撲殺その39 爆盛り定食
「何を見ているのかと思えば、デカ盛りチャレンジの番組か」
ついに梅雨入りをしたある日のこと。
珍しく暇そうにテレビを見ていたレベッカに、何やら用事が出来たらしいプリムが声をかける。
「ぶっちゃけ、儂は見ただけで食えんと分かってるから特に興味はないが、お主は気になるのか?」
「気になるかと言われればなりますが、あまり自分からチャレンジしに行こうとは思いませんね」
「ふむ、意外じゃのう」
「値段も量も適正価格、もしくはちょっとお得というだけであれば、喜んで食べに行くのですが……」
「ああ。制限時間以内に食い尽くせばただ、とか、賞金が出る、とか、そういうのが気に食わんと」
「気に食わないというより、一応聖職者のくくりに入るので、それを狙って食べに行くのはどうなのかという気持ちがありまして」
「なるほどのう。別に今更と言えば今更のような気がせんでもないがの」
レベッカが気にしている内容を聞き、微妙に呆れがこもった視線を向けながらそう言い切るプリム。
そこを気にするのであれば、食べ放題の店でもう少し手加減すべきだろうというのがプリムの言い分である。
「というか、レベッカよ。そもそもお主、何度か大食いの大会に参加しておらんかったか?」
「あれは頼まれての参加ですし、優勝している訳でもないので……」
「そういえば、一度も優勝しておらんかったな。手を抜いたのか?」
「それもありますが、早食いとの組み合わせみたいな大会ばかりでしたので、シンプルに速度特化の方に勝つのは難しいかったというのもあります」
「お主は、一応味わって食っておるからのう」
言われてみれば、という顔でレベッカの主張にうなずくプリム。
味わっている割には食べるのが早くはあるが、それでもレベッカは押し込んで流し込むような食べ方はしない。
なので、その分の差でどうしても一般的な制限時間制の大食い大会は勝つのが難しいのだ。
「時間無制限のわんこそばでなら、新記録は出してますけどね」
「そりゃまあ、そうじゃろう」
レベッカの申告に、ジトっとした目を向けながらそう言い切るプリム。
食べようと思えばいくらでも食べられるのだから、時間無制限なら新記録なんぞ作り放題である。
ちなみに、お椀の数が足りなくなって測定不能というのが、わんこそばの記録である。
「それはそうと理事長。何かお仕事ですか?」
「うむ。と言っても、撲殺する必要があるかどうかは微妙な案件なのじゃが……」
「ふむ……」
プリムの言葉に、それはまた珍しい、という表情を浮かべるレベッカ。
プリム経由でレベッカに振られる仕事など、基本的に穏当なやり方をするエクソシストには手に負えないものばかりだ。
なので、撲殺せずに解決する可能性があること自体、かなり珍しいパターンである。
「それで、どういうお仕事なのでしょうか?」
「ある意味タイムリーな話なのじゃが、お主には除霊のために、爆盛り定食の完食チャレンジを成功させてもらいたい」
大食いタレントが必死になって定食を口に押し込んでいる番組を横目に、そう言い切るプリム。
いきなり理解を拒む内容を吹っ掛けてきたプリムに、思わずきょとんとした表情を浮かべてしまうレベッカ。
「あの、大食いチャレンジ自体は問題ないのですが、それと除霊の関係が……」
「儂も、話を聞いたときには意味が分からんかったがの。とある店の大食いチャレンジを潰すことになった男が悪霊化したらしくて、そ奴を浄化するのにその店がかつて出しておった大食いメニューを設定時間内に完食する必要が出てきたらしいんじゃ」
「……分かるけど分からない、という感じの話ですね、また……」
「うむ。儂も他所から回ってきた話をお主に振っているだけで、詳しい話を聞いておらんからな。正直、なぜその条件なのかは理解できておらん」
プリムの説明を聞いてもやはり理解できず、難しい顔をしてしまうレベッカ。
悪霊のなかには、特定の条件を満たした上で特定の手順を踏まなければ浄化できない奴も、それなりにいないではない。
なので、大食いチャレンジに挑まねばならないというのは分からなくもないのだが、チャレンジメニューを潰した張本人を浄化するのになぜその条件なのかが理解できない。
「まあ、そういう訳じゃから、引き受けてくれるか?」
「それはかまいませんが、条件によってはチャレンジそのものを失敗するかもしれませんよ?」
「お主がそうそう失敗するとも思えんが、具体的にはどういう条件だと失敗するんじゃ?」
「タイのアラ炊きやむき身ではないカニとか栗など、純粋に食べるのに手間と時間がかかるものを可食部の重量で数キロ単位となると、制限時間ありでは失敗する可能性が高いです」
「普通、大食いチャレンジでそういう種類のものは出さんと思うが、世間は奥が深いから有り得んとは言い切れんのがなあ……」
レベッカが出してきた攻略不可能な事例を聞き、真顔でそうこぼすプリム。
様々なジャンルで現実は小説よりも奇なりを経験しているので、大食いジャンルでもそういうケースがあってもおかしくないだろう。
「まあ、一般的な個人が経営しておる街の食堂の、ある種サービスメニュー的な形で提供しておったチャレンジメニューらしいからの。タイのアラ炊きはまだしも、カニや栗は流石になかろう」
「ですか」
とりあえず、気休め的にそんな推測を告げるプリム。
仕入れ原価や提供の手間を考えると、普通の街の食堂では数キロ単位のカニや栗をチャレンジメニューで提供するのは難しそうだ、という推測はさほど大きく外れていまい。
「行ってくれるというのであれば、場所はここじゃ。紹介状も用意してある」
「分かりました。暇ですので、今からでも大丈夫ならすぐに行ってきます」
「いつでも問題ないとのことじゃから、早速向かってくれ。連絡はこちらから入れておく」
「お願いします」
プリムの言葉にうなずき、いつものファッショナブルなリュックの中身をチェックして背負うレベッカ。
こうして、ある意味得意分野ともいえる依頼を受けて出陣するレベッカであった。
「よく来てくださいました!」
現れたレベッカを見て、依頼人と思わしきエプロン姿の女性が感激したようにそう言う。
現場は、やたらと歓迎ムードが漂っていた。
「えっと、あの、やけに歓迎されているのですが……」
「だって、お祓い頼んだら界隈で有名な爆食シスターさんがいらっしゃったんですよ!? そりゃあもう、興奮の一つもしますよ!!」
「そ、そうですか……」
女性の言葉に、やや引き気味になりながらそう返事をするレベッカ。
自身がある種の有名人である認識は、これまで一切なかった。
「それで、依頼の件についていろいろとお聞きしたいのですが……」
「はい。と言っても、なんで今更、みたいな話ではあるんですけど……」
そこまで口にして、一つため息をつく依頼人。
恐らく、彼女からしても意味が分からない案件なのだろう。
「事の発端は、祖父がまだここで仕事してた、二十年ほど前にさかのぼります。仲介していただいた方から聞いておられるとは思いますが、その頃はうちにチャレンジメニューの爆盛り定食というのがあったんです」
「その頃に始めたのですか?」
「いえ、始めたのはその何年か前らしいんですが、何分私が生まれる前のことですので、詳しいことはよく知らないんです。事件についても、私が二歳ごろのことですので、やっぱり両親や祖父から聞いた話しか知りません」
「なるほど」
「その日、例の悪霊になった人がチャレンジメニューに挑戦中、唐突にアナフィラキシーショックを起こして亡くなってしまったそうです」
「ああ。それまで何ともなかったもので突然激しいアレルギー症状が出て、対処しようなく命を落としたというやつですか。たまに聞きますね」
悪霊化した人がなぜ亡くなったのか、その理由に深くうなずくレベッカ。
あまり確率が高いものではないが、世の中には健康体の若者が対処不能な原因で唐突に命を落とすことがある。
心筋梗塞と突然のアナフィラキシーショックは、その中で最もメジャーなものだろう。
「当時店は大騒ぎで、必死になって人工呼吸をはじめとした救命措置を行ったのですが、救急隊員の方が到着したときにはすでに亡くなっていたそうです」
「アレルギー関係は、発症してしまうと専門の道具や薬剤がないと対処が難しいらしいですからねえ……」
「はい。原因が原因なので店が責任を問われることはなかったんですが、大食いチャレンジ中というのがやはり問題になりまして……」
「無茶なチャレンジをさせたことで店が命を奪った、みたいなことを言われましたか」
「はい。幸いにして店の方は常連の皆様が支えてくださったので今まで続けることが出来ましたが、この事がなかったとして無理に食べた結果喉を詰まらせる事故は起きるかもしれない、ということで、メニューは廃止になりました」
「なるほど。メニュー廃止の経緯は理解しました」
女性の説明を聞き、小さくうなずくレベッカ。
ここまでの話では、特に不思議なことは何もない。
二十年ほど前と言えば誹謗中傷炎上が社会問題になりだした頃。
その時期に事故のようなものとはいえ、叩きネタになるような形で死人を出した店が潰れずに持ちこたえたのは驚きだが、それだけ愛されていたのだと考えればまあ分からなくもない。
飲食店というのは熱烈な常連客を多く獲得していれば、食中毒などの営業停止を食らうようなことをやらかさない限りはなかなか潰れないものである。
「それはそうと、当時の方はおられないのでしょうか?」
「本来は店主である父が説明すべきだったのですが、今日対処していただけるという話になった時に、二十年ぶりの爆盛り定食だから仕入れが必要だと出てしまいまして」
「……今やってないメニューとなれば、特別に仕入れも必要となりますか……」
当時のことを直接知らない女性が対応をしている理由を聞き、さもありなんとうなずくレベッカ。
どんなものを出していたかは知らないが、爆盛りというぐらいだから飛び込みの客にそれを出してしまうと他に響く程度のボリュームはあるのだろう。
「それで、なぜ今更というのは霊障の場合考えるだけ無駄なので置いておくとして、その悪霊は何を求めて定食の完食を求めてきたのでしょうか?」
「それが、結局一番最後のバージョンは完食者が出ていないのに、自分のせいで中途半端な結果のままメニューを潰してしまっていることを後悔しているそうで、メニューの供養もかねて誰かにチャレンジを成功させてほしいらしいです」
「……悪霊らしいと言えば悪霊らしい話です……」
時間感覚が怪しいところや、メニューの供養にこだわって店に迷惑をかけているところなど、悪霊の本領発揮というしかない。
「今のところ鬱陶しいのと何となく店の雰囲気が悪くなる程度でさほど害はないんですけど、放っておくとよくないのではと不安だったので、対処していただける方に来ていただけてほっとしています。それが、今界隈で有名なあの爆食シスターだなんて!」
「もうそれはいいので……」
そこまで言ったところで、クーラーボックスを担いだ店主が入ってくる。
「あなたが除霊をしてくださる方ですか」
「はい」
「では、久しぶりの定食ですが、心を込めて用意させていただきます」
そう一礼して、厨房に入って行く店主。
それを見送った後、一番気になっていたことを質問するレベッカ。
「それで、爆盛り定食ってどんな感じなのでしょう?」
「ご飯三キロ、お味噌汁一キロ、キャベツとナポリタン、鶏の塩焼き、メンチカツで五キロ、別皿の白身魚のフライと特大ウインナー三本で大体十キロぐらいのボリュームですね。必要なら味変用に小鉢や肉みそも用意できます。チャレンジ成功者が何人か出るたびに徐々に増えていって、気がつけばこんなことになってたそうです」
「それはすごいですね。そこに至るまで、完食者が出ているのも興味深いところです」
「ですね~。ちなみに、総重量が一キロ増えるたびに時間が延長された結果、最終的に制限時間は九十分まで伸びたそうです」
「ふむ。まあ、殻付きのカニやタイのアラ炊きのような食べるのに手間取るメニューもありませんし、九十分あれば十分でしょう」
「心強い一言、ありがとうございます」
定食の中身を聞いて、そう断言するレベッカ。
今までレベッカが完食してきた大盛り特盛系メニューは、いずれも五キロを超えるものばかり。
それらをおかわりしたり同量のメニューを複数追加しても一時間はかかっていない、どころか調理時間込みでも四十分程度で完食しているので、総重量十キロ少々の普通にかじるだけで食べられる定食なんぞ余裕である。
なお、時間を計算すれば分かることであるが、間違いなく調理時間のほうが完食にかかる時間より長い。
『……この女が、爆盛り定食を供養しに来たのか?』
定食の内容を聞き、今か今かとワクワクしながら出てくるをの待っていると、三十過ぎぐらいの小太りのおっさん幽霊が姿を現してそんなことを言う。
「そうなりますね」
『こんな細い女が……、と言いたいところだが、お前相当燃費が悪い特殊な体をしているようだな』
「分かりますか?」
『ああ。だが、ありがたい。生前の業が祟って悪霊になっちまったが、別に店に迷惑をかけたいわけでも恨みがある訳でもない。さっさと誰かチャレンジを成功させて、俺のせいで不完全燃焼のまま消えちまったメニューを供養してほしい』
「なぜ、そこにそんなにこだわるんですか?」
『仮にも一人の大食いとして、せっかく世に出てきたメニューが誰にも完食してもらえずに消えるってのが切なくてなあ』
「ふむ」
いまいちよく分からない気持ちを告げられ、そういうものかと形ばかり納得しておくレベッカ。
そうこうしている間に、いつの間にやら店に常連が集まってきている。
「このシスターが、チャレンジャーかい?」
「はい。特定界隈で有名な、爆食シスターさんです」
「有名だとは知りませんでしたが、その名義でよく大盛りメニューの試食と批評を頼まれています」
「そうかい。それなら、あいつも成仏できるだろう」
悪霊の知り合いらしい常連客が、そんなことを言う。
どうやらそっち方面の素養はないらしく悪霊の姿は見えていないようだが、これだけ気配が濃ければ存在は感じ取れるらしい。
それを聞いていた悪霊が、少し不安そうな表情で口を開く。
『恐らくメニューを供養してくれれば心残りは消えると思うが、心残りが消えたから素直に成仏もしくは消滅できるかは分からない。もしかしたら理性が飛んで暴れちまうかもしれないんだが……』
「そうなったらそうなったで、ちゃんと浄化する準備はしてありますのでご安心を」
『すまない』
悪霊なのに、やたら素直な男に思わず苦笑するレベッカ。
時々、この悪霊など比較にならないほど話が通じない人間が現れるのだから、世の中というのは本当に奥が深い。
一番奥が深いのは、そう言う連中が洗脳されたり何かに祟られたり憑りつかれたり呪われたりしているわけではなく、素面で普通に話が通じないところであろう。
「お待たせしました。それではスタートしてよろしいですか?」
「一応食前のお祈りをしますので、少しだけお待ちください。主よ、生きる糧を与えてくださったことに感謝します。いただきます」
「それでは、スタートです」
テーブル一杯に広がった爆盛り定食に目を輝かせながら、箸を手に取りいつものように雑な食前のお祈りを済ませるレベッカ。
レベッカの食前のお祈りが終わったタイミングでスタートを宣言し、タイマーを押す店主。
スタートに合わせ、まずは崩れて飛び散りそうなキャベツを減らしにかかる。
「……これぐらい減らせば、他を食べても崩れませんね」
瞬く間にキャベツを半分平らげ、そう宣言するレベッカ。
いただきますから一分も経たない早業である。
「メンチカツを切り分けるスペースを作るために、まずは鶏をいただきますか」
そう言って、ご飯と交互に鶏の塩焼きをあっさり完食するレベッカ。
そのままの勢いでナポリタンも平らげる。
『この手のメニューを完食する際のセオリーでは、一品ずつ潰していくものなんだが……』
「どんな料理でも、美味しくいただくのがポリシーですので。それに……」
悪霊の言葉にそう反論し、メンチカツにガブリとかぶりつくレベッカ。間髪入れずに白米をかっこむ。
「このメンチカツや鶏の塩焼きをご飯のお供にしないのなんて、料理に対する冒涜です」
『そこまでか……』
「はい。むしろ、この量のご飯は必須だと断言します」
悪霊に対してそう言い切り、ご飯とおかず、みそ汁をバランスよく美味そうに平らげていくレベッカ。
あまりに美味そうに快調に食べ進んでいくものだから、実はたいした量ではないのではと勘違いしそうになる。
その身体が徐々に白く輝きだしているが、現時点では誰も気が付いていない。
そして、チャレンジ開始から十五分後。
「……むう、ご飯が足りない……」
残りがメンチカツと味噌汁それぞれ三分の一ほどになったところで、山盛りあったご飯を食べつくしたレベッカがうめく。
その言葉に、常連たちがざわめき始める。
「ちょっと待て。米三キロ食って足りないってどういう事だ?」
「と言うか、十五分であそこまで胃袋に送り込むの、物理的に可能なのか?」
「物理的に可能だから、米が足りないって言ってんだろう?」
いろいろな意味で非現実的な状況にざわめく常連たちを横目に、求められたと判断した店主が普通の大盛りを手早く用意してレベッカの前に出す。
「ありがとうございます」
おかわりを用意してもらったレベッカが、それはそれは美味しそうに食事を再開する。
結局、レベッカが爆盛り定食を完食したのは、開始からわずか二十五分のことであった。
「ごちそうさまでした。大変美味しかったです」
「……あの、シスターさん」
「はい、なんでしょう?」
「おなかが全然大きくなってないんですが、あれだけの料理はどこに入ったんですか?」
「さあ?」
そう言いながら、最後の仕上げのために立ち上がるレベッカ。
その身体は、見るものが見れば直視できないほど眩く光り輝いていた。
『ぐっ、やめろ! 俺は向こうで裁きを受けて罪を償うんだ!!』
その光を浴びたからか、それとも他の要因があってか、心残りが無くなり消えかかっていた悪霊が苦しみ始める。
「お任せください。あなたを無事に幽世に送り届けます」
そう告げて悪霊の周りにまとわりついている黒い靄を引きはがし、空中に放り投げて鋭いストレートを叩き込んで消滅させるレベッカ。
狭い店内だというのに、ギャラリーの常連たちに誤爆することなく作業を進めていく。
わざわざ引きはがしているのも、聖痕を解放せずに殴っているのも、間違って悪霊本体を消滅させないよう安全策を取っているからだ。
「なんだ? 今一瞬、あいつの姿が見えたような……」
「他の悪霊に取り込まれそうになっていますので、現在救助作業中です」
いきなりのことにビビりつつ戸惑う常連達に対し、軽くそう告げてどんどん靄を引きはがしては殴って消滅させるレベッカ。
罪を償おうとしている他人の足を引っ張る相手には、一切情けをかける気はない。
ほぼ全ての靄を引きはがして消滅させたところで、〆の一言に入る。
「主よ、この哀れな子羊に救いの手を」
いつものように十字を切り、手を祈りの形に組んでそう告げるレベッカ。
聖痕を解放していないにもかかわらず、その言葉に合わせてレベッカの全身から光があふれ、天使の姿となって悪霊の手を取り天に昇っていく。
『シスター、ありがとう……』
「いえ、これがお仕事ですから」
そう言って、天に昇っていく元悪霊を見送るレベッカ。
「本物って、いるもんだなあ……」
「まったくだ」
「ただ、これであいつも成仏できたみたいだし、俺らもあのことは忘れないにしても、これ以上気にしないようにしようぜ」
「だな」
「シスター、今度は俺らが奢るから、また来てくれよな」
「はい、是非」
いろいろ一区切りついた常連たちの言葉に、笑顔でそう応じるレベッカ。
結局爆盛り定食はこの食堂のメニューとして復活することはなかったが、時折レベッカが訪れるたびに似たようなボリュームの中身が違う定食が専用メニューとして提供されることになるのであった。
変身してないだけで雑に撲殺はしているので、タイトルは撲殺名義となります。
定食平らげるのに結構時間かかってるのはあれです。
今回非常にじっくり味わってるからです。
あと、これぐらいの時間にしとかないと、制限時間内にどれだけ食べられるか系では勝ち目がない、という発言の信ぴょう性が非常に薄くなるので……。
十五分ぐらいのレンジでなら、レベッカより食うの早くて大量に食う人がちゃんといるんですよ、この世界の場合。




