#39 何やら不穏な空気です。と『黒の魔術師』と『闇』
「へぇ…… 裏奴隷ね…」
「はい、最近ハルバーツ王都内で誘拐、行方不明者が増えていて、噂では奴隷として売られていると」
「貴族も関わっているという情報も。国も軍を動かすなどして調査しているそうですが今だ手掛かりを掴めてないそうです」
「あとあと! 行方不明者は種族関係なくだそうです!」
今言ったのはサラノ、エレーナ、ナーシャだ。
3人は昼からマッサージに行って、買い物に行っていたのだが、帰宅途中に今の話を耳にして詳しく聞いてきたらしい。
ちなみにマッサージは昨日も行ったんだから今日は我慢しなさいと言ったのだが無理だった。
だってさ、美女美少女におねだりされるんだぜ? 上目遣いで服の裾をチョコんと掴んで。
『マッサージ、行きたいです……』
無理でしょう? 俺は無理だったよ。
今日は全身マッサージのコースをうけたらしい。代金はもちろん俺持ちですよ。買い物のお金も全部ね。
「うーん、国が動いてるのに何一つ掴めてないんじゃ個人じゃもっと無理でしょ」
「ただ、一つだけ気になる事が……」
サラノが何やら言いたそうにしている。 まだ何か知ってるのかな?
「どうした?」
「住民に聞いたのですが、あくまで噂ですよ? 『黒の魔術師』という人物が関わっているみたいです」
「なんだそりゃ」
怪し過ぎるだろ。確定じゃねえか。
「あまり情報が無いのです。ただ黒の魔術師という事だけしか……」
黒の魔術師……… うん。分からん。
「まぁ、そいつが関わってるのは確定だな」
「恐らくは」
ふむ。
情報に困った時は――。
「冒険者ギルドハルバーツ支部へようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
ここですよね。
ちょうど良いので冒険者ギルドに関して少し話をしようと思う。
冒険者ギルドは基本的にどこの国にも属していない。所謂中立派というやつだ。ガルガンツに本部があるものの、実際は国に従うみたいな感じでは無いし、ガルガンツに本部があるからと言ってガルガンツが他の国より優位に立っているという事も無い。
魔物などからの襲撃等があった場合は、全て依頼として出される。王族貴族といえども報酬も当たり前だが払わなければいけないし、冒険者がその依頼を必ずしも受けるとは限らない。
ランクの高い者になると指名依頼が来る場合もある。これは貴族や王族、地位の有る者がする事が多い。そうじゃなくとも、依頼者が『この人は良かった、また次もお願いしたいのだけど』と言ってくる事もある。そういった場合も指名依頼となる。
ちなみに、何故高ランク冒険者が多いのかと言うと、ランク=信用になるからだ。自分の護衛などを任せる場合、ランクが低い初心者達は逃げ出したりして依頼を放棄する事もあるという。なので指名依頼は殆どがランクが高く、一人前として認められるBランクから受ける事が多い。
以上が冒険者ギルドに関する情報だ。俺もあまり詳しくは無いが、確かこんな感じの事を受付嬢が言っていた気がする。
閑話休題
「最近行方不明になる人が増えてるって聞いたんだが、何か情報は無いか?」
「あるにはありますが、街で既に噂になっている『黒の魔術師』と『闇の影』の二つだけで……」
闇の影? また分からんのがきたな。
「どこから流れたのか分からないですが、その二つだけが唯一解っている情報です」
「そうか、ありがとう」
「仕事ですので。またのお越しをお待ちしてます」
割り切ってんな受付さん。
さて、情報が一つ増えただけか。
手掛かりは『黒の魔術師』と『闇の影』……
ふむ。分からん。
「とりあえず色々やってみるかー…… 三人にも話さないと。ま、行動するのは明日からだな」
ギルドを出たラザスはそんな事を考えながら1人宿へ戻って行く。