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「まあ、今までの話の流れとしてファーレンの国王を生まれた事を後悔するまで蹴飛ばすというのは決定事項としてだな」

「ルル、一度興味本意で人を踏みつけてみたいと思ってるッス。自分の世界じゃ、知り合いの目があるので自重してるッスが」

「二人とも、国王の警備って凄いんだよ?」



「「それはどうにかできる」はずッス」



 ついでにどうにかしてくれるのはあにさんで私とあに様は、美味しいとこを持ってく感じです。と、ルルは薄い胸を張る。……ここまででなんだが、アレンを見直した。

 何か言いたそうにしているが、ダーストの『余計な事を言わずに護衛しなさい』という命令を実直に護ってる。主に対する失礼を許せなかっただけなんだね。ダーストも良いやつかもしんない。と三人は思った。思っただけだが。

 それは置いておくとして。他力本願を貫くスタイルをにこやかに主張していても、リジェは文句を言わない。苦笑とか、呆れは含んでいても嫌われないのは大変助かる。

 リジェは、便利な人すぎる。ルルは、特に仕方ない出会いをしたせいで保護対象なのだろう。自分の力じゃないところで、保護しなければいけない対象とされていて、いつまでもそこから抜け出せないのが問題だ。レイだって、この世界では今のところ保護対象から抜けられないから、多少イライラしているようだ。

 だから、その鬱憤をファーレンの王に向けるという目標を立てといて損はない。


「だいたい、なんの目的で異世界人を召喚してるんでしょう。十数年前にこの国も痛い目にあったらしいですよ。」

「マから始まる性癖なんじゃないか?」

 レイがあんまりな内容を言い放った。

「それで済むなら、話は簡単ですか?」


 あ、アレンが若干小刻みに体揺らしてる。怒ってる?それとも笑いを堪えてる?


「痛い目ってなんすか?」


 ちょっと、ルルでも空気読めるよ。


「飢饉が有った年に異界人を召喚し、彼が提案した農作物を植えて育てる事にしたらしいです」

「?農業関係者の方だったんすか」


 私だったら、飢饉だからと召喚されても妙案出せないぞ。とルルは主張する。


「それ以上にこの世界に俺達の世界と同じ作物がどの程度あるかを調べて言ったのか?」


 やな予感しかしない。アレンに意見を求めるべきか?


「幼い顔をした男らしいです。黒い上下の服を着た」


 学ランかも…?


「補足として、この世界、15から成人なのだが」


 アレンがしゃべらんカカシを返上して口を出す。オチが見えた気がした。レイとルルは恐怖した。


「馬鹿な…っ、出来れば我々の世界の住人でない事をひたすら願うしかない。そんな弱い俺を笑うか。ルル…、」

「あに様、ルルは昨今の教育に置いての一般教養について、常々恐ろしい事を口走る奴が同じ学年に一人や二人、居ても可笑しくないと身を持って知ってるッス。……笑いません。ーールルも弱い人間ッス」


 ついでにルルが聞いた驚愕発言は、『刺身ってどうやって海で泳いでるんだろうね!』だ。お前はいままで何を見た育ってきたんだ!?と心からツッコみたかったと熱く語る。……話が脱線した。リジェがなんだか生暖かい視線を向けてきたような。何?


「彼が提案したのは蕎麦です。僕は、まともな提案だと思います。生長が早い作物です。上手くすれば年に二回収穫できますし、同じ畑で他の作物を栽培する合間に作れます」

「詳しいな」

「ボランティアに行った先で戦時中、そこらの山に蒔いて育ててたって、話してくれるおじいさんやおばあさんが居ましたからね。生命力も強いんでしょ」


 さすがお年寄りに好かれ過ぎて、孫や曾孫と結婚してくれとさんざん泣きつかれた男の知識の情報源は一味違う。


「なんすか。てっきり、厨二病を発生していた思春期が、ゲームや漫画の知識を披露して芋なんか、ただ植えてりゃいいとか言い出したのかとゾッとしたのに」

「俺は、てっきり自信満々に主食に向かないゴーヤやナスなんかを奨めたのかと思った。意外とまともでつまらん男だったな。異世界人」

「僕は、見知らぬ相手をそこまでこけ下ろすレイちゃんたちにゾッとしました」


 それに芋なんかはもうあるらしい。なので、出来れば新しい食物をとの事だったらしく、幸いだったのか知識のある方だった男は有るだけの知識を提供したらしい。


「蕎麦なんて発祥してたのか?」

「有ったみたいです。ただ、食べ方がわからなかったので花が生えたら摘むくらいだったみたいです。もしくは雑草とかの扱いじゃないですか?」


 確かにそば粉ってどう作るんだろ。蕎麦も打てないし。蕎麦って誰が食べ物にしたんだろとルルは首を傾げた。アレンに視線を向けたが、補足はなかった。知らないようだ。そして、そこまで説明する気のないリジェは話を進めた。


「そんな彼は、一年以上ファーレンの為に尽力し、突然、姿を消したそうです」「帰ったんすか?」

「命の危険を感じていたので逃げたんじゃないかと云うのが見解されています」

「食料の備蓄には成功したんだろ?」

「ええ、民の食糧難は飛躍的に解消しました。問題は、王族・貴族辺りの立場のある奴らです」


 呆れてるらしいのが伝わるリジェの声音に私は、首をかしげる。

 なんだろ。そんなに残念な事聞いたのだろうか。残念な人間代表のルルは、ジッとリジェを見た。

 話すのに疲れる内容なのか。リジェは、息を深く吐いてから苦笑した。


「アレルギーが出たんですよ。国の中枢を担う奴ら中心に」


 …………わお。


「最悪だな」


 言葉どおり苦虫を噛んだようなレイ。


「さらに最悪なのは、隣国や貿易で繋がる国々にはアレルギー患者が出なかったという事です。ーーで、どんな結論に至るか、考えたいですか。」


 やだ。異世界怖い!としかルルは、言えない。


「毒を盛ったと疑われても仕方ない。のか…?医療技術がどこまで発展してるのか。…否、十数年前か。今と比べるべきではないのか…」


 レイが物凄く考えこんでいる。でも、待ってほしい。十数年前の出来事を私たちは救えない。救えはしない。そんな選択肢はない。今、それは情報として必要だが、責められ、逃げなければ行けなかった異世界に迷惑をかけられた先輩の事は置いておこう。ルルは、うん、と頷く。


「ルル、ちょっとピーンときたッス。ファーレンの現国王は恥をかかされたとも思っていらっしゃるんですね」

「……どんな結論だ。」

「いえ、正解です」


 あ、否定を口にしたレイが凄く意外そうな顔をなさってる。


「アレルギーになったのが恥だと?阿呆なのか?」

「いえ。その後です。ね、アレンさん」


 私は、貝になります。とばかりに居たアレンに話を振るリジェ。話を振られたほうは、自国の恥を披露しなければならないことに苦虫を噛んでる顔だ。


「……アレルギーについて知られるにつれ、飢餓を救った恩人を追い出した恩知らずな国だと避難を受けるようになったのだ」

「処罰しなくて良かったな」

「追い出したんじゃなくて逃げられたッス。訂正してほしいッス」

「レイちゃん。慰めになってないです。ルル、トドメ刺すならファーレン王だから」


 アレンをイジるなと、リジェに言われたので仕方なく今回は引っ込むルル。ただこの件に関してだけだがな。と黒い笑みは忘れない。


「前国王、つまり現国王のお父上にあたる方だ。今は隠居なさったのだが、……その件で精神を煩い隠居せざる得ず、今では離宮奥で療養なさっておられる。賢王だったのだ。本当に」


 アレンの言葉に凄くツッコミたかった。しかし、ルルは、黙った。だって、あにさんにさっきアレンを弄るなって言われたし。しかし、……。


「でも、子育てには失敗したんですね」

「賢王って普通は、自力で飢餓をなんとかするものだろ。安易に異世界からひとを呼び出して迷惑かける時点で人として浅すぎないか?」


 あ、言っちゃった。二人とも容赦なくツッコンだ。あ、アレン。ワナワナしてる。


「陛下は一点を除いてはご聡明な方だ!」

「その一点がとんでもなく屑の部類じゃないですか」

 リジェ、バッサリ。一瞬詰まったアレン、持ち直して反論。

「ーー前国王は、民の為に早急な対策を、と」

「異世界人への処罰も早急に?飢餓を救われた時点で自分が苦しくても、帰還させてやるなりなんなりの恩情は有っただろ。さっさと逃げられた時点で信頼するに足りない人物だと判断されたのだろうな」


 ぐうの音も出ないだろうね。アレン。


「まあ、蕎麦でアレルギーを出したこの国のお偉いさんには同情する。……俺達の世界ですら、無理解な奴がいるくらいだからな。ポピュラーなのは、蜂か」

「そうッスね。一発アウトな部類なのに未だに『蕎麦でアレルギー?ぷぷっ』くらいっすもんね…」


 ルルは、思わず遠い目をした。ママンが蕎麦アレルギーでさんざん父さんの実家が苦労したのを思い出す。あの家、和食中心で蕎麦も大好きで、ママンが来ると大変そうに料理を吟味しながら作ってくれたのに『食べてきました』『私たちの分は持参しましたので』……あ、アレルギー側が強気な話だこれは。一般的に参考にならない。

 ついでに持参した分にルルの分はなく、父さんの実家で作られた料理の大半を胃に納めるのは、ルルの役目だった。物凄く美味かった。


「ジジとババに会いたい」

「いきなり、どうした」


 美味しい料理に舌鼓したいなと思っただけだ。


「蕎麦の流通はどうなったんですか」

「……グレンダ国の名産になった」


 苦々しげに燐国に持ってかれた。と語るアレン。確かに異世界人を追い詰めるような行為をし、知識だけ自分の手柄のように収めるのは外聞が悪すぎる。

 自分達の国で名産品に出来る訳じゃないが、処分してしまうには惜しすぎたのだろう。なんらかの裏取引でもあって、燐国にノウハウを流したのだろう。

 ふむ。逆上して知識を葬るとかしない時点で少し見直したよ。前国王。

 そこで、なんとなく沈黙。つまりは、これ以上話し合ってもループしそうで大変だ。そして飽きた。なので、討論の議題を変えるか質問タイムでよいはずだ。


「そういえば、ダーストさんが言ってた『魔力酔い』と『亜種』について訊きたいッス」

「魔法については?」

「もちろん、聞きたいッス!」


 あに様ったら、ナイス合いの手。ルルは、キラキラとした目をレイに向けた。リジェは、少し複雑な顔をしたが…、おや?なんだ。としか考えていなかった。



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