なんですが」


 父親振られた事もあり、就は頭ごなしに責めるのをやめたようだ。しかし応該は首を傾げた。


「サイズ? 誰だそれは」


「そこで怖がっている子だ。名前も知らないのか」


 すぐに敬意を払う事をやめてしまった。そして白衣の襟をつかむ。


「ああ。実験動物に名前をつけたのか」


 応該は後ろへ下がる。そのまま就は部屋の外へ連れ出され、黒スーツの人に捕まった。


「就君!」


「サイズを逃がしてください」


 就は抵抗しながら叫んだ。近所の注目集めて、小人がいる事を知られるのもまずい。黒スーツが就の口を塞いだのを見て、応該に言った。


「中で話そう。頼みたい事もある」


「懸命な判断だ」


 そう言うと、黒スーツを待たせて部屋の中に入っていく。就やサイズに手を出す事もなく、小人達のいる六畳間に来た。


「野生の小人がこんなに……」


 要はテーブルを動かして、応該と向き合うように座る。


 そして、マダムとシールドをテーブルの上に移動させ、話し合いに参加させる。


「能、麦茶をコップに入れてきてくれ」


「うん」


 能は台所に行った。周りには密かにサイズを守るフォーメーションを取った小人達が床に散らばっている。


 「久しぶりだね。モーニングスター」


 応該は聞き慣れない名前を呼んだ。


「シールドを助けてちょうだい。あなたなら出来るんでしょ?」


 どうやらマダムの本名らしい。マダムはシールドを応該に見せる。


「なるほど、そういう事か。だから実験動物はあのままなのか」


 一人納得しているようだった。


「どういう事?」


「シールドを産んだ女を覚えているか?」


「ええ。あなたの義理の妹」


「元、義妹だ。あれはすでに老衰で死んでいる」


「それが何……」


「実験動物、サイズとかいったか。あれの生みの親はまだ生きている。そして確実に老いていってる。ここまで言って意味がわかるか? モーニングスター」


「まさか……、廊下を肩代わりさせていると……」


「ああ、母体が死んだ後にこんな風になるのを初めて知ったが」


「じゃあ、シールドは……」


「救えない」


 応該は冷徹に断言した。


 そしてマダムは涙をこぼした。


「モーニングスター。シールドは諦めろ」


「シールドは私と夫の子よ。人間に産んでもらったせいでこんな姿になっているけども大切な息子なの。愛しているの!」


「違う」


「違わないわ」


「そうじゃない。モーニングスター」


 応該は能が持ってきた麦茶を一気飲みして大きく息を吐き、言った。


「シールドは君と私の子だ」


「へ?」


 部屋にいたみんなが絶句した。



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