優先順位は変わってない。
明朝、約束通り、ルル達のお世話になっている宿に占いにきたジェイドにいいカモと占いと称したやり取りを終え、去って行った後ろ姿を見送りながら、そのまま能力をキープしルルは説明を始める。
「能力は発動した時点では、一定量の魔力しか消費されてない気がするッス」
「そうみたいですね」
リジェが何か見ながら納得した。それにレイはそうかとだけ返し、アレンとシロは揃って首を傾げた。
「それで、能力を開くと、望んだ情報量の分だけ、魔力をごそっと取られるッス。ついでにアレンさんの時は、アレンさんの情報って漠然とした発動条件だったので、たぶん、ルルの魔力の限界に挑まされました」
黄色の本を開きながら、ルルはところでと、続ける。
「これは、まだ検証中の話ッスが、ジェイドさんの世界表示を拒否されているッス。これはルルが知りたくないことかジェイドさんの問題かわかりませんが、ルルが知りたくないとしたら、あにさんの帰る世界ッス。あにさんは帰るなら、ルル達と同じ世界ッスか?」
「もちろんです」
「じゃあ、これからもあにさんの世界に関する表示はしなくていいことにするッス」
淡々としたやりとりにアレンが思わず何かを言いかけて、レイに制され止まる。
「すまない。これは、オレ達の問題なんだ」
そう言われると何も言えなくなるアレン。シロは、おろおろと周りを見回す。へたりととんがり耳が閉じている。
「では、話は戻るッス。えーと、残念な話としてルルの能力の赤・黄・緑または青。信号機と判明しました。疲れる度合いが違うので」
ぽりぽりと頭を掻きながら、自分の発想力を残念がるルル。
「それで、んーと、あにさんとあに様は攻略本を見たことがあるッスよね?」
「ああ」
「ええ」
やはりわかってないようなアレンとシロにルルは頷き、
「アレンさんとシロさんに説明すると、攻略本っていうのは、この場所では、このアイテムが手に入るとかこうするとこの人は仲間になるとかわかる本ッス。それから、その人物が主要であればあるほど詳しくプロフィールが書かれます」
「……お前たちの世界にはなんて恐ろしい物があるんだ」
アレンとシロが顔色を青くする。……何かおかしいことを言っただろうか。と首を傾げるルル。まあ、気にしても仕方ないと続ける。
「厳密にいえば、似てるだけのものの予定でしたが。どうもおかしな不具合が出来てしまったようッス。ルルの常識の通じない異世界なせいでしょうか。亜種さんが頑張りすぎたのかわかんねえっすが、行動規制が出来るみたいッス」
「「「はあ」」」
3人の困惑した声にルルは苦笑してしまう。
「あにさんは知ってたようッスね」
「ルールブックという名が悪かったんでしょうかね」
遠い目をするリジェ。
確かに名前だけ認識すると、そうなってしまうのは仕方ない。が、ここまではいらなかったのも本音だ。
「どういう意味だ」
レイが若干面白くなさそうに理由を聞いてくる。別に秘密にしていた訳ではなく、ルルも昨日気づいたことだ。リジェが黙っていたことの方を責めてほしいというのが本音だ。
全部を理解した上ではないと言い捨てながら、
「能力に表示された相手を一定時間、ルルの中の常識と法律に絡められるようなんッス。スルー可能で指定しなければならないようッスが、ジェイドさんはお世話になった人にはお礼を………という常識を指定しました。短い間にその考えに浸食されてたみたいッスね。これから、クールな冒険者を返上してハーレムになると攻略本も教えてくれたッス。どうしましょう?ざまあッスか」
邪悪な笑みを浮かべるルルに意味がわからんとレイはリジェに視線を向ける。リジェはそれにすみませんと一言添える。
「そうですね。普通に能力を使うなら、攻略本のままで良かったんですが」
「……問題があるなら訊いてもいいだろ」
「ルルがこんなに早く気付くと思わなかった。レイちゃんを無視した訳じゃないです。それは信じてくれますよね」
レイが不機嫌そうに頷いて、ルルとリジェはようやく安堵した。秘密は互いに抱えていても問題ないが、三人とも秘密にしていることを悪びれもせずに黙っているという前提がある。気に病むくらいなら喋れ。それから、どうしても言いたくないと拒絶を感じ取れば引く。お互いのルールは一応あると信じている。
それにこの件はルルは昨日知ったばかりと主張したい。
「ルルの常識がレイちゃんとかならず同じとは言えませんよね。それが怖くて」
リジェの言い分にレイとルルは、から笑った。確かにその通りだ。ルルとレイは同じ世界の人間だが、見てきたものが違うとわかる出来事は上手くない。が、
「ルル、別に今のところ、あに様達以上はいないッス」
「オレも、今、固執する話はないな。優先順位はお前たちだ」
「あとから、その観念での問題が出来たらどうします?」
頷きあうレイとルルにリジェが半笑いで問えば、二人とも同じように頷きあい。
「「それはどうにもしなくて良いんじゃないか」ッス」
確かにとも何とも言えず、ハモる二人にリジェは笑った。




