#40 説得
宿へと戻った俺は3人にギルドでの事を話した。まぁ分かったのは『影の闇』という意味不明な単語だけだが。
「でだ、どうする? 俺たちに被害がきてるわけじゃ無いから俺はどちらでも良いが、一応聞いとこう思ってな」
「ラザス様の意見に私は従いますよ」
「私はなんとかしたい……です…」
「私もできることなら何とかしたいです!」
ふむ。どうにかする方で決定か。
正直なとこあまり関わりたく無いのが本音なんだけど。この3人、特にサラノとエレーナは超が付くほどの美人美少女だからなー。 もちろんナーシャも美少女だが。
だから3人が標的にされて狙われたりする事もあるかもだし。
「てことで、もし動くなら俺だけが動くけどな」
「「「え!?」」」
「えってお前、当たり前だろ。下手に動いてお前達が狙われたんじゃ元も子もないだろ。お前達は宿で待機だ」
「そんな……! ラザス様1人でなんて危な……い…」
「……エレーナ」
ポンポン。
フルフル。
「あっ……」
「???」
おい。 おい。
何故だサラノ。何でエレーナの肩を叩いて『ないない』みたいな感じで首を振った。
そしてエレーナ、お前も何であっ……(察し) みたいな顔をした。何も知らないナーシャが頭の上に?マーク浮かべてるぞ。
まぁそれは良いとしてさ、少しは心配しろよ……。
「お前ら……」
「こ、コホン。ら、ラザス様に1人で動いてもらうわけにはいきません! いくら強くても相手が分かってなければ意味ありません! そこで! 犯人を探す、手掛かりを得るには1人よりも私達含め4人の方が効率が良いと思うのです!なので、私達にも聞き込みくらいならできるので手伝います!」
俺がジト目で睨み付けるとワザとらしく咳を払い、捲し立ててきた。
エレーナさんよ、さっき俺の意見に従うって、破るの早くない?
で、確かに正論ちゃぁ正論だがな、相手が分かってないから余計危ないんだろうに。
それに聞き込みってお前……。
「わ、私もそれなら……」
「私も!!」
んなこと誰でもできるわ! !
「却下、大人しく宿で待機な」
「「「イヤです!」」」
コイツら……。
抗議の声を上げる3人、ナーシャは可愛らしく頬まで膨らませている。
フン、可愛く言ったってダメなもんはダメだ!!
「うっせ。却下ったら却下。俺はお前達を危ない目に合わせたくないんだ。分かってくれ。な?」
「うぐっ、わ、私は……」
俺が言った言葉に一瞬狼狽えたエレーナが指を絡ませて、モジモジとしだし此方をチラチラ見てくる。
? 何だよ。
「宿で大人しくしてるので、な、撫で撫でしてほしいなー。なんて、言ってみたり……。あはは…は、は……」
「「「………」」」
堕ちたエレーナ。相変わらずちょろい。
俺からは温かい笑みが、サラノとナーシャからは裏切り者! という冷たい視線が。
偉いぞエレーナ。俺の気持ちが伝わってくれて嬉しいよ。
「………ん? なんだよ。睨んでもダメなものはダメだ」
エレーナの頭を撫でていると横から視線を感じたので見てみると2人が俺とエレーナをジトっと睨んでいた。
寧ろご褒美です。ゲフゲフ。
エレーナが物足りなさそうにしていたが、気にせず2人目、ナーシャを撫でてみると、不服そうにしながらも、拒みはしなかった。
「むうぅぅ……」
「はいはい、良い子にしてようなー」
「私は子供じゃないですー!!!」
とか言いつつ撫でられる手を払わないナーシャさんマジリスペクト。
「ほらサラノも」
「……」
「ぉぅ……」
あ、あれ? いつもなら尻尾フリフリしながら来るのに……。
両手を広げておいでポーズをとりサラノを呼ぶとプイっと視線を逸らされた。試しに尻尾を触ろうと手を伸ばすと今度はフイっと尻尾にまで避けられた。
珍しくツン、としているサラノから『私、そんなに安い女じゃないんです』 というオーラが出ている……気がする。
まあ、不機嫌なのは確かだな。
「ハハハ……」
にしても困った。1番エレーナがイヤイヤすると思ったら、直ぐに賛成してくれるだろうと思っていたサラノが……。
俺が過保護過ぎる、のか? 確かにステータスは2人共高めだが、エレーナとナーシャは冒険者だし、それなりに戦闘経験もあると言っていた。ナーシャの方はちょっと信用できないが。そしてサラノは殆ど戦闘経験は無いと言っていた。だから尚更折れるわにはいかない。
……ふむ。どうしようか。
かと言っても何か機嫌を直す方法も思い浮かばず。
数分、どうしようかと悩んだ結果──。
「……聞き込みだけだぞ。それと人通りの少ない場所は禁止。行動は常に3人で。何か分かっても絶対自分達だけで済ませようとしないこと。その時は宿に戻って待機。んで俺に報告。これが絶対条件だ」
「!!!」
折れました。
言った瞬間此方を見てさっきとは裏腹にパアァっと表情を明るくするサラノ。
あぁ…… やっぱりやめとけば良かった。この表情を見るとどうも過保護になってしまう。
……何だろう、急に将来尻に敷かれそうな気がしてきた。
結局俺が言った事を絶対守るのを条件にサラノ達にも手伝ってもらう事を承諾した。
そして翌日、捜査という名の犯人探しが始まった。