#27 オーク討伐1ー3
「本当か!? あっ! でもお前さん達馬が…」
「走るから問題ない。エレーナとサラノはここで待っていてくれ」
「えっ? でも……」
「馬車を見張ってなきゃいけないだろ? 」
「むぅ……」
「なるべく直ぐ戻るから。頼んだぞ2人共」
「はい、お任せください。ほら、エレーナ?」
「分かりました……あっ、ちょっと待ってくださいっ」
「ん? どうしング!?」
「……ぷはっ、これで我慢しますっ」
襟元引っ張られて強引に…エレーナがエレーナじゃない!!
「……さいですか」
「ご主人様私も」
「へい……」
サラノにも同じように口づけしてると隣から膨れ上がるような殺気を感じた。
「早くしろ!!!こっちはそれどころじゃねえんだ!!!」
「お、おう、すまん」
おっさんでした。
「お前さん、馬と同じ速さで付いて来るなんて……息一つ乱れてねえ、こりゃあ頼りになる」
俺は馬が無いのでおっさんと並走して走っている。向かう場所はおっさんの村だ。
「頼りになったって間に合わなきゃ意味ないだろ、もっとスピード出せないのか?」
「そうだな…… 速さはもうこれが限界なんだ…俺の娘も捕まってんだ…急ぎたくても…」
ふむ。
「村が襲われてからどれくらい経った?」
「40分くらいだ、オークが去って皆ボロボロだったから唯一動ける俺が街道に出て救援を呼びに行く事になったんだ」
「オークの巣の詳しい場所は分かってんのか?」
「ああ、ちょっと前から周辺の村でも噂になってな、オークの巣が出来たと。村が一つやられたらしいんだ、恐らくそこが住処になっていると思う……」
なるほどね、場所が判明しているならいい。
「その村の位置は分かるか? 今からお前の村に行って救出に向かったって間に合わない、と思う。 村の位置を教えてくれれば俺が今から直接向かう」
「そ、そうか! だが1人で大丈夫なのか? 」
「問題ない」
「村はここから西に2キロの場所だ。本当は俺も行きたいんだが……正直この傷じゃぁ……ハハッ…すまねぇが…どうか助けてやってくれ…!」
まあ、自分の村の人間、しかも娘も捕まってるんだもんなあー……
「…ああ、できる限りの事はやるよ」
オークに捕まってしまったのなら絶対という約束は出来ない。もしそんな約束をしてしまえば失敗、俺にとっては手遅れになっていた時なんて言えば良いのか分からんしな。
だからできる限り、もし手遅れでも俺は責任を取らないという意味も込めて言った。
「ああ…それで構わない、じゃあ俺はこのまま村へ行くから、このちょっと先にある道から西に行けば着く。頼んだぞ!!!」
最後にそう言っておっさんは村に続く方の道へ行った。
俺はそのまま真っ直ぐ走る。
「お、あった、この別れ道を、西ね」
こっからはスピードを上げて行くので僅かに神力を纏う。
今の俺の保有している神力は以前に比べると少ない。回復するが無駄にできない。使う量を考えないといけないので調整しながらだ。初めての事なので慣れるまで中々に大変だった。
「フッ!」
地面を蹴り加速して行く。
「間に合ってくれよ……」
走りながらポツリと呟いたラザスの言葉は誰に聞かれることも無く音と共に森の中へと消えた。