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15話・新居マルメロ城

「このお城は先々代の国王の時代に、寵愛を受けていらした側室の為に王が建てた城なんです。当時は狩猟や避暑の際、利用されていたようですが、今は誰も使っていません。陛下はこの離宮で姫さまが快適な生活を送れるようにと配慮されました」

「ああ。素敵。わたくし気に入ったわ。陛下にお礼申し上げてね。それにあなたが側にいてくれることになって心強いわ。でもそしたら陛下は、どなたがお守りになられるのかしら?」

 アデルが、この離宮で暮らす事になり、ハロルドはその身辺の警護を任されたそうで、これからはアデルの下に仕えるのだと、リリーから教えられていた。

 ハロルドが側にいてくれるのは心強いが、確かソラルダットが、ハロルドを紹介してくれた時に、自分の近衛騎士団の総隊長と言ってたので、アデルが彼を借り受けるとなるとソラルダットは誰に守ってもらうのだろうと心配が先に立った。

「姫さまはお優しいのですね。陛下にはもともと我々は必要ないのですよ。ご自分の身はもちろんのこと何かあれば、他の方も守れるくらいにお強いので。重鎮の方々もいざというときは剣を振るいますから」

 ハロルドは自分達近衛騎士団は、陛下にとってお飾りの様なものだと告げた。アデルはレイディア城で居並んだ重鎮たちの姿を思い出して、確かにあの方たちなら陛下の盾となってお守りしそうだと納得する。

「さあ。ここで立ち話もなんですから中へどうぞ」

 促されて城の玄関口へと近付くと、黒の制服を着た男性と、落ち着いたモスグリーン色のドレスを着た女性が立っていた。黒の制服を着こんだ男性の方はハロルドと同世代の若者のようで、前髪を油で撫でつけて後ろに流した真面目そうな性格を思わせ、その隣に居る女性は、若者の母親といってもおかしくないほどの年齢の女性で、アデルを見てにこにこと笑いかけてくる。近付くにつれ2人が親子の様に容貌が似ているのが分かった。

「この方たちは?」

「こちらがトリアムで、その隣がナネットです。ふたりは親子なんですよ」

「はじめまして。リスバーナ王女殿下。サイホン伯爵家のトリアムと申します。今日よりあなたさまの侍従長を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願い致します」

 ハロルドの紹介を受けて、若者が口を開いた。少し緊張しているのか表情がぎこちない。その隣で喜びにあふれてる様な夫人の声が上がった。

「サイホン家のナネットでございます。あなたさまの女官長の位を賜りました。あなたさまに親子ともども仕えさせて頂けるなんて光栄の極みでございます。どうぞ末永くよろしくお願い申し上げます」

 深々と頭を下げて来る。アデルも略式だったがドレスの端をつまんで会釈した。

「こちらこそよろしくお願い致しますね。わたくしの後ろにいるのが、国許から連れてきた侍女リリーです。わたくしと同様に仲よくして頂けると嬉しいですわ」

 アデルは振り返って、連れのリリーを紹介した。サイホン親子はアデルの行動に目を見張っていたが、ナネットが頬を緩ませた。

「さあさ。王女殿下。お疲れでしょう? まずはお部屋の方へご案内致しますわ。侍女の方もこちらへどうぞ」


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