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11月15日 会場六

 自分に足りないのは、一歩踏み出す勇気。そうであることがアイツらに出会ってわかった。自分の中ではいつでもその一歩出せると確信していた。だからこそ、その一歩は勇気じゃなくて進化だ。そう考えていた。


 ー11月10日ー


 山城「ありがとう、新田」

 俺 「おう。次、どうしたらいい?」


 新田は、とてもパソコンをうつのがはやい。おそらく見なくても打てるのだろう。


 山城「今からプリント出すから、ホッチキスで止めていってくれない?」

 俺 「わかった」


 俺は、風華から渡されたホッチキスを握りしめた。


 山城「一応、100コ作ってほしいのよ」

 俺 「100かぁ。多いな」


 どうせなら、本気でやるか。俺の中のやる気スイッチが押されようとしていた。


 山城「まぁ、全部なくなるかはわからないけどね」

 俺 「そうなんだ」


 すると、先ほど動かしていたプリンターから大きな音が聞こえてきた。大量にプリンターから紙が刷られてくる。すごい量だ。俺は、大型プリンターから紙を取った。どうやら、紙には会社の説明が書かれていた。外の雨は、少しずつ強くなってきているように感じた。窓に落ちる雨の音。どこか心地よかった。俺は、プリントとホッチキスをとり、一つずつとめていく。

 俺は、黙々ととめつづけた。他のブースはかなり盛り上がっているみたいだったが、俺たちのブースは、徐々に静かに進行していた。室内は、天井から明るい光が俺たちを照らしてくる。ホッチキスが冷たく指先に触れる。この感覚、昔に味わった気がする。あれは、まだ小学生の頃だっただろうか?みんなで一緒にプリントをとめた気がした。俺は、ゆっくりと力を込めてていく。一つのセットを4枚のプリントの角を捉える。

 このホッチキスは、力が強いみたいだ。それでも、しっかりと挟み込むように、一振りする。ホッチキスをとめるその音は、心がリセットされるような感じだ。すると、もうすぐ芯がなくなることに気がついた。筆箱からホッチキスの芯を取り出した。机に並べられたプリントを見つめた。プリントはしっかりと止められ、まるで、私たちを見てくれと言わんばかりの訴えを感じた。俺は、ホッチキスの芯を補充し、再びプリントをとめはじめた。昨日まで、何もなかったこの俺に、どこか新しい高揚感をもたしてくれていた。この一瞬一瞬の時間が、これからの人生に何かを与えるのだと思った。

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