12月12日 四人目(巻柑菜)
自習時間。もう、みんな帰る準備をしていた。今日は、たまたま6限目が自習になってしまった。前半は、みんな勉強していたが、残り5分となった今、勉強するものはほとんどいなかった。俺は、この前の続きである人数集めを行なっていた。今日は、四人目の巻柑菜と交渉だ。
巻 「なるほどね。じゃあ、それに安和も行くっていくこと?」
長尾「そういうこと」
長尾は、優しそうに俺たちの会話を見守ってくれていた。
俺 「だから、巻にも来て欲しいんだ」
巻 「日程が合えば行くよ」
日程が合えばかぁ。なかなか、日程は合わない。正直、俺たちは受験生だし、そんな簡単にどこか行ける身分でもなかった。
俺 「ちなみにいつ空いてるの?」
巻 「やっぱり、年末かな。あとは塾があるし」
巻も長尾も塾に行っている。当然だけど、そこにはお金もかかっている。
長尾「そうだよね。そう言えば、新田はどこの大学行くの?」
痛いところをつかれた。俺や高田は、特別なんだ。大学に行くという選択肢を捨ててここにいるんだ。けど、それをみんなに伝えることはできない。フッと現実世界に戻されたような気分だった。
俺 「いけるところにいこうかなと思ってるよ」
巻 「そっかぁ」
今の返事は何だろう?巻は、どう思っているのだろうか?
俺 「けど、頭あんまりよくないしな」
巻 「いや、賢いでしょ。新田は。ねぇ、安和?」
長尾「そうだよ。賢いよ、新田くんは」
妙に俺のことを持ち上げてくれることが気になった。
巻 「じゃあ、私もそろそろ塾行くよ」
俺 「おっけー」
長尾「バイバイ」
巻 「はーい」
まるで手応えがない。よかったのかよくなかったのか。それすら、わからない。
俺 「あれで、よかったのかな?」
長尾「新田くんは、柑菜に来て欲しいんでしょ?」
俺 「ああ。アイツいたら面白いし」
長尾は、俺の何かを察しているようだった。さすがに4年も一緒だったら見抜かれているのか。
長尾「たしかに」
俺 「でも、あの感じだと来るかわからないな」
長尾「来るよ、柑菜なら」
長尾は、何が言いたいのだろうか?
俺 「なんで、そう思うの?」
長尾「なんとなくだよ」
俺 「テキトウじゃん」
長尾「まぁね。ハハハ」
わからないけど、長尾の意見は、信じれる気がしていた。




