断章 記録書士、強欲の探究者 ~悲哀の紫陽花編~
~~あらすじ~~
"...我が孫よ。聞け...。この大和という国には摩訶不思議なことが時に起きる...。"
..昔、祖父に言われた言葉を思い出し、俺は祖父が持っていた歴史書をもって"とある廃村"に向かった。そこは昔に"紫陽花ノ国"と呼ばれ、実に栄華を誇ったらしい...。しかし奇妙なことにとある日を境にその国は跡形もなくなってしまい、同時にそこにいた人々も神隠しにあったかのように消えてしまった...。
度重なる調査の末でも原因は見つからず、事件は終わったかのように思われた...。しかし、とある場違いな制服を着た女子生徒が俺の事務所に転がり込んで、昔、祖父が話していた紫陽花ノ国にまつわる調査と彼女の両親捜しを頼まれる...。
...これは、とある"強欲"の証を持ったおっさん探偵と悲痛な運命を持ってしまった彼女の切ない物語の断片...。
...これにて、開幕に致します...。
.~~望遠鏡を覗き見る男性の手記~~
..かの紫陽花や桜などの花々が咲く街は今やもう町に住む知的生命体ごと消滅した...。
...現在に至ってどこの世界線からも地球に住む生命反応に該当する存在が見当たらない...。
そう...、もうこの世界線にも存在しないのだ...。
「...さあ、こちらも動くべきだな...。」
----------------------------------------------------------------------------------
"そのとある国にある地下街には時折、黒い雨が降る。それは人々の感情が溶けだしたことによる色が混ざったという説や国独自の技術による薬物から公害による影響とも言われていたが、今となっては分からない...。なぜならば、その都市は今から200年前に滅ぼされ、今となってはその国があった場所は古代文明があった遺跡がある有名な観光地として知られているからである...。"
..この前に学校の宿題で出された"とある地下街の国"を記述した書物にはこのような文章があることを僕はふと思い出しつつ、病床に伏せる自身の祖父がベット上部を上にして、こちらの目線を合わせつつ、雑談を行っていた...。
「..ジョパンリン、お前にこのペンダントをやろう...。なに..、お前が一番欲しがっていたやつだ。それに..、そろそろだと思ってな...。な~~にっ、別にもう儂にはもう持つ必要はないんじゃよ...。」
そんな雑談する最中に話を聞きながら、僕は素朴な表情で若干不安で思った疑問を零した...。
「...いいの??..それ、おじいちゃんの...、確か...。」
僕は、その平面上に背中から羽根が生えた馬の彫刻に首掛けの鎖が付いた銀色のペンダントに視線を移して、そう言った...。これは祖父が日常的に見に着けているものの一つでいつも祖父の家に行ったときに見ていたペンダントだった..。
その...、ペガサスと思わしき幻想上に存在する生物の表面には何やら特殊な幾何学模様...、らしき、深い緑色のが存在し、それが何やら神秘的な雰囲気があったためか、僕は幼少のころから、そのペンダントに畏怖の念を感じており、そのペンダントが恐ろしく感じていた...。
「..まあ、こんな暇を持て余した老人を熱心に相手にしてくれるのは家族の中でもお前だけじゃろうしな...。あっ..、お前の母であるキュアシンにはちゃんと伝えるんじゃぞ...。あいつ、普段は大人しい子なのに怒ったときが一番怖いからの...。」
そう、しみじみと微笑と苦笑を混ぜたような表情をしながら、祖父は"フハハッ..."と小さく笑いを零した...。
..そんな祖父のベットには二冊の本が置いてあり、奥には小さな冊子のアルバムと、手前には"桜散る、崩御せし、雨神の姫"という意味の分からないタイトルの本だった...。
僕の視線がその本たちに注がれていたのに気づいたのか、祖父が微笑を零しながら、口をゆっくりと開いて、言った...。
「...ああ、この手前の本が気になるんだね...?こいつはとある友人からもらった"大和"と呼ばれる国の風土が書かれた本だよ...。まあ..、その国の特定の地域の歴史書という感じかな...。」
祖父はそう言いつつ、コホンッと、咳払いをした...。そして、
「...昔むかしの話だ...。この大和の国には、紫陽花がたくさん咲き誇る"紫陽花の国"があった...。そこは紫陽花や百合、桜等が咲き誇る場所でな...。特にそれを基軸とした花見などの観光業や酒造、温泉で有名な場所だったそうだ...。」
その本の内容について話始めた...。その本の内容によると、どうやら、その昔、"紫陽花の国"と呼ばれた今は廃村となった場所の歴史書のようなものらしい...。
「へえ~~っ。温泉か...。」
「ほかにも、たくさんのお偉いさんや、有名な詩人、芸術家、学者などが花見に来たと伝われておるな...。」
「そんな有名な場所なのに今はないの?県とかで表されているのではなく?」
僕がそう言うと、祖父が少し眉を顰めつつ...。その本の冊子を右手で取り...。
「ほれ。」
「へっ?」
..いきなり、僕の方へ差し出した...。正直言って、僕は祖父のこの突飛な行動に驚いた...。
..正直、僕自身に関してお小遣いもくれなかった祖父がこのような形で自身にプレゼントしてくれることが"初めて"の経験だったからだ...。
しかして...、この行動に疑問を持った僕は祖父に純粋な問いである"ソレ"を口にした...。
「どうして、僕にコレをくれるの?」
そのとき、ふいに空気が変わったような気がした...。どう変わったかは上手く言語化出来ないが、少し尖ったような、口が少し渇くような雰囲気になったのは確かだった...。
「...なぜか、か...。」
.."ゴクリッ"と僕は渇いた口に生じた僅かな自身の唾液を飲み込む...。しかし、その思念は次の言葉で払われた...。
「まあ、たんに在庫処分じゃの。」
「...在庫処分..??」
僕は不思議そうに首をかしげると、その様子を見た祖父は、"ガハハ"と口を大きく開き、大声で笑う。
その様子を見た僕は不満気な表情で祖父を見つめる...。
僕のその様子を見て祖父は少し声音を落として、少し照れ臭そうに僕の疑問に答えた...。
「..まあ、お前に持っててほしいんじゃよ。この本を...、本好きなお前に儂の勧める本を共有したくてな...。」
そう言って祖父はフッと微笑をこらした...。しかし、その微笑みの意味を分からない僕は渋々、頷いたのだった...。
しかしながらも、このような冊子が古びた如何にもな茶色い表紙の本なのだが、一応祖父からもらった誕生日のプレゼントというのもあって自身が持ってきた小さめのリュックサックに慎重に入れておいた...。
「..さて、儂からお前に贈れるのはこれくらいじゃの...。」
そう祖父はそう言ってから、ケホッと一つ咳払いをすると...、後ろの扉がガラリッといきなり大きな音を立てて開いた...。
「~~はーーっい~~!!スミス=ジャックスカー・フェーレ様~~。お薬のお時間ですよ~~。...あら..?...お孫さんがいたのね..。..これは失礼いたしましたわ..。では...。」
「..いや、マダム..。こんな老体に気を使わなくともよいよ..。」
祖父は"フォッフォッフォッ"、と愉快げに笑うと、病室に入ってきたナース服を着た看護師であろう人物から視線を一度外すと、僕に対して目を合わせて実に穏やかな表情と口調で話しかけた...。
「..さて、ジョパンリニや。もう遅いし、今回の面会はここまでとしよう...。儂はそろそろ薬を飲まねばならない時間じゃからの...。」
「..うん。」
「...まあ、お前からマイハニーと娘と親戚の近況を聞けて良かったよ...。」
そんなようなことを言いながら、目の前にいる祖父は穏やかな表情でふうーっと息を漏らしながら、自身が寝ている介護用のベットの枕を調整しつつ、腕をかける場所にあるスイッチの一つを押して、ベットの上部を戻した。
ベットの上部がウィーンッと音を立てながら元に戻っていく間に息を吐き終えると、僕に向かってこう言った...。
「じゃあな...。老人相手の世間話ありがとうな...。また来週、楽しみにしておるぞ..。」
「うん...。ペンダント、ありがとう。」
そう僕は言いながら、祖父の病室を後にして出ていった...。
...なぜか、祖父がやたらと含みをある表情をしていたのが、印象に残った...。
..それから、次の日の朝、その約束は果たされることなく、祖父は天へと旅立った...。
...これが僕が小学生のときの記憶だ...。今でも、そのペンダントは肩身離さず、持っている..。
そして、今僕は...。
------------
「...やっと着いたな...。」
..僕は一旦、長距離を歩いた足を止めて、そう言った...。僕は今、とある探索機関に所属し、その探索隊のリーダーを任命され、目の前の廃村にやってきている...。
...そこは...。
「...じいさん、あんた、何者なんだ..?」
...そこにあったのは廃村ではあるが...、あちこちに赤緑色の蔦のようなものが脈動した蔦が存在し、昔、祖父の本の中にあったお城の中心に大きな赤いラフレシアのような花があった...。
ここが祖父があの時、くれた本の一つ、"桜散る、崩御せし、雨神の姫"の舞台となる"紫陽花ノ国"があったとされる場所であり、この話はまた別の話で...。
???「とある小説面白いですね~~。次はこの観劇を見ましょう。タイトルは...。」