#15 奴隷市開催 後編
俺とエレーナはエントランスから、両開きの金らしき物で出来た人が4人は並んで入れる程の扉を抜け会場へと入った。
中は大学の講義室に似ている。扉から入って正面にステージのようなモノが有り、ステージからちょっと距離を取った所に、中央を空けた上で横10列の席が左右に2つ、それを段差ごとに上にさらに4つ、左側5、右側5の計10箇所、100人分の席が設けてある。
俺とエレーナは番号順で決まった席、左側3段目の端に座り開始を待つ。カードの番号は40だ。
***
「大変お待たせ致しました! これよりコルス商会主催! 奴隷市を開催致します! 司会は私アルマダが務めさせて頂きます!」
ステージの端から黒いスーツのような衣服を着た男が現れ開始を告げる。
「さぁ早速まずは1人目ぇ! 人族の少女16歳! メイドにするのも良し性奴隷にするも良し! では金貨10枚から! スタァトオッ!!!」
一人目の奴隷が出てきた。簡素な服を来たショートヘアの少女だ。これからの事を考えて諦めたのだろう。目が死んでいるかのような虚ろな視線で客席を見つめている。
「15!」
「17」
「22だ!」
「43」
ふむ、大体一人当たり50枚から60枚くらいか?
「53番の方の43枚より上は居ませんか? ……はい! では53番の方が落札です! では次に参ります! 次は……」
オークションはどんどん進んだがどうも気になる者は居らず、ここまでラザスの入札は0だ。
「ふーむ……確かに美人や可愛い奴隷は多いんだが、なーんかピンと来ないんだよなー」
「後5人ですよラザス様」
「あー、もう宿に戻っても良いが、一応最後まで見ていくか」
「はいっ」
それから3人が落札された。ラザスはまだ声を上げなかった。
そして最後の5人目が出てきた時、ラザスの心臓がドクンッと跳ね上がった。
「あれは――狐娘……!」
出てきたのは黒く艶のある髪をサラリと腰まで伸ばした女性。だが最もラザスが惹かれた所がある。それはその女性の頭と尻尾だ。頭にはピョコンと二つの長い三角形で先が尖ったような耳、そしてお尻には丸みを帯びたフリフリと動く尻尾。顔は今迄出てきた奴隷達よりも頭一つ飛び抜けている。鋭い目付きをしているが、その表情は自らが奴隷になっているにも関わらずとても落ち着いていて優しいものだ。
「エレーナ、決めたぞ、あの狐耳の女性買うぞ」
「分かりましたっ、頑張ってくださいねっ」
ラザスの瞳は尻尾に向いていた、あの尻尾をモフモフしたい、と。
「さぁやってまいりました! 最後の奴隷にして今回の目玉! 21歳狐人族のサラノ! こちらは性奴隷にするもよし! メイドにするもよし! 戦闘用にするもよし! もちろん処女でございます! では金貨300枚からです!スタァアトオ!!!」
「320!」
「350だ」
「430出すぞ!」
値段は段々と上がり900枚となった。残りは2人となった。禿げ散らかした青年に肥え太ったおっさんだ。
「910」
「915だ!」
「っ……」
青年の声が止まる。勝った、と勝ち誇った顔をしているおっさん、司会が声を出を出し閉会の言葉を――
「1000枚だ」
出さなかった。
会場に居る者全ての人間が声の主を見る。そこには腕を組み笑みを浮かべるラザスの姿があった。
「なっ!? 貴様……! 儂の奴隷だぞ!」
「まだお前のじゃねえよ、おい司会、早く皆に聞いてくれ、金貨1000より上は居ないのか」
「っ!? き、金貨1000枚より上は居ませんか!?」
「「「………」」」
会場が静まる中肥えたおっさんが何かを言おうとするが予算オーバーなのか押し黙る。その顔は苦虫噛み潰したような、怒りなどが混じったなんとも言えぬ顔をしてラザスを睨み付けていた。
「決まりだな」
会場を見渡しニヤリと笑い司会をチラリと見る。
「で、では40番の方の金貨1000枚により落札でございます! 落札者の方々はこれより各部屋を用意していますので係りの者に従いそちらに移動してください! では! これにて奴隷市! 閉会です! 又のお越しをお待ちしております!」
司会がそう言って締める。
とりあえず奴隷は買えた。これで2人目のメンバーだ。
他に続きラザスとエレーナも係りの者に付いて行き小部屋へと移動する。
「では此方でお待ち下さいませ」
案内されたのは小さな小部屋、小さな二人用ソファーが二つに、それに挟まれるように置かれた縦長の小さな机。
待つこと数分。扉が開き、そこから先程のステージで着ていた物より華やかな白のドレスを着た狐娘のサラノと赤い首輪のような物を持った手に持った係員らしき男と用心棒だろう男が2人。
「ではこれより契約の儀を行います。奴隷の血を先に一滴と、主人となる方の血を一滴この首輪に垂らして下さい。」
まずサラノが針で指を軽く突いて血を垂らす。すると首輪が薄く光る。そしてラザスも同じように血を垂らす。すると今度は青白く光ると首輪が浮き上がりサラノの首へと向かい巻き付いた。
「これは……」
「ご説明致しますと、この首輪はまず奴隷となる者が血を先に垂らす必要があります。垂らしていただいた血の中から魔力を認識し、2人の内先の者を従者に、後の者を主人と設定します。2人以降は受け付けませんので、3人目が血を垂らしても何の反応もしません。
ですので一度契約をすれば奴隷が第三者に渡ることはありません。今ので契約の義は完了にございます。補足ですがこの首輪が付いている限り主人への攻撃は一切禁じられ絶対服従となります。」
「なるほどね、まぁ、とりあえず金貨1000枚を白金貨100枚で、はいっと」
ジャラジャラと音を立て巾着を机に置くと、それを受け取った係員が中を出し数を数える。
「……はい、ちゃんとあります。ではこれにて終わりとします。扉の外出口まで
の案内を付けております。本日はありがとうございました。では」
そう言って部屋を出るサラノ以外の者達。
「さて、行こうか、俺の名前はラザスだ、よろしくな」
「はい、私のような者を買って頂きありがとうございます。 精一杯ご奉仕させて頂きます」
深く頭を下げるサラノ、それを見てラザスとエレーナはお互いに苦笑いのまま顔を合わせる。
「あー、初めに言っておくが俺達はお前を奴隷として扱うつもりはない。だから別にそんな事しなくてもいい」
「そうですよっ! 今日からよろしくお願いしますね! サラノっ!」
ラザスは安心させるように軽く笑みを浮かべて言う。エレーナもラザスに続くようにニコッと笑い掛ける。
「え? あ、あの……よ、よろしくお願い致します……」
一瞬呆けた顔をして何かを言おうとしたサラノだがラザスとエレーナの笑顔を見て軽く頬を染めて返す。
「よしっ、ハーレム2人目だ!」
「はいっ!」
「え?」
この後3人で服を買い漁り宿へと戻ったが、道中ラザスには殺気と嫉妬と羨望の眼差しが向けられたがラザスがそれに気づく事はなかった。