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#41 解決

 

 調査を始めて4日が経ったが、俺は誘拐犯について何も掴めずにいた。エレーナ達も同様に、なんの情報も得られていなかった。

 さらに歯痒いことに、俺たちが調べている間も誘拐は続いていた。



「はぁ〜、どこ聞いても同じことばっかでダメだ……。誘拐があった場所に行っても何にも分からずだったよ」


「こちらも同じですね、全くダメでした」


 ベットで横になったまま俺が言うと、椅子に腰掛けていたサラノが、少し俯き気味に言った。


「サラノ、明日からは俺も一緒に行動するからな」


「え? ラザス様も、ですか?」


「ああ、ちょっと気になることがあってな」


「わかりました。エレーナとナーシャも喜びますね」


 この4日、俺は何度か3人と一緒になった。その際、同じような視線を何度か感じていた。普段からも3人には容姿のこともあり、視線が集まるのだが、俺が感じたのは、僅かに殺気と魔力の混じったものだった。


 俺たちの誰かに向けられた魔力を弾き、直ぐに気配を探っていたが、毎回その気配が一瞬で消えてしまうため、取り逃がしていた。念のため、もしもの時の為に一緒に行動するというわけだ。

 エレーナとナーシャはこの4日間張り切り過ぎたのか、疲れて二人仲良く眠っている。



 ***



「さて、そろそろ始めますかね」


 深夜、サラノも眠り、起きているのは俺だけとなった部屋で、俺はベッドに腰掛けたまま──神力を一気に解放した。


 どんどんと広げて行き、王都全域にまで範囲を広げていく。サラノたちには悪いが、正直に言うといちいち歩き回って調べるのが面倒くさくなった。


 後はこの状態を維持したまま待つのみ。




「遅い……」


 あれから時間は進み、日が登り始め、外は薄っすらと明るくなっていた。

 にも関わらず、神力で創り出した網には俺の感じた魔力は一切掛からなかった。


「魔法使って攫ってると思ったんだけどなぁ……」


 一旦諦めようと思ったが、もう暫くだけ続けることにして、また意識を集中する。







「──────こいつか?」


 日が完全に登った早朝、あの魔力に似た魔法が使われた。場所は王都でも人気のない路地。人数は二人、一人は何かしらの魔法を使用していて、もう1人は、その場から走りだし、逃げ出した。


「早く行かないとマズイな」


 襲われている場所と位置は分かっているので、俺は立ち上がり──翔んだ。



 ***



「おっす」


「ッ!?」


 俺は相手の背後に転移した。

 真っ黒のフード付きのマントを身に纏い、全身を隠した男か女か分からない人物。恐らくこいつが今までに起きた誘拐事件の犯人だろう。すぐ横には一人の男が倒れていた。


 俺に気付いていない黒マントの肩に手を置き、声をかけた。すると、咄嗟に此方へ振り向き、直後に俺から距離をとった。フードのせいで顔は見えないが、警戒しているのが手に取るように分かる。


「貴様……冒険者の……」


「始めまして、かな? まぁコソコソと見ていたみたいだが。王都で起こっている誘拐事件、お前だよな?」


「……だとしたら何だ?」


「そりゃぁもちろん、なぁ? ──捕まえるでしょ」


「……」


「あら? 何だこれ……?」


 一瞬、黒マントの背後に翔んで、取り押さえようとした瞬間に、相手の足元の地面から、黒い壁のようなものが現れ、俺の四肢に絡み付いてきた。


「……丁度良い、貴様も連れて行く。《黒の拘束》」


 黒マントの男が呟くと、今度は俺の足元に、穴のようなものが現れ、体が沈んでいく。


 この魔法で捕まえてたのか。

 確かにこれなら攫った後もバレないで済む。便利な魔法だな。


「まぁそんな簡単には攫われてやらないけどな」


 両腕の拘束を力任せに引き剥がし、既に穴の中へと沈んでいた足の拘束はそのままに、腕の力だけで穴から抜け出す。


「邪魔」


 足の拘束も引き剥がし、自由となった。


「チッ……」


 黒マントの手の平に、黒い靄のようなものが集まり、長さ2m程の槍の形となる。


「『黒槍』」


 黒マントが俺の方へ手を翳すと、その槍は俺目掛けて飛んで来た。

 俺はそのままその場から動かず、槍が目の前へと来た瞬間、右手を払うようにし、槍を消し飛ばし、相手へと一気に距離を詰める。


「終わりだな」


「なっ!? 貴──」


 何か言おうとしていたが、気にせずに、強めに腹に一発、意識を奪う。


「さて、後は他に任せますかな」


 俺は黒マントを肩に担ぎ、その場を去った。



 ***



「ふぅ〜、良い仕事したわ〜」


「何をしたんですか? ラザス様」


「ん、ちょっとな。今日からは聞き込みとかしなくて良いぞ」


「え? 突然ですね──あぁ、なるほど、流石ですね」


 宿へと戻ると、サラノが既に起きていた。

 俺が言ったことの何を理解したのか、1人満足気に言った。


 俺はあの後、一旦宿へ戻り、一階で紙とインクペンを借りて、黒マントが誘拐犯であることと、もう1人は攫われそうになっていたのを助けた男だということを書いた紙を、国の騎士団の駐屯所の目の前に置いて、宿へと帰って来た。


 一応誰かが見つけて、連れて行くまで見張っていたので、恐らく大丈夫だろう。

 後は国がやってくれる。

 その後エレーナとナーシャも起き、事情を話した。



 数日後、王都に住む貴族1人が捕まった事が分かり、捕まっていた人達も解放されたそうだ。


一月が終わるとこだった。危ない。

早足みたいなってしまいました……。


次回もよろしくお願いします。

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