【過去物語】そして牢獄へ
輝男の伝記もこれで最終章になる。
最後の章では輝男が大学を卒業してから、牢獄へ閉じ込められるまでの出来事をつづっていこう。
輝男が大学を卒業したのが二十二歳のとき、そして牢獄に閉じ込められることになったのは彼が二十五歳のときだった。
その間わずか三年である。
だがこの三年の間で輝男は人類に対する絶望と失望を味わうことになった。
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輝男は大学を卒業したものの、結局就職することはできなかった。
極端に内気な性格が災いし、面接試験で失敗を重ねたのがその理由だった。
大学に残って研究者になる道もあったはずだが、こちらの方はまるで考えていなかった。
輝男が目指していたものは研究者ではなく、あくまでも発明家であり、そのためにはどうしても世間に出る必要があると考えていたからだ。
だが結局輝男のことを雇ってくれる企業は現れなかった。
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ちなみにもし、この時に輝男を雇う企業があったならば、その企業はどんな分野であろうとも世界的な企業に成長していただろう。
輝男の天才としての能力はそれほどに異質で、しかも圧倒的だった。
しかし輝男に目をとめる者は結局現れなかった。
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まったく収入のない身の上となったが、輝男自身は何も心配していなかった。
世間が認める発明をすれば全てがいい方向に転がっていくだろう。
就職も可能だろうし、それがダメでも特許収入がでてくるだろう。
そうなれば生活もしやすくなるだろう、輝男は楽観的にそう信じていたし、また自分の才能に対してそれだけの自信もあった。
今の輝男に足りないものは『動機』だけだった。
発明を生み出す『きっかけ』だけだった。
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一方で祖母の落胆ぶりは相当なものだった。
祖母は輝男がいい大学に入ったのだから、一流の企業に入ってたくさんのお金を稼ぐものだとばかり思い込んでいた。
それが就職できない挙げ句に、また実家に戻ってきてしまった。
それは彼女にとってまったくの予想外だった。
祖母は輝男を見捨てはしなかったが、輝男に対してはこれまでとおなじように無関心な状態に戻ってしまった。
それでも輝男は祖母に感謝し、後に大きな贈り物を渡すことになる。
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そんな状態が半年も続いた頃、輝男は町のCDショップで『鋭子』と再会した。
そのときの様子は輝男の自伝に詳しくかかれているので、改めて書き記すことはないだろう。
ただこのときの輝男は何とかして彼女のことを助け、彼女をもう一度華々しい世界へと戻れるようにしてあげたいと考えていた。
それこそ輝男がずっと待っていた『動機』であり『きっかけ』だった。そして輝男は世界初の完璧な3D再生装置を発明するのである。
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この発明は輝男の発明家としての輝かしい第一歩となった。
そして輝男が望んだように、鋭子が再び華々しい世界へと戻るきっかけとなった。
だが同時にその3D再生装置は悪用され、山川鋭子を深く傷つけることになった。
輝男はこのとき、人間の中に巣食う悪意の存在を初めて知った。
人間という存在が持つ、いい面ばかりを信じていた輝男にとっては、これは明らかな裏切り行為だった。
しかも犠牲になったのは、自分が一番大切に思っていた人間だった。
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輝男の絶望は深かった。
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それからの約半年間、輝男は腑抜けの状態となってしまった。
何を作ったらいいのか、何を発明すればいいのかがさっぱり分からなくなった。
それ以上に発明という行為そのものが、果たして自分にとって、そして周りの人間にとって、幸福をよぶものなのか、それとも不幸をよぶものなのか分からなくなってしまった。
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これは多くの天才達が悩んだことでもあった。
世界のあり方をくつがえすような発見、発明はいつでも諸刃の刃であった。
ダイナマイトの発明をしたノーベルは、それが戦争に使われたことを後悔した。
原子爆弾を発明したアインシュタインはそれが実際に使用されたときどれほど心を痛めただろう。
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偉大な発明家は、いつもこの悲しみと責任をその一身に引き受けてきた。自分が考えなければ、それらのテクノロジーが悪用されることはありえなかったからだ。
だがこれらの偉大な発明は正しく使えば世界のあり方を変え、全ての人類を幸福へと導く可能性を持っていた。
だが人間を信用していいものだろうか?
人間の理性を信じていいものだろうか?
輝男がこの時期に抱えていたのは、彼らと同じ悩みだった。
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その間に輝男は海外も含め、さまざまな一流企業から開発研究者として特別待遇の申し出を受けていた。
もちろん輝男が独自で3D再生装置を開発したと聞きつけてのことである。
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輝男の実家には次々とリムジンがとめられ、大会社の社長や会長といった人間が直接会いにきた。
もちろん祖母が驚いたのはいうまでもない。
それこそテレビでしか見たことのないような経済界の重鎮たちが、次々と輝男に頭を下げにきたのだ。中でも祖母のお気に入りはソニックという世界有数の電機メーカーからの誘いだった。
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「輝男、会長さんがわざわざこうして来てくだすったんですよ。ソニックさんで働かせてもらいなさい」
「どうです、輝男君、ぜひ我が社にいらっしゃい。うちは研究設備も整っているし、君には開発部の第一線で自由に研究させてあげます」
「輝男、返事なさい。ソニックさんに決めなさい」
「申し訳ありませんが、お断りします」
テルオの返答はそっけなかった。
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「輝男!あんたいつまでわたしのすねをかじる気だい?」
「まぁまぁ、おばあさま。仕事は男の一生の中でとても大切な決断なんです。ただどうして断るのか理由を聞かせてもらえないかな?」
「先に断ったのはそちらです。僕はそちらに就職活動に行ったことがあります。でも面接で落とされたんです」
「ほんとかね?われわれが君を落としたというのか?」
「そうですよ。調べてもらえばわかります。僕には月給十八万で充分でした。でもその時はその金額でも断られたんです。べつに恨んではいませんよ。ただそういうことがあったんです」
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輝男は時として厳しいことを言う男だった。
ソニックの会長はその言葉に真っ赤になり、輝男の家を出るやすぐに携帯電話を取り出し、人事部長を呼び出して文句をわめき散らした。
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結局輝男は全ての誘いをけった。
輝男には輝男なりのプライドがあった。
結局それは誰からも理解されるものではなかったが、一人でも何とかできるという自信だけはより強くなっていた。
だから誰が来ても、どんな条件を出されても、ただ首を横に振るばかりだった。
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そんな状態が続くうちに、輝男は祖母に償いをすることを考えるようになった。
輝男は相変らず無職だった。
結局就職も出来ず、3D再生機の特許料は鋭子に全て譲っていたから、まったく収入もなく、祖母に食べさせてもらっていた。
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そこで輝男が考えついたのが、お金そのものを作るという発明だった。
といっても偽札作りではない。
だが輝男が考えたのはそれ以上に危険なものだった。
お分かりだろうか?
それは輝男がずっと肌身はなさず持ち歩いていたものだった。
つまりダイアモンドの製造である。
ただ輝男はこの時、ダイアモンドの製造が危険だとは自覚していなかった。
ただ祖母に何かお礼がしたいと思っていただけだった。
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それから三ヶ月ほどしてダイアモンドの製造は見事に成功した。
それも人口ダイヤのようなまがい物ではない。
天然のものとまったく変わらない、いやそれ以上のダイアモンドの製造に成功したのである。
輝男は一番大きなコブシほどの大きさのダイアモンドを鋭子にプレゼントした。
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「どうしたの?これ?」
「作ったんだ」
「人工ダイヤってこと?」
「まぁね。でも天然のものよりもクオリティは上かもしれないよ。いくらぐらいになるかわからないけど、君へのプレゼントなんだ。でもね、君の使いたいように使ってかまわない」
「すてき……でも、本当にいいの?」
「ああ、もちろん。うれしい?」
「すっごくうれしいわ!ありがと!」
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鋭子は輝男の首に両手をだらりとかけると、音を立てて唇にキスをした。
輝男の顔は真っ赤に染まり、そのまま湯気が出てきそうだった。
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ちなみにこのダイヤは後にアラブの石油王によって300億の値段がつけられた。
鋭子はそのお金を元手に世界中の特許を買いあさり、現在の巨大な企業を作り出すことになる。
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さらにそれから数日後、輝男は『虎子』の元に向かった。
彼女にもこれまでのお礼がしたかったのだ。
鋭子はずい分と喜んでくれたのだが、虎子が喜んでくれるかどうかは心配だった。
虎子は男勝りで、女性らしいものを嫌う傾向があったからである。
だがそんな心配は一瞬だった。
虎子は渡されたダイアモンドを、負けないくらいキラキラとした目で見つめた。
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「これをあたしにくれんの?」
「ええ。作ったんです。虎子さんにはいろいろと助けてもらったから」
「そんなことないよ。それにしても大きいねぇ。もちろん本物なんだろ?それにしてもきれいだねぇ、うっとりしちゃうよ」
「そんなに喜んでくれるとは思わなかったです」
「喜ぶに決まってるだろ、照れさすな!」
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虎子はそれをポケットに突っ込むと、輝男の額に吸い付くようなキスをした。
輝男の顔がまた赤くなったのはいうまでもない。
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ちなみにこのダイヤは虎子の父親の知り合いに200億の値段で売られることになった。
虎子はそれをそっくり龍次に渡し、龍次はそれを元手に全国の組織を統一していくことになる。
龍次がこれほど素早く、全国の組織を統一できた理由の一つは巨大な資金にあった。
その元手となったのが、この輝男の作り出したダイアモンドだったのである。
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輝男はさらにもうひとつダイアモンドを製造した。
次にそれを渡した相手は祖母だった。
輝男はてっきりと祖母が喜んでくれるとばかり思っていた。
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「なんだい、これは?」
「ダイアモンドだよ、おばあちゃん」
「馬鹿いうんじゃないよ。こんな大きなのがあるわけないだろ」
「僕が作ったんだ」
「わたしを騙そうったってそうはいかないよ、ふん、なんだい、こんなガラス球を持ってきて!」
「ちがうよ、これは本物のダイアモンドなんだよ」
「いらないね、こんなニセ物。いいかげんにしとくれ!だいたいこんなの作る暇があったら、どこでもいいから働いて、少しは給料を持っておいで。あんなにいい会社の就職を断って!あんたは大馬鹿だよ!」
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祖母はそういってダイアモンドを輝男につき返した。
輝男は黙ってそれをポケットにしまい、祖母の部屋を後にした。
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輝男はこのとき初めて祖母に失望した。
結局自分を厄介な荷物ぐらいにしか思っていなかったのが、今さらのように実感された。
何をしても、何を話しても何一つ聞いてはくれないし、信じてもくれない。
結局のところ、祖母にとって自分はまったくの透明な存在だった。
彼女は輝男をまったく必要としていなかった。輝男がどんな人生を歩むかということに、まったくの無関心だった。
それは輝男にとってこれまでの人生で一番認めたくないことだった。信じまいとしてきたことだった。
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自分が必要とされていない人間だということ
存在するだけで厄介がられる人間だということ
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輝男はそれをあらためて思い知らされた。
輝男の家族に対する失望は深かった。
だがそれがさらに人類全体への失望に変わったのは、この直後に輝男が引き起こした事件がきっかけだった。
その事件を機に、輝男は家族ばかりでなく、世界からも自分が必要とされていない人間であり、厄介者であるという事を知らされることになるのである。
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輝男はダイアモンドの製造をやめたわけではなかった。
祖母には拒絶されたが、この贈り物を喜んでくれる人間たちがもっと大勢いるはずだと考えたのだ。
輝男はそれからビー球ほどの大きさのダイアモンドを大量に作り出した。
そしてそのすべてを匿名の封筒で日本中の慈善団体に送った。
目の見えない人、耳の聞こえない人などの障害者の支援団体、老人や病人、浮浪者、などの援護団体などにも、その規模にかかわらず一団体につき一つずつ大粒のダイアモンドを送った。
さらにアジア、アフリカの子供たちを支援する団体、戦争孤児の支援団体など、人助けを目的とするあらゆる団体にも一粒ずつダイアモンドを送った。
輝男はもちろん知らなかったが、そのダイアモンドの粒は平均して五億円以上の価値があった。
その寄贈は前代未聞の金額となるはずだった。
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だが、その寄付はまたもや失敗に終わった。
その翌日にニュースが流れたのである。
それは日本政府の公式発表だった。
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『昨日からタチの悪いいたずらが横行しております。さまざまな慈善団体にダイアモンドと称したガラス球を送りつけている人間がおります。
現在聞き及ぶだけでも、百以上の団体が同様の被害を受けています。悪い気持ちでやっているのではないと信じたいところですが、子供のいたずらにしてはずいぶんとひどいものです。日ごろまじめに活動しておられるボランティアの方々を侮辱する行為です。
現在政府のほうで全てを回収しておりますが、そのようなものが届いた支援団体は、即刻政府に連絡してください。
できれば犯人の指紋採取のためにも未開封のまま届けていただけることを期待しております』
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もちろんそれは政府の嘘だった。
そのことはもちろん作り出した輝男自身が一番良く分かっていた。
だがどうしてそんなことをするのかが理解できなかった。
ダイアモンド一粒を売ることで、どれだけの人間を救えるか知れないというのに。
政府にしてもその全てを取り上げようとはあまりにひどい話だった。また受け取った支援団体にしてもそうだ。
どうしてそれが本物だと信じられないのだろう?
人の善意というのが信じられないのだろうか?
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結局輝男のしたことは全て無駄に終わってしまった。
輝男は本当にがっかりした。
正確にいえば人間という存在に対し失望した。
何を発明しても、きっと同じ結果が待っているのだろう、悲観的にそう思った。
いくらいい道具を発明しても、人間が変わらなければそこには結局悲劇しか生まれないのだ。
そして人間が変わることを望むのは到底不可能な話だった。
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それから数日後のことだった。
輝男のところに私服の警官がやってきた。
人数は五人、覆面パトカーが三台連なっていた。
そして彼らの後ろにはスーツを着た若い男がいた。
輝男は後々までずっと気がつかなかったが、それは『大塚守男』だった。
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「織田輝男、あなたを逮捕、連行します」
スーツを着た警官の一人が言った。令状も見せた。
輝男はなんとなくこうなる日がくることを予想していたから驚いてはいなかった。
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「僕の罪は何ですか?」
「ダイアモンドの偽造だ」
「偽造ではありません。あれは本物です。調べればわかります」
「ああ確かに本物だった、だからなお始末が悪いんだよ。考えてもみたまえ、ダイアモンドが量産されれば世界経済そのものが破綻してしまう。ダイアモンドの価値は完全にゼロになってしまう」
「ダイアモンドに最初から価値なんてありませんよ。あれはただの炭素の固まりです」
「それは理屈というものだよ。ただ正直なところを言えば、今の君を法で裁くことはできない。だが君は社会にとって危険な存在だ。君が考えてる以上にね。だから君のような人間だけを集めた施設に連れて行かねばならないんだ」
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「そういうことなら、仕方ないんでしょうね」
「理解してもらえるとこちらとしても助かる」
「そこはやっぱり刑務所ですか?」
「似たようなところだが、待遇はずっといい。まだできたばかりだが、ひどいことにはならんよ」
「どれくらい閉じ込められるんでしょう?」
「刑期は無期限だ、だから家族との別れをすませてくるといい」
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輝男は振り返った。
玄関の奥で祖母が輝男を見つめていた。
輝男は自分の胸に悲しみがわいてくることを期待したが、そんな感情は出てこなかった。
だからあっさりと祖母に別れを告げた。
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「さようなら、おばあちゃん、いままでありがとう」
「輝男、ちょっと待っておくれ、まさか、あれは本物のダイアモンドだったのかい?」
「だから何度もそう言ったじゃないか……」
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祖母の顔色は青ざめていた。
輝男はそんな姿を締め出すように玄関の扉を閉めた。
結局自分はあのたった一人の家族からも、そして世界の誰からも必要とされない存在だった。
厄介に思われるだけの存在だった。
それが今、はっきりとした。
たぶん自分は刑務所に閉じ込められた方がいいのだろう。
それは仕方がないことだ。輝男はそう思った。
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「もう、いいです。いきましょう」
「もういいのか?家族なんだろ?そんな別れかたでいいのか?」
「いいんです、あの人にとって僕は家族じゃないんです」
「そうか……では心残りはないな?」
「あの、出来れば一つ、持っていきたいものがあるんですが?」
「あまり大きなものでなければ許可しよう」
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輝男は再び玄関の扉を開けると、呆然と突っ立っている祖母の横をすり抜け自分の部屋に戻った。
そして『アトランティスの爪楊枝』を小銭入れの中に入れ、それをポケットにしまった。
それからパソコンの隣に置いてあった真新しい手帳もポケットにしまった。
その手帳には一週間ほど前に解読を終えた、アトランティスの物語が書き写されていた。
輝男が持ち出したのはそれだけだった。
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「もう、いいのか?」
「はい、充分です」
こうして輝男は家を後にした。
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それから輝男は黒塗りの覆面パトカーに乗せられた。
この町にあまりいい思い出はなかった。
長い間いじめられてきたし、のけ者にされつづけてきた。
だが悪いことばかりでもなかった。
龍次や鋭子、虎子や四天王のみんな、少ないながらも友達ができた。
でも今では彼らともずい分遠く離れてしまった。
大人になって、もとの一人ぼっちに戻ってしまった。
輝男は一度だけ車の窓から家を振り返った。
町の光景を目にとめ、それから小さくため息をついた。
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車はどんどんと走っていった。
そして高速道路に入ると、車の窓に分厚いカーテンがかけられた。
どこに向かっているかはわからなかった。
だがどこへ行こうとかまわなかった。
ドライブは休みなく三時間あまり続いた。
その間ただ単調なエンジンの音と、アスファルトの上をやわらかく走るタイヤの感触があるだけだった。
両脇を固める警官たちはひとことも口をきかなかった。
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それから車は高速道路をおり、山道を二時間あまり走っていった。
すでに夕闇が迫っていた。
それから今度は舗装されていない道路をがたがたと一時間あまり走った。
やがて輝男がたどり着いたのは
【国立総合科学研究所】
という表札が掲げられた巨大な塀の前だった。
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巨大な塀には扉がついており、今は輝男を迎え入れるために半開きになっていた。
車は扉を通り抜けると、森林を迂回し、芝生の真ん中をゆるやかに貫く舗装道路を走っていった。
やがて正面に国会議事堂を思わせる、石造りの重厚な建物がそびえたっているのが見えた。
それが刑務所だった。
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すでに月が輝きはじめていた。
車の扉が開けられると、輝男は正面玄関の石段を誰に言われるでもなく、自ら歩いて登った。
目の前にはまたもや巨大な扉があった。
その扉も輝男を迎え入れるために半開きにしてあった。
輝男はためらうことなく一歩を踏みこんだ。
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その背後でゆっくりと扉が閉まり、輝男は全ての世界から隔絶された。
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こうして織田輝男は投獄された。
それから三十年あまりを輝男はこの牢獄の中で過ごすことになる。
そして三十年の歳月の後、輝男はついに脱獄を決意するのである……




