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永遠に遊べ月世界で・其の六

次回、七十七回とキリのいいところで最終回です。


 『後は埋めてしまえば封印完了だ』

 「まだ終わっておらぬ!」

 魂魄が戻った如斎谷が最後の抵抗を試みる。

 裾がボロボロになったマントを広げ、月面から校庭の大穴めがけて落下してきたのだ。

 「肉体ごとアシャラ様と融合してくれるわ!」

 みんな疲労がピークに達している。俺が迎え撃とう。

 おそらく数日は寝たきりになるのを覚悟で。


 「半六、幽香、後は頼む」

 なけなしの体力と信仰心を最後の一滴まで注ぐつもりで菩提銃を槍のように振りかざすと、銃剣を月光が走り、何倍にも伸長した。

 食らえ――貴様の扇を用いる真空波からヒントを得た技。

 「半月無惨ハーフムーンビザール!」

 銃身を時計の振り子のようにスイングする。

 切っ先から半月状の光る刃が発生、空中で如斎谷と交錯した。


 「真っ二つになれーっ!」

 祈りを込めて叫ぶ。頼む、効いてくれ。

 「ふふっ」

 着地した如斎谷が背を向けて笑った。

 立ちくらみがする。まさか最後の力を振り絞った大技さえ?

 「ふふっ、ふふふふふ」

 笑い方が変だ。こっちを振り向こうとしない。


 「私をスッパリ両断するとは天晴な技だ。君たちの奮闘に免じて今夜はこれでお開きにしよう。その代わりといっては何だが頼みがある」

 口調は尊大だが狼狽気味に奴はつづけた。

 「細胞が癒着するまで私を両側から押さえていてほしい。実はこうしてしゃべっているだけでもマズイのだ」

 半六が近づいて爪先で蹴った。

 「何をする緑の君! ズレる! ズレる!」

 「思い切り飛び蹴りかませ半六」

 「ズレたまま癒着したら切断面を見た人がグロい気分を味わってしまう~!」


 どっと溜まった疲れに圧し潰されて俺は膝をついた。

 決まった。今度という今度こそフィニッシュを決めたのだ。

 「やったあ!」

 幽香たちが俺のまわりに集まってくる。みんなで胴上げでもしてくれそうな盛り上がりの中、怪訝そうに頭髪に触れたのは浩蔵だった。

 「あ? なんか落ちてくるぜ」

 「嫌ですわ。天井から埃でも落ちてきているのかしら」

 ミレーも眉をひそめて肩を払った。


 「違う……そりゃきっと埃じゃない……」

 ここは屋外だ。頭上から何かが降ってくるとしたら、それは空いっぱいの月以外からはありえない。

 「重光! 月が崩れている!」

 「やっぱりそうか……」

 神域を形成した術者たる俺が体力気力を絞り切ってしまえば、この空間を維持しきれなくなるのは必然、月世界が崩壊を始めたのだ。

 ばらばらと降り注ぐ塵は量と凝固性を増し、ひとかたまりの土が足元へ落ちてきた。一刻も早く脱出しなければ。


 「寝ている連中を叩き起こせ!」

 『怒牙阿阿阿阿阿ドガアアアアア!』

 オドシが吠えると失神中の信者たちがいっせいに跳ね起きた。

 「わ~っ!」

 先を競って正門へ殺到する。逃げる最中をアシャラに操られたおかげで、説明せずとも勝手に逃げてくれるのはありがたい。

 「後はオドシに乗って脱出だ」

 すでに水晶玉を持った信南子先生が貨車の扉を開けて待っている。夜歩く、阿吽バランスが乗り込み、三星の輝子が続く。


 歩く余力もない俺を幽香が背負ってくれた。

 「おまえにおんぶされるまでに衰えちまったか……」

 「今朝おんぶしてもらえたお返しができて嬉しいです」

 「待ちたまえ! 私はどうなるのだ!」

 ああ、まだ細胞が融合しないらしい如斎谷のことを忘れていたな。

 故意に忘れていたというべきだが。


 「重光ちゃん、如斎谷さんは置いていくんですか⁉」

 「置いていって何の不都合がある?」

 「あんな人でも命は大切です」

 「奴も鬼女の子孫なら自力で生還できる!」

 幽香の頭をポカポカ叩いて貨車へ搭乗させる。

 扉が閉まると、月面崩落の音と如斎谷の声は遮断された。

 「オドシ! 全速離脱だ!」


放棄せず書き続けて良かったと心から思います。

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