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祇怨大明神の御意向を受けて愚昧な少女に折檻します 作者:狛夕令
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根室重光が如斎谷昆に会うこと・其の一

 神電池がキーアイテムとなるお話の正伝みたいなものです。正ヒロイン格の幽香は、当初はもっと賢い女の子でしたが、思うところがあって暴力突っ込みもやむなしの馬鹿娘に成り下がりました。神使、仏教説話、レトロ建築、男→女へのギャグ制裁など、私の好きな要素を雑多に取り入れていきます。
 毎週続けられるかは微妙なところですが木曜か金曜の夕方頃に更新予定。 

 ※設定の変更にともない徐々に加筆修正していきます。
 あらかじめちょっとした解説をしておく。
 神電池(かんでんち)とは神仏への信仰心を電気に変換して蓄えた乾電池である。
 特に仏教への指向性が強いので観電池ともいう。
 神電池を入れた電化製品は性能以上の様々な機能を発揮する。
 神電使(しんでんし)とは神電池を動力とする使い魔ロボットのことである。
 神電使は主人の代理試合の他、偵察、護衛、警備などの役目を担う。
 上記の経緯で誕生した道具は、ロボット型でない物も神電使に含める。


 夜空には見惚れるほど円かな月。
 俺たち這月那月しゃげつなげつは地元の三光宮さんこうぐうの前に来ていた。
 主祭神は祇園大明神こと素戔嗚命すさのおのみことで、両翼に天照命あまてらすのみこと月調命つくよみのみことを置いて三貴子を成す。通称〝星の宮〟。
 場所を明記すると差し障りがあるので、ギリギリ京都市内に入れてもらえる他の自治体との境にある町、仮に間境区まきょうくとでもしておこう。
 「来てるか?」
 俺は身内の女に聞く。
 偵察用の神使を持っていないので、夜目のきくこいつの五感が頼りだ。
 なぜかジャージ姿の女は真っ赤になって怒った。
 「重光(しげみつ)ちゃん、この状況でするような質問ですか⁉」
 「おかしなことを聞いた覚えはないぞ」
 「来ていて当然じゃないですか! 幽香(ゆか)は十五の乙女ですよ?」
 「誰がお赤飯のハナシなんかしてるっ」
 背中まである黒髪を掴んで、おでこと鳥居の石柱をカチ合わせる。
 火花が散って、いい音がした。

 「来てます……三人……いえ四人……?」
 対戦相手が来ているのかという意味だと涙目で悟った幽香は指折り数える。
 四人までならチームの定員内だ。勝算はある。
 「どのあたりにいる? 入るなり襲われたらたまらんからな」
 「そこは大丈夫です。参道の周辺には誰もいません」
 「よし幽香、銃の用意」
 「どうぞ。聖甘露水をたっぷり入れておきました」
 「うん、これでどんな外道も一発滅魂だ! まずはおまえから!」
 「冷たい冷たい!」
 「水鉄砲なんかどこから持ってきた」
 「重光ちゃんに野蛮な武器を持ってほしくなくて」
 「おまえが非戦主義こしぬけだから俺が体を張るしかないんだろう」
 うっかり死なせでもしたら、天国で見守っているであろう幽香の実の親にも申しわけが立たないとは、心の中でつぶやくにとどめておく。

 「ごめんなさい。菩提銃ぼだいじゅうでしたね」
 ショルダーバッグの中から大ぶりなハンドガンを一丁を出して俺に手渡す。
 「照妖燈しょうようとうは?」
 「抜かりなく……」
 深紅のジャージのポケットから懐中電灯の後端が見える。動きやすいからといって学校の体操着で来るのはどうにかならないのか。
 俺も活動性重視かつ闇にまぎれやすい暗色系のブルゾンとジーンズだから他人のファッションをどうこう言えた義理じゃないが。
 「しっかりしてくれよ。薬師如来の神電池がかかった試合バトルなんだからな。絶対落とせない一番だぞ」
 「はいっ」
 幽香がキリリと表情を固くする。

 時刻は午後十一時をまわったばかり。妹は無論のこと俺もまだ未成年である。よって、あまり〝仕事〟を選べる身分でないのを承知で、引き受けるのは午前零時までと決めている。
 現在、這月那月しゃげつ・なげつというコンビ名で活動中の俺たちの主な業務は悪霊退治。退治といって悪ければ、妖魂と呼ばれる不良化した霊が人に害をなすのを未然に防ぐための浄化もしくは鎮魂か。
 つまりは退魔師だな。もはや裏の仕事などと呼ぶのも憚られる。
 実際、このエクソシスト稼業は同校生を経て紹介された。
 俺が人よりわずかに霊感が働くことと、義妹に神懸かり的な腕力が備わっていること。何より神電池(かんでんち)という一種の魔導具を偶然得たことから、隣のクラスの男子に初見を求めようとしたところ成り行きで退魔師のアルバイトを勧められてしまった。

 ただし、今夜の相手はあやかしではなく人間。ある意味、悪霊よりも始末が悪い。
 理由は同業者同士のナワバリ争いというとわかりやすいか。
 〝青銅の孔雀〟と名乗る好戦的な退魔師チームが、活動圏が重なる退魔師を不意打ちで半殺しの目に会わせる事件が続発、すでに捨翠感神団、阿吽アンバランスと二つのチームが廃業一歩手前まで追い込まれている。
 こいつらを倒せば、新参の俺たちの評価も上がり、同業者から大いに感謝されること疑いなし。加えて勝者への報酬として、相手の所有する神電池を譲渡してもらう権利が発生するのだが、それが薬師如来の神電池とあっては見逃せない。
 妖魂とばかり戦っていては得にくい対人戦闘の経験を積む良いチャンスでもある。誰もが青銅の孔雀を恐れつつ首級をあげることも考え始めた中、俺は先手を取って連中との果し合いの場をセッティングしてほしいと、同校生を通じて〝調整役〟へ申請したのだ。

 「行くぞ。遅れるなよ」
 照妖燈を借り受け、足元を照らしながら鳥居をくぐる。
 言うまでもなくこの神々しい光を放つライトも、市販の懐中電灯に神電池を入れることで、魔物の本性を暴き出す神具へ転生したのだ。
 くれぐれも三光さまが敵に利することなどありませんように。
 「お……おじゃましま~す……」
 続いて幽香も怖々と足を踏み入れた。
 「神聖な場所とわかってても夜の神社とか怖いですね……お化けが出そう……」
 「お化けも幽霊みたいな奴に言われたくないと思うぜ」
 目にかかる前髪とヌボーッとした雰囲気のせいで、真昼でも幽霊と誤認されそうな女である。しかも、前髪をどかしても凡レベルの顔なのが、いっそう不憫あわれ
 まあ、女は顔よりも聡明かしこさだけどな。

 「うるああああああっ!」
 参道を左に寄って進み始めると、水を打ったような静けさだった鎮守の森に怒声が響き渡った。
 力持ちのくせに臆病な幽香が俺の腕にしがみつく。
 「離せ! 敵とる前におまえに潰されたらかなわん!」
 叱咤して肘鉄をくらわせる。こいつは自分の怪力を自覚してないフシがあるので、しがみつくに任せていると腕をヘシ折られかねないのだ。
 「怖いです怖いです! 重光ちゃん、帰りましょう」
 「やらずに帰ったら黙って仕事場を明け渡すことになる」
 「あんなガラの悪い声聞いているだけで幽香は失禁しそうです」
 「漏らしながら戦え」
 「お嫁に行けなくなるようなことしたくありません」
 「仕事に生きろ」
 「重光ちゃんがもらってくれるな……らんっ⁉」

 全部言わせてたまるか。背中に張り手をかまして前へ押し出す。
 幽香があれっとつぶやく。俺もあれっと思った。
 予定では、青銅の孔雀のメンバー全員が待ち受けているはずだった。
 それが拝殿前で偉そうに腕組みして立つ男が一人いるばかり。
旧奈良監獄、炎天下を並んで見学した甲斐がありました。
あまりお洒落に改造しないで下さい。
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