12月16日 不思議
20日の決戦に向けて、俺は練習を続けていた。今日は、バスケ部の練習に混じっていた。この時期に、勉強せずバスケするなんて聞いたことがない。後輩も不思議そうに俺のことを気にしていた。後輩たちが練習から帰った後も、静寂な体育館で俺は練習をやめなかった。別に誰かに課されているわけではない。それなのになぜか体が動く。
12月の寒々とした空気が俺の体を襲う。厚着をしていたのに俺の体を冷やしている感じがする。外に出たら、絶対コートが必要だろうなと思う。俺が持っていたバスケットボールは、たくさん使われていたのか、革の表面に無数のへこみと傷跡が残っていた。このボール、もしかしたら俺も現役時代に使っていたのかもしれない。あの時は、そんなことすら考えていなかった。毎日、ただガムしゃらにプレーしていた。
俺は孤独にコートを駆け回り、ドリブルの練習をしていた。ここら辺では、俺もそこそこバスケが上手い方には入る。いくらBIG3とは言え、俺なんかが負けてはいけない。まぁ、高田さんはどうでもいいとして、向こうにはバスケ部の野間がいる。アイツとは、高校2年生の時に一度だけ勝負したが、そこそこやる奴だった。でも、今回もあの時と同じように勝つしかない。
ボールを指先で操り、野間をイメージする。野間なら、こう動くだろうと思い、彼の動きを考えながら動いていく。俺の頭の中であれば、何度でも抜ける気がしていた。ドリブルをした後、俺はシュート練習を繰り返していく。こんなボールがあんだけ飛ぶんだから凄いよな。ボールを見つめて思う。俺は、リングに正確に流し込み、スッとボールが落ちてくる。しかし、俺の中では納得がいくゴールではない。どうなんだろう?納得のいく自分のゴールとは、並外れた才能が必要だった。当然だけど、それは俺にはない。これは努力と忍耐力だけでは無理だった。野間は、素早いカットインを繰り返しているイメージだった。俺はディフェンスを想定して練習を行っていた。結構動き回ったが、俺の足取りは軽やかでまだまだやれる。野間は、フェイクとドリブルを駆使しながら動き回って点をとっていた。聖徳高校自体は、あんまり強くなかっただけに野間は目立つ存在だった。俺は、疲れることを知らない少年のように練習を続けた。もう12月だから、汗はあまりかいていないけど、体がホクホクしているような感じだった。金属がリングにぶつかる鋭い音が響き渡っていた。




