三、ラジオたいそう
はじめてって。
翌日の朝、ぼくは首にラジオたいそうのカードをかけて、たいそうに参加した。
朝のたいようはキラキラと光って、ちょっとだけすずしい風が気持ちいい。
昨日は引っこしで、お休みしてハンコをおしてもらえなかったので、少し残念だった。
ぼくは今まで一回もたいそうを休んでなかったんだ。
カードに、ひとつだけハンコが押されていないのは、なんだかカッコ悪いし、くやしい。
ぼくが行くことになる原っぱ小学校の校庭で、ラジオたいそうがあった。
はじめてのさんかとあって、ぼくはかなりきんちょうしていた。
しんぞうがドキン、ドキン、どぎまぎしながら歩き、背の高いお兄ちゃん、お姉ちゃんのとなりを歩いて、ぼくと同じぐらいの男の子、女の子が集まっている所に、
そおっと入って行った。
そこに、あっ、いたいた。ぼうず頭が光っている。まさ君だ。
ぼくは、かけだすと、まさ君に、
「おはよう」
と、声をかけた。まさ君も、
「おはよう」
とかえしてくれた。
にこっとわらうと、すぐにラジオたいそう第一の曲がかかった。
前そうの間にすうっーと息をすいこんだけど、身体がカチンコチンになっていて、はじめの方はガチガチで手や足が動かず、曲がとてつもなく早く感じられた。
それでも、大きく深こきゅうをして、何も考えず集中すると、だんだん体が動くようになり、だいじょうぶになった。
ぼくは、まさ君とならんで、たいそうをした。
彼をちらと見たのもよかったのかな、友だちがいると安心するね。
ラジオたいそうの曲が終わると、いつもよりつかれたような気がした。
それにおさまっていた心ぞうの音もドキドキ強くなりだした。
いっせいにみんなが、たいそうのおじさんの所に一列にならんだ。
ぼくは14番目に、ひっこししてからはじめてのハンコを押してもらった。
ぼくはまさ君とならんで歩き、家に帰るとちゅう、
「ねぇ、(今日)どうする?」
と、彼がとつぜん聞いてきた。
ぼくは、新しい場所でもらった胸のたいそうカードのハンコをうれしくてじっと見つめていたので、
「えっ?」
と聞き返した。
「ザリガニだよ」
その言葉に、うれしさが2ばいなった。
ぐいっと、まさ君の顔にぼくの顔を近づけ、
「いくっ!いくよ!」
「よし、じゃあ、昼ごはんのあと、ザリガニ沼に集合」
ぼくらは同時にブイサインをして、ニヤリとわらった。
すると後ろから、
「ねぇ、私も行っていい?」
声がして、ふりかえると、女の子が立っていた。
「えり子か・・・別におれはいいけど・・・」
まさ君はちらりとぼくの方を見た。ぼくは大きくうなずくと、
「いいよ、みんなでいった方が楽しいよね」
「じゃ、きまりっ!」
3人ニヤリとわらってブイサイン。
ドキドキするね。