#32 道中暇です。
「今回は本当に助かった……!!! もし村に来る事があったら是非寄ってくれ! その時は村を挙げて歓迎しよう!」
「ラザスさん、本当にありがとうございました。もし寄るなら必ず寄ってくださいね!」
翌朝の昼。
俺、エレーナ、サラノの三人は村の入り口へ集まっていた。ラーツにラナ、他の村人達も見送りに来てくれている。
「ああ、是非寄らせてもらうよ」
「ああ! 本当にありがとうな! じゃあな!」
「えいや!」
「ぬお!?」
「……ふふ、ありがとうございました! またいつか会いましょうね!」
ラナが最後に抱き付いて来たのでビックリした……後ろの2人の笑顔が怖いのです…
「ああ、またな」
俺は馬車の御者台へと乗り馬車を出す。
「「「さようならー!」」」
こちらが見えなくなるまで村人達が手を振って見送ってくれた。良い人達だ。
***
「くぁ〜っ、あー、眠……」
昨日は朝方までエレーナとサラノの相手をしていたので寝不足で眠い…… 交代まで後40分か…。
「2人は何してんだろうか……」
ふと気になり御者台から荷台の布を捲り中を覗く。
「寝てるのか……」
エレーナとサラノが荷台の床に薄い布ような布団を敷いて寝ていた。
うん。女性が仲良さそうに一緒に並んで昼寝か……良いね!
「おはようございます。ご主人様」
交代の時間になると荷台からサラノが出てきた。
「おはよう、まだ寝てて良いぞ? 俺やっとくから」
先程まで強烈な睡魔に襲われていたが、何とか耐えていたらいつの間にか消えてた。限界超えたら眠気が飛んだ。
(これが限界突破じゃぁぁあああ!!!)
(やかましいわ)
「!?」
「どうしたんですか? ご主人様」
「い、いや、なんでもない。俺もう眠くないから一緒に居るわ」
「!!! では、失礼しますね」
「……ここ?」
「はい。ダメですか?」
「いえ、全然。寧ろウェルカム」
「そうですか」
そう言ってサラノはクスクスと笑う。
隣ではなく俺の膝の上に座ったサラノ。温かくて柔らかい感触とモフモフフサフサの尻尾が目の前に…… あ、狐耳がピクピクめっちゃ動いてるわ。
「む」
「ふぁ!? い、いきなり触らないでください! デリケートなとこなんですよ!」
「お、おう、ごめん」
怒られた……
「い、いきなり触るのがダメなんです。もう大丈夫ですよ」
「ん」
「んん、ふふ、くすぐったいです」
顔は見えないがニコニコしてるんだろうなー…… いやいや、してなかったら俺只の思い込み野郎じゃん。うわ、これは無しだわ。
……走ってハルバーツまで行きたい…旅と言えば馬車とか言った馬鹿は誰だ。
「んっ、あ、の…ご主人、様…手つきが……ふあ…」
「おお!? す、すまん」
「あっ、うう、うぅぅう!」
「ちょ、い、痛い痛い! 顔に後頭部擦り付けんな! 口で言え口で!」
「嫌とは言ってないです。やめないでください」
あぁ……サラノまで…
「ご主人様、人は変わるんです」
説得力あるわー……。
あと心読むな。
「付け根のとこお願いします……んー、ふふふ、上手ですよ」
……あれ? なんかおかしくない?
「付け根のとこも撫でてください……」
「………」
「ん、んんっ!」
「サラノ?」
「なんでしょう?」
「なぜ前後に動かしてるのでしょうか……」
「さあ? なんででしょう」
あれ? 俺主人……あれ?
「さて……俺はちょっと休むんで膝から降り「昨日」……へい」
「私が途中で気を失った後も、続けてましたよね? それも朝方まで」
「あい……」
ああ、要するに――。
「私にも続きをすることを求めます」
ですよね。
「いや、でもあれは気を失ってたから仕方が無いというか……」
「大丈夫ですよ。遠慮しないでください。私が動きますから」
「ぬぉお!? ズボンを脱がすなぁぁああ!」
「まぁまぁまぁまぁ……」
何がまぁまぁまぁまぁだよ! どこ見て言ってやがる!
「えぇい! やめんかこのエロ狐め!」
「えいっ」
「ちょっ、後ろエレーナが「大丈夫ですよ」…待っ――」
「ん、んー……あはっ、はいっちゃいました。逃げ場無しですねご主人様」
こ、こいつ、なんて顔で言いやがる……。
「ぐ、この、次はお前かぁぁあああ!」
それから1時間、街道に押し殺したような甘い息が静かに響き続けた。その間馬車は小刻みに揺れ軋み続けた。
しっぽり。