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第2話 残酷な世界

この世界には異能力と呼ばれる潜在能力を持つ者が極稀に存在する。

因みに俺は異能力を持ってない。

だけど、可能性はある。

異能力が現れるには個人差があるからだ。


 此処は孤児院から少し離れた街。

-----デリアスシティ。

外の世界に出たのは初めてだ。

小さな街だけど沢山の人で賑わっている。


「それだけは勘弁してください。」


 街の一角から男の声が聴こえてきた。

男は黒い服を着た集団に囲まれて蹴られている。


「・・・ひどい。」


 集団の中に女性が見えた。

どうやら彼女は黒服の男達に連れて行かれそうだ。


「娘だけは見逃してください。私は殺されても構いません。死ぬまで奴隷にでもなります。どうか娘には手を出さないでください。」

「ひゃははは。それは無理だ。この女は高く売れる。お前は俺様との戦いに負けたんだよ雑魚。」

「能力者だなんてずるいわ!お父さんは無能力者でしょ。最低!!!」

「うははは。能力を持って無いのが悪いんだよ。この世界は力と金が全てなんだよ。お前ら雑魚は俺様に従っていればいいんだよ。」


 力と金が全てだって!?

そんなこと孤児院では習わなかった。

こんな暴力的な世界だなんて思ってもみなかった。


「娘だけは・・・娘だけは見逃してください。」

「おいおい。黙れよ。この女はもう俺様の物なの。殺すよ??」

「お願いします。・・・娘を。」


 男は大泣きしながら土下座している。

集団のボスであろう銀髪の男は呆れた顔をして手のひらを向けた。


「もういい。死ね。」


 一瞬で血飛沫ちしぶきが辺りに飛び散った。

俺は開いた口が閉じれなくなった。


 外の世界に来てほんの2時間。

人が一人、目の前で殺された。

それも圧倒的理不尽に殺された。

孤児院ではこんな話一切聞かされていない。

最低限の武術や知恵を学んだだけだ。

先生はどうして教えてくれなかったんだよ。


「じゃあ後はこの女を連れて帰るだけだな。死ぬまで金を絞りとってやるからな。あははは。」

「ああぁぁぁぁ!!!!!よくもお父さんを殺したな!!!絶対に許さない!!!」

「黙れよ。親父みたいに殺すぞ雑魚。」


 泣き叫ぶ彼女を強引に引きずっていく。

周りの人はその光景を誰も見ていない。

哀れみの目すらない。

・・・なんて残酷な世界なんだ。


 ゆっくりと集団は俺の横を通り過ぎていく。

彼女は泣きながら俺を見た。


「・・・助けて。」


 助けてなんて言われても俺は無力だし。

怖いし、無理だって。

助けるなんて出来ない。


「お願い!!助けてください!!!」

「黙れ雑魚。それ以上叫んだら殺すぞ。」

「痛い痛い!!!」


 彼女はこれからどんな目に遭うんだろう。

・・・体を売られたりしてしまうのかな。

今、だったらまだ間に合う。

誰も彼女の叫びを聞いていない。

彼女と目すら合わせない。


 ・・・こんな理不尽な世界なんて間違っているだろ!!!


「おい!!彼女を離しやがれ!!!!」

「誰だお前?能力者のこの俺様と喧嘩でもしたのか?死ぬぜ。」

「さっさと離せ!!」


 俺は全力で銀髪の男に向かって殴りかかった。

あっさり蹴り飛ばされて地面に転がった。


「よっわ。雑魚雑魚雑魚。さっさと死ね!!!」


 銀髪の男は俺に手のひらを向けた。

手のひらから無数の雷が俺を襲った。


 視界は紅。

血飛沫が冷たく降り注ぐ。


 ・・・・一瞬で意識が消えた。


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