第1話 旅立ち
「起きろ!!!授業中に居眠りすんな!」
「ん・・・冷たい。」
机に垂れた涎が頬に付いて冷たい。
「雨音 炉亜。テストを返却するから取りに来い!!」
「・・・はーい。今回のテストは寝る間も惜しんで勉強したんだ。80点は余裕で超えてるよ先生。」
「日頃から勉強してちゃんと寝ろ。」
差し出した用紙に書かれた点数は0点。
「え!?何かの間違いだって!!全問正解じゃん!!!」
「確かに全問正解だ。でもな、大事な物を書いてないぞ。」
「・・・大事な物?」
「名前だよ。両親が愛情込めて付けてくれた物だろ。ちゃんと書けよ。」
「俺の・・・努力が。両親なんて会ったこともないし。どうでもいいよ。・・・名前なんて。」
「突っ立ってても点数あげないぜ。さっさと戻れ。」
「・・・はいはい戻りますよ。」
俺の名前は雨音 炉亜。
赤ちゃんの頃からずっと孤児院にいた。
両親には会ったこともない。
どうやら俺は捨て子だったらしい。
俺はもう15歳だ。
この孤児院も外の世界で生きていけると判断されれば独立しなければならない。
外の世界で、上手くやっていけるか不安だ。
「炉亜、ちょっと来い。卒業の話だ。」
「・・・はーい。」
暗い廊下を先生と歩いている。
こんな機会ももう二度とないのかもしれない。
幼い頃は暗くてお化けが出そうで泣いちゃって、よく先生が付き添ってくれてたな。
・・・もうお別れかよ。
「炉亜の卒業が今夜に決まった。生憎お前さんの成績はこの孤児院の中でトップだから生きていけるだろうって判断されちまった。」
「はぁ!!!?今夜だって!!!もうすぐ夜じゃん。俺、怖いです。外の世界で一人で生きて行くなんて出来ません。」
「炉亜なら大丈夫さ。君には戦いや頭脳の才能がある。この世界は広いぞ。苦しい時も不安な時も沢山あるが、幸せや喜びだって感じる事ができる。炉亜なら生きていけるさ。」
「でも・・・。」
先生は俺の頭を優しくぽんぽんと叩いた。
「大丈夫だよ炉亜。これまで習った事を充分に生かせばやっていけるさ。それに一人じゃない。仲間を作ればいいんだ。色んな人々が手を取り合って生きているんだ。」
「・・・先生、ありがとう。出発の準備をしてくる。俺、生き抜いてみせるよ。」
「おう。頑張れよ。」
俺は急いでリュックに荷物を詰め込んだ。
孤児院の門には孤児院の仲間達が集まっていた。
「炉亜!!お腹空いたらちゃんと食べなよ。野菜も食べなきゃ駄目だよ。」
「・・・美咲。」
「おい炉亜。俺より先にくたばったら許さねぇからな。」
「・・・優真。」
みんな涙を流して見送ってくれてる。
この15年間、本当にお世話になった。
俺に生きる場所をくれたみんなに感謝してる。
「さよなら。みんな。」
「バイバイ!!!」
「元気でな!!!」
「炉亜!!!頑張ってね!」
「ありがとう!!!」
俺は15年間育ててくれた孤児院を離れ、外の世界へと歩み始めた。
1話目を読んでくれてありがとう!!!
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