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4話・ひょっとしてばれた?

「王女殿下。ご案内致します。こちらへどうぞ」

 リスバーナ北国から護衛のため引率してきたマクリナ王国の警護の兵が、アデルとリリーを城塞のなかへと案内する。長時間馬車でゆられて来たので腰が痛いし、足はパンパンに腫れている。ベットにすぐに横たわりたいなどと考えてアデルが兵の後に続くと、案内されたのは奥の部屋だった。

「リスバーナ北国(ほくこく)の王女殿下が到着されました」

「入れ」

 兵は部屋のなかにいる者に声をかけ、なかの人物から許可をもらうと、アデルを中へ促がした。国境沿いのマクルナ駐屯地は城塞で、マクルナ国王がいる王城にはさらに長い移動になる為、そこで休憩するとしか聞かされていなかったアデルは面食らった。

 外の堅強な造りに似合った石作りの部屋には、黒い外套をまとった二人の若者が待っていた。小顔で長身の黒髪の若者と、白金の髪の若者だ。

 マクルナ国の民は、黒髪に黒い瞳をしていると聞いていたし、マクルナの兵たちも、皆一様に黒髪に黒い瞳をしていたので、白金の髪の若者の存在は目を引いた。どことなく自国の者に近い存在に思えて、リスバーナで彼に似た誰かを自分が知ってるような気にさせられる。

 アデルたちを案内してきた兵が、黒髪の若者の前に近付くと、深く一礼した。

「陛下。リスバーナ王女殿下を御連れ致しました」

「ご苦労だった。下がっていい」

「はっ」

 黒髪の若者から(ねぎら)われて、案内の兵が退出して行く。その姿を見送ったアデルは間抜けな声をあげた。

「陛下?」

「姫さま」

 アデルの失言を咎めるように、ドレスの裾をリリーが引く。黒髪の若者は、ベールを被ったアデルに目を向けた。その態度にやはりそうだ。と、思う。

 この場で陛下と呼ばれる存在といえば、アデルには、マクルナ国王その人以外には心当たりが無かった。

「ようこそトゥーラ王女。余がマクルナ国王、ソラルダットだ」

 リスバーナ国では王族や貴族の婚姻というのは大概政略結婚で、花嫁花婿というのは婚礼の席で初めて相手と顔を合わすもの。マクルナ国でもてっきりそうだと思っていたが、どうやら違ったようだ。駐屯地で対面とはとんだ番狂わせだ。

思いがけない出会いに、声もなく立ちつくすアデルにつかつかと歩み寄った国王は、いきなりベールを外した。

「何を…!」

「後に夫婦として顔を合わす事になるのだから、いま顔を拝見しようとなんの問題もないと思うが?」

 顔をさらされて非難の声を上げようとしたアデルは、国王の黒い双眸と目が合って凝視した。マクルナ国王ソラルダットは、粗野な行動に反して優しそうな柔和な顔立ちをしていた。

 そのことを意外に思っていると、理知的な輝きを放つ黒い瞳が見つめていた。背の高いソラルダットを仰ぎ見れば、相手は不躾にまじまじと見つめて来る。

「そなたがリスバーナ王女?」

「はい。末永くよろしくお願い致します」

「…うむ」

 アデルがドレスの裾をつまんで膝を折り、リスバーナの王侯貴族式の挨拶をすれば、ソラルダットはなにやら思案している。まさかトゥーラの偽者とばれたのではと、アデルが表情を硬くすると思いがけない声が振ってきた。


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