11月8日 たこ焼き
お父さん「これ、食べるか?」
渡してきたのは、たこ焼きだった。
俺 「何これ?」
お父さん「お土産だよ」
俺 「そうなんだ」
たこ焼きの美味しそうな匂いが俺の周りを充満していく。
お父さん「なんだ、興味ないのか?」
俺 「ないよ、もう小学生じゃないし」
納得しない表情を見せた。
お父さん「お前も面白くねえな」
俺 「ほっとけよ」
やっぱり、話をしていても仕方がなかった。
お父さん「最近は、調子どうなんだ?」
俺 「普通だよ、普通」
お父さん「普通ねぇ」
お母さんがいなくなってからは、お父さんは、お母さんのように振舞っていた。しかし、俺はそれを求めていなかった。
俺 「なんだよ?悪いか?」
お父さん「いや、悪くない」
俺 「そんなお腹空いてないだけだ。気にしないで」
これ以上、話したくなかった。
お父さん「そうか。嗣ニ、どうする?」
俺 「何がだ?」
まだ、話を続けるのか?
お父さん「今週、お母さんのところに行くが、お前行くか?」
俺 「んー」
なんで、お母さんの話をしたのだろうか?これまで6年間でそんな話をしたことはない。
お父さん「どうした?行かないのか?」
俺 「興味ないよ、別に」
お父さん「そうか?随分、会ってないんだろ?」
俺 「ああ。たぶん、6年生から会ってない」
会っていないのは本当だ。
お父さん「そんなに会ってないのか?」
俺 「ああ。会ってないよ」
お父さん「てっきり、会ってるのかと思っていたよ」
俺 「会わないよ、めんどくさいし」
スカした顔をしながら、見つめた。
お父さん「会いたいと思わないのか?」
俺 「別にな」
どこかガッカリしたみたいだ。
お父さん「そうか。もし、よかったら一緒に来ればいい」
俺 「俺は、お母さんにもお父さんにも興味はない」
表情が曇っていく。
お父さん「‥‥‥」
何も話してこない。
俺 「悪いけど、俺はアンタらを許したわけじゃねぇ」
お父さん「相変わらずだな、お前も」
俺 「そうか?」
喧嘩腰で見つめた。
お父さん「そんな昔のことは忘れろ」
俺 「なんでだよ、俺は興味ない」
お母さんかぁ。懐かしい響きだな。