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#21 女剣士と剣と拳

俺はサラノとエレーナと一戦交えた翌日、ギルドの訓練施設に1人来ていた。広さは大体グラウンドくらいかな? もちろん来た理由は昨日の手合わせの件だ。


昼の鐘が鳴ったのを合図に宿を出て道中屋台で買い食いしながらのんびりと来た、それはもうのんびりと、その結果どうなったか、目の前には一時間以上待たせてしまったためか、いや、待たせたのが理由だな。うん。


昨日の女剣士、カレンというらしい。不機嫌オーラ全開でこちらを睨み付けている。


怖い!怖いよカレン!剣を手でパシパシしないで!


はい。


ぶっちゃけ遅刻しました。屋台のおっちゃん達とお話ししてました。 正直忘れてました。なのであんな睨み付けられてるのもただ怖いだけだ。


「カレンさん? 美人なお顔が台無s……ヒィイッ!?」


アイツ剣ぶん投げて来た! 美人こえぇ! 美人こえぇよ!美人ほど怒らせたら怖いって聞いたことあるがその通りだと思った。


「女を1時間も待たせるとはいい度胸じゃないか、その股の間にぶら下がっているのは飾りか?」


飾りじゃ無いです。俺の立派な息子です。あとカレンさん、話し方そっちが素なんですね。それと腕に付けてる時計良いですね。


「本当すいませんでした」


俺は地面に膝を付きアノ体制を取った、最上級の謝罪だ。


「……フン、もういい。時間が惜しい、早速だが始めようか、何せこっちは一時間も待たせられたのだからな」


おぉう、今回は俺が悪い。確かに女性を一時間も待たせるなんて最低だな。今後気をつけよう。


「こっちは剣だが、そっちは、何も持っていないが、武器はどこだ?」


そう、カレンが言ったように俺は武器を持っていない。素手だ。別に神力を纏わせて戦えばいいだけだしな。


「拳だが?」

「なんだと? この剣は模造剣などではなく本物だぞ? 本気で拳で打ち合えるとでも?」

「ああ、思っている」

「ほぅ……余程自信があるようだな、流石はSSランクだ」


そう言ってカレンはこちらを一瞥して距離を取った。大体20mくらいか? ちなみに俺達が戦う場所は何か透明な薄い壁? 膜のようなものがドーム状に囲っている。この中で戦うとどんなに攻撃を受けても死なないし、戦闘不能、つまりこの中で死ぬとドームの外に排出されるらしい。どういう原理なのかは知らない。はい。


「では始めるぞ?」


俺は無言で頷く。


「始めぇ!」


いきなりビックリしただろうがここまで空気と化していたギルドの職員だ。


俺は拳に神力を纏う。カレンは静かに剣を構えて此方の出方を伺っている。


ふむ、こっちから行くか。


「フッ!」


足に力を込めて一気に距離を詰める。いくら力を落としていてもステータスはかなり高い方だ。神力を使わずともこのくらいの加速は出来る。


カレンは迎撃の姿勢を取り迎え討とうとしている。だが、俺は10m程の距離で止まり右の拳を地面に叩きつける。ドゴン! という音と共に地面は殴った場所から正面、すなわちカレン目掛けてだ。崩れるような、最初は小さく、そして進むにつれて大きく盛り上がるように向かって行く。


「なっ!?」


カレンは一瞬驚いた顔をしていたが地面で直ぐに隠れた。俺はそのまま地面を蹴り上から奇襲を掛けようと……!?


「飛斬!」


「おわぁ!?」


っぶねぇ!何だ?! 地面が切れた!


急にゾワッとしたと思ったらカレンの叫ぶ声がして反射的に左へ避けた瞬間ザンッと切れた。俺が攻撃に使った地面も立って居た場所も見事に切れていた。地面には斬撃の跡が残り膜に当たったとこで途切れていた。膜が外への被害を防いだのだろう。


「中々変わった攻撃をするのだな? まさか地面を抉るとは予想外だったよ」


カレンは感心したように呟く。


「そりゃどうも、こっちもまさか斬撃飛ばしてくるとはビックリしたよ、凄い技だな」


「それを初見で避けといてよく言うよ」


「こっからが本番だろ?」


「ああ、もちろんだ」


お互いにニヤリと笑い口を吊り上げる。


「今度はこっちから行くぞ!」


カレンは剣を右手に持ち一気に加速して左下段から振り上げる構えのまま突進してくる。俺は腰を少し落として全身に神力を纏う。


「ハァ!!」


「フッ!」


ガキィインと、金属同士がぶつかったかのような甲高い音が響く。


「剣と打ち合う拳など聞いた事が無いぞ…」


「だろうな」


ラザスは苦笑いで返す。


そしてそこからさらに数十分と拳と剣で打ち合いが続いた。同じ訓練場に居た者、ギルドの職員、全ての人がその闘いに魅入っていた。


***


「ハァ、ハァ、ハァ……っふぅー、流石にキツイな…」


「ハァ…スウゥゥッ、ハアァァァー、強いな…本当に、ここまで手強い相手は初めてだ」


「あぁ、俺もだ……すげぇキツイ」


2人共息を整える間も無く剣を、拳を振るっていたのだ、疲れて当然だろう。


ラザスが疲れた、と。これは、ラザスは戦闘中神力を纏い戦っていたのだが時間が経つにつれて自分の中にある何かが減っていくような、抜けていくような感覚に襲われていた。それが10分程してラザスはそれが神力だと認識した。使えば減る。無限ではないと。今迄は戦闘時間が短かったのかそういった感覚に襲われる事は無かった。


けれどラザスは力を一部封印した事により今回の戦いで善戦(・・)していた。圧倒的勝利ではなく善戦だ。ラザスはその事に喜びを覚えた。今迄感じたことの無い喜び、自分と同じ、同格の相手と戦う喜び。ラザスは戦闘狂というわけではない、ただ楽しんでいた。この戦いを。


「フゥ…そろそろ終わりにしようぜ、俺もさすがに疲れてきた」


「そうだな……本当に剣と打ち合うとは、本当にとんでもない奴だ」


「来いよ」


「あぁ、これで終わりだ! ハア!!!」


「ハァァア!!!」


カレンの剣が振り上げられた初撃を身を少し逸らし躱す。すると予想していたかのように上段の2撃目が来たので拳を振り剣を外に弾くように払う。が、カレンはしっかりと剣を持っていた。だが衝撃により体制を崩していた。直ぐに体制を立て直すも既にラザスは視界には居らず。一瞬でも相手から視線を外してしまった事を後悔しながら気配を探ろうとした刹那、自らの腹に衝撃が走った。


「っ!? カッハァ…ッ」


そのままドームの端にまで吹き飛ばされる。


「ガァ!? ハッ、ハッ、げほっげほっ、ウプッ……ップハ、ハァハァハァ」


あまりの腹への衝撃と吹き飛ばされ壁に叩き付けられた衝撃に吐瀉物が漏れそうになり目には涙が溜まっている。胸から込み上げてきた物のせいだろう。アレは辛い。ギリギリで堪えたようだ。


今ラザスがやった事は簡単な事だ、カレンが体制を崩しラザスから視線が外れた瞬間身を屈め死角へと回りガラ空きだったカレンの鳩尾へと拳を叩きつけたのだ。もちろん手加減はしていない。このドームの中では死なないし遠慮することも無い。


それにカレンは性格的に手加減したとすれば心底腹を立てるだろう。だから本気でやった。今出せる力を使って。だがカレンはさすがと言うべきか、拳が当たる直前に身体強化を施していた。それでも完全にダメージを防げたわけじゃ無い。見ての通りダメージは大きいようだ。


「フゥ、フゥ、フゥ……まだやるか?」


「ゴホッゴホッ……いや、私の、負けだな」


「審判」


「っ!? しょ、勝者ラザス!!!」


審判の声と共に静まり返っていた訓練場に雄叫びが上がる。


「おぉおお!!! スゲェ!!! こんな戦い見たことねえ!!!」


「ああ!! 俺もだぜ!!鳥肌がやべえよ!!!」


「良くやったぞー!!!」


「姉ちゃんの方も強かったぞー!!!」


拍手喝采、双方に労いの言葉などが飛び交う。


「大丈夫か? ほら」


「あぁ、すまない……」


ラザスはカレンへ近づき手を差し伸べた。カレンはそれを若干恥ずかしそうに目線を逸らしている。


「にしてもかなり人が集まってるな……見世物じゃねえぞ、ったく」


「ふふっ、まぁ良いじゃないか、とりあえず出よう、人に注目されるのはあまり好きじゃない」


「だな」


ラザスとカレンは訓練場の出口へと向かって行く。その間も2人への賞賛の言葉は続いていた。







文の構成? 書き方? なんていうのか分かりませんが戻しました。



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