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3話

 「ええ、時間稼ぎのためそれらしいことを適当に長々と語らせて頂きましたので、臣の話が冗長だという御指摘は的を得ているかと」


 「は?」


 今、何て言ったコイツ?

時間稼ぎ?何の為、いや誰の為時間稼ぎだ?父様か?家が潰れそうなのにルイーズにかまけている俺を止める為に父様がさせたのか?それともまさかオルレアン?あるいは俺が知らない誰かか?

クソ、駄目だ何も分からねえ。


 


 頭の中が混乱一色の中、部屋の外から話し声が聞こえたことで強制的に外に目を向けさせられる。

誰か来たのか?だとしたらこの状況はマズイ。臣下と密談してたことが露見したら立場が一層悪くなる。


 「誰か来た。話はあとだ、隠れろピエール」


 「その必要は御座いません、我が主。お越しになられた御仁は臣がこの場にいることをご存じで御座います」


 「つまり、お前の親玉が来たってことか」


 「これは異なことをおっしゃられる。臣が忠心を捧ぐはリシュリュー家のみに御座います」


 「やっぱり父様か。何の為かは分からん時間稼ぎとやらをお前にさせたのは」


 「それはお会いになればご理解頂けるかと」


 この期に及んでまだ勿体ぶるか、本当にまどろっこしい奴め。


 



 外の来訪者と見張りのやり取りが終わり、扉がノックされる。


 「どうぞ、お入りください」


 「私に扉を開けさせる気?ちょっと会わない間に随分と偉くなったわね」


 「はい、ただいまお迎えに参ります!」


 ルイーズじゃねえか!!?!ていうか私にって従者も連れずに一人で来たのか!?

学園内とはいえこんな夜中に女が一人で出歩くんじゃねえよ、何しに来たんだ!?って文句言いに来たに決まってるか。今回の事件最大の被害者の一人だもんな。


 



 「少し見ない間に随分やつれたわね。まあアンタの自業自得だけれど。

私が何で来たか分かるわよね?何か言うことは?」


 こんな怖い顔した人間初めて見た。謝らなければと分かっているが、恐怖で声がうまく出せない。


 「俺を殺しに来たのか」


 言い終わるとほぼ同時に腹を殴られた。息ができねえ。


 「本当に息の根止めてやりましょうか?ったくどいつもこいつも人を殺人鬼扱いして」


 「ごめんなさい。まず謝ろうとしたんですが、死への恐怖に負けました」





               ◆




 眼下の私が這いつくばらせた、この度も盛大にやらかしてくれた愛しの婚約者は呼吸が整い、ようやくいつもの調子で口を開く。


 「ボディとはお前にしちゃお優しいことだな。いつもは目立とうがお構いなしで、顔面にぶち込んで来るのに」


 「私だって一般的な乙女心のかけらくらい持ち合わせてるわ。新郎の顔が潰れてる婚姻の儀なんてごめんよ」 


 「は?」


 こんな間抜けな顔した人間初めて見た。いい感じで前後不覚になってるみたいだし、今のうちに畳みかけましょうか。口じゃまず勝てないし、これから結ばれる人を殴って黙らせるのはいつも通りとは言え流石に忍びない。


 「カトリーヌ様に聞いたんだけどアンタ貴族じゃなくなるみたいよ。ついでに横領のかどで裁かれるんですって。まあ、やってないんでしょうけど一味扱いされた時点で貴族としては死んだも同然よね。

罪人扱いの奴との結婚なんて、私だけじゃ父上を説き伏せられないからとりあえずアンタに相談しようと思ったの。そしたらピエールが来てアンタが私と婚約破棄しようと動いてるって言われたのよ。どいつもこいつも人の結婚の邪魔ばっかりするから頭に来ちゃって、こうなったら壊される前に既成事実作ることにしたわ。戦いでは完璧を求めてチンタラするより、準備不足でも突っ走る方が重要なのよ。

 というわけで結婚するわよ、ヴィクトール」


 



 結構まくしたてたのにもかかわらず、既に正気を取り戻し、思考巡らせているようだ。やっぱり頭の回転早いなコイツ。


 「そうか、だからお前が来たのかピエール。今更気づいたが俺とのおしゃべりなんて、遊んでるに等しい仕事をお前ほどの男にさせてる余裕なんかあるはずがねえのに」


 「その通りで御座います。当家は只今上へ下への大わらわ。家臣一同は勿論のこと、御頭首様、若殿様、仲兄様、御前様、若奥様含め、少なくとも今宵は一睡することも叶わぬ程の多忙を極めております」


 「そうだよなぁ、俺のとこにいる場合じゃないよなぁ。でも来なきゃいけないよなぁ、婚姻だもの。聖職者がいないと」


 「ええ、ええ。職務としては随分と行っておりませんが、主への信仰を忘却の彼方へ追いやったことなど片時たりとも御座いません。万事恙なく執り行って御覧に入れます」


 「しかしながら、複雑な胸中で御座います。若殿様と若奥様の婚姻の儀執行が臣とリシュリュー家との御縁の始まりでありました。紆余曲折あったものの、お仕えすることとなり今日に至ります。

ゆくゆくは我が主の婚姻の儀も臣が、との願いを密かに胸に抱えておりましたがそれは仲兄様の後のことだとばかり」


 「そうか、そうか。恨むなら侯爵家の婚姻を執り行える位階まで登ってしまった自分を恨め。

それほどの高位僧、来いと言ってすぐに呼べるわけもなし。お前しかやれる人間はいない」


 「これも主の思し召しで御座いましょう。

以上が囚われの身となられた我が主とのお戯れなどという役不足極まりない任を臣が負うこととなった次第で御座います」


 「アンタら、いつもそんなまどろっこしい会話してるの?面倒くさ」


 どうしよう。やっぱ結婚やめとくか?



 

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