11月7日 山城風華
放課後、俺は風華に呼び止められ、話しをしていた。もう11月ということもあり、日が沈むのも早い。教室には、受験勉強をしている生徒が何人かいるくらいで、残りの生徒はすでに教室から出ていった。俺も、セーターを着用して帰ろうとしていた。風華は、何やらタブレットを見ながら考えこんでいるみたいだ。
風華「今度の説明会きてくれない?」
俺 「なんで?」
意外な誘いだった。
風華「人足りてなくて」
俺 「わかった。いいよ」
即答で承諾した。別にやりたいこともないし、暇だし。
風華「ありがとう。助かるー」
俺 「行って何するの?」
風華を見ると目力に圧倒されてしまった。
風華「どういう会社か説明するんだよ」
俺 「へぇー。すごいな」
なんか、ホントに高校生かと思ってしまう。
風華「全然だよ。まだ、5人くらいだし」
俺 「でも、起業って大変なんだろ?すごいよな」
起業が大変なことは、なんとなく知っていたつもりだ。
風華「そうかな?私は自分がやりたいことしかしてないから大したことないよ」
全く気にしていないみたいだった。
俺 「そんなことないだろ」
風華「当日、手伝ってくれた分は、給料出すから」
給料?そんなものいらないのに。俺のことなめてんのか?
俺 「別に無理しなくてもいいよ」
優しく声をかけたが。
風華「ううん。大丈夫。働くのはボランティアとかじゃないから」
あっけなく断られた。
俺 「そんなものなのか?」
風華「厳しい世界だよ」
たしかに風華は、覚悟が決まっている。中途半端な俺とは違う気がする。
俺 「俺にはわからない世界だな」
風華「フフフ。たしかに、新田くんにはわからないかもね」
どういうことだろうか?深追いはしなかった。
俺 「だろ?」
すると、一歩前に出てきた。
風華「新田くんってミステリアスなところあるじゃない?だからもしかしたら、みんなで働くとか苦手そう」
ミステリアスねぇ。
俺 「あー。そうかもな」
風華「やっぱり、当たってる?」
ミステリアスかどうかはわからない。けど、自分を曝け出すの好きじゃなかった。
俺 「みんながどう言うかは知らないけど。得意ではないと思うな」
風華「そうだよね」
俺の言葉を聞いて納得したみたいだった。