#6 宿屋とエレーナ
今回文字数増やしました。ではでは
「そういやエレーナはこの街に住んでんのか?」
俺達2人は今、エレーナの提案により、エレーナが泊まっている宿に適当に話をしながら向かっている。
「はい。この街で冒険者をしながら、宿暮らしです」
「そうか。エレーナ」
「はいっ、何でしょう?」
一回一回尻尾を振るなよ……可愛いけども。
「部屋は一部屋しかないのか? なんだったら2人部屋にするか」
「え!?」
おいおいおい、顔真っ赤になり過ぎだろ。冗談半分だったんだけど……。俯いてるが丸分かりだぞエレーナよ。特にお前の尻尾で。もう見てきた中で1番の勢いで尻尾がブンブン揺れてる。
あ、手でこっそり抑えた。やっぱり自分の意思じゃ止まんないのか、ソレ。
「嫌なら良いが」
「!! 嫌なんてとんでもないです! 是非お願いします!……あっ」
また赤くなった。いきなりでかい声だすから周りから注目されんだぞ。ここ結構人通り多いいんだから。
「ほら、早く案内してくれないと、俺この街来たばかりで知らないんだから」
「は、はいっ」
***
「ここ?」
「そうですよっ、ここが私の泊まってる《泊まり木の宿》ですっ」
ほーう。
木造の2階建てで入り口の両開きのドアの上にベットのマークと木のマークが書かれた丸い木の板が掛けられてある。
「じゃ、入ろうか」
「はいっ」
うわー、入った途端、視線視線視線、鬱陶しい……無視無視
「あら? あらあらあら! エレちゃんどうしたの? このイケメン君は! ついに相手が見つかったのかい?」
カウンター兼厨房からふくよかなおばさんが現れエレーナに笑いながら寄って行く。
なんか周りから殺気が、まぁ無視で。
「あっ、おばさん。そ、その、この人は……」
何でそこでチラ見してくる。殺気が膨れ上がったぞ……。
「こ、ここ、恋人? です!」
照れるな。俺も照れる。
『『ガタッ』』
「まぁまぁまぁまぁまぁ! 2人部屋に変えとくよ。階段登って右側の1番奥を使いな! 料金は明日の朝にでも持ってきておくれ」
「あっ」
「どうしました? ラザス様」
『『ピクッ』』
お、おぉ。そういや有名になるとか言ってたな、やっぱり見た目までは分らなかったのか、皆一斉に席に着いた。
「いや、なんでもない。じゃあ行こうか」
「はいっ!」
あぁ、可愛い。この笑顔。
その後、俺らは一階でチラチラと視線を感じながらもウルフ肉の素焼きとレッドーバードの塩肉なる物と、野菜などが入ったスープを食べて、エレーナの荷物を移し終えて、桶に入ったお湯を貰い体を拭いてそれぞれに用意されたベッドに入った
「おやすみ」
「はいっ、おやすみなさいです」
***
今日1日、かなり濃い1日だった。こんなに楽しかったのはいつ以来だろうか。いつも椅子に座っているだけの日々だった。たまに書類などに目を通してサインして、下界の様子や他の神の近況を聞いたり、色の無い日々だったが、こっちに来て僅かだが、全てが色のある時間だ。まだ来たばかりだが、来てよかったと思えるような一日だった。
さて、次の目標は金を稼いで奴隷を買う。そしてこの街を出る。エレーナには明日にでも言わなきゃな。俺の勝手な都合だが、こればっかり仕方ない。そして奴隷を買って街を出たら、次は――ん? 隣で動く気配が……嫌な予感がする。
「ラザス様、起きていますか?」
寝る前にメッチャチラチラ見てたもん。しかも今さっきも寝ているはずなのに布団の中からパタパタ尻尾の音とそれを止めようとするような音が聞こえてたもん。
「どうした?」
「そちらのベッドで寝ても宜しいでしょうか……?」
どうしよう、まぁ寝るだけ、寝るだけだから……。
「あぁ、良いぞ」
「し、失礼します」
俺が左に避けてエレーナが俺が居た位置に、つまり俺の右腕に抱きつき……え?
「え、エーレナさん……?」
「はい?どうかしましたか?」
「いや、なんか右腕に柔らかいモノが……」
「はい」
はい。……はい?
ちなみにエレーナのスタイルは、身長178の俺よりも少し身長が低く、出るとこ出ていてスタイル抜群だ、モデル体型?ってやつだ、しかも胸はDはあるそうだ(興味本位で聞いたら顔を真っ赤にしながら教えてくれた)。
なので柔らかい胸が俺の腕を挟むように包んでいて、エレーナ自身俺の右腕に自らの腕を絡ませて、さらに俺の右脚もエレーナの脚にガッチリ絡まされている。
「凄く落ち着きます……」
「そ、そうか」
「ラザス様に会えてとても嬉しいです。本当に、私は幸せ者です……おやすみなさい。ラザス様」
「お、おう。おやすみ。エレーナ」
無性に腕の感触が気になり、俺は中々眠れなかった。