十話 プールで騒動が起きました
十話 プールで騒動が起きました
水着を先に着たため、要に小人用ビニールプール(特大)をふくらましてもらうまで、エスパーダ達は待つしかなかった。
その事でエスパーダが責められたが、誰も認識していなかった事を反論されるとみな押し黙った。みんなそれほど考えて行動していないのだ。
ふくらませた小人用ビニールプール(特大)に水道水を流し、要はやっと落ち着く事が出来た。
「さあ、遊ぶわよ」
エスパーダは小人用ビニールプール(特大)の前に立ち、パレオを取り外す。ビキニの腰回りに水鉄砲が挟んであり、引き抜いて要に向ける。そして引き金を引いて、ウィンクしてくる。
要は笑顔で応対する。
「水多いじゃん」
「浮き輪ないと溺れる」
スミス姉妹はテーブルから小人用ビニールプール(特大)を見て、頭を抱えていた。
「浮き輪あるよ。ただ、一つだけなんだよね」
「小人族のなら二人にでもいけるよ」
「じゃ、死なないでね」
エスパーダは自室から浮き輪を持ってきて、テープの下に降りてきたスミス姉妹に渡した。やはり二人には大きくて電車ごっこが出来るくらいだ。
サイズと協力して、スミス姉妹を小人よ。ビニールクール(特大)に入れた。
「わーい」
「わーい」
はしゃいではいるがバランスが崩れたら溺れるので、動けないでいる。
「わーい!」
そこにサイズが飛び込む。大きな波が立ち、スミス姉妹は大きく揺さぶられる。
波がおさまった後、スミス姉妹はサイズに抗議した。
「やめてよ!」
「僕等を殺す気?」
「ごめんごめん。でも二人とも私をクモに差し出そうとしたよね」
サイズは過去を持ち出して、過失を相殺しようとしている。
「そんな昔の事」
「あれは銃を作った事でなしになっている」
「嘘、就からお金取ったんでしょ。だったらおあいこじゃん」
「チッ、騙せないか」
「良いよ、おあいこにしてやるよ」
「その代わり、今度は僕等が死なないように守ってくれ」
「これから弾丸を作って欲しいだろ?」
「うーん、分かった」
サイズは水鉄砲に水を詰めた。水鉄砲はエスパーダと違い、胸に差し込んでいた。しかし、二丁は無理だったので、一つだけ。
「波を起こさないけど、水は当てる! くらえ」
サイズはスミス姉妹に水鉄砲の引き金を引いた。しかし水鉄砲の水は放物線を描いて、水に飛び込んでいく。
「僕等をなめるなよ」
そう言いながら、浮き輪につかまっているだけで何も出来ない。浮き輪が小人族用なのでうまくバランスが取れないためだ。ほぼ無抵抗のスミス姉妹サイズは攻撃する事が出来た。
「あれ? あれ?」
しかし撃っても撃っても水は一回もかからない。せっかくのチャンスを生かしきれず、焦り始めていた。
「こら、サイズやめなさい」
就に叱られて、サイズの攻撃が止む。ちょうど水が切れたのもあったようだ。
「おらー!」
「やってやるぞー!」
攻撃が止んでいる間にスミス姉妹はサイズに近付き、浮き輪を蹴ってサイズに飛び付いた。
「重い……」
「僕等をナメるな」
「必殺、子泣きアタック!」
仰々しく言うが、体重をかけて水に沈めるだけの、技と言えるものでもなかった。
サイズは二人の重さに耐えられなくなり、小人用ビニールプール(特大)に張られた水の中に沈んだ。すぐにライトハンドとレフトハンドは離れたが、サイズはパニクって立てずにいた。そして溺れる。
研究所生活の長いサイズが、水泳を獲得している確率は極めて低いと思われた。
「サイズ!」
就は両手でサイズを小人用ビニールプール(特大)から救い出した。ぐったりしている。
「俺に任せろ。人工呼吸だ」
アックスがサイズに近付いていく。助ける気もあるだろうが、別の思惑も感じる。その証拠にアックスの顔がニヤけていた。
就は止めようとしたが、アックスは意外に俊敏だった。
このままではサイズの唇が奪われてしまう。その時、黒い影をアックスに向かっていった。サイズに近付いていたアックスは吹っ飛ばされて、テーブルの脚に激突した。
「はぁ……、はぁ……」
アックスがいたはずの場所には、三点着地のポーズで荒い息をしているシールドがいた。
「良かった」
サイズを見て安心したのか、笑顔で倒れた。




