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考えの補強中



 酒場の方のテーブルに座らされ、ツマミとミルクで場を濁す。

 焼き豚風の肉もしっかり分けてもらった。

 アレンに酒を飲んでも良いと言われたが、元の世界に帰った時に飲酒の癖が付いていたら困るので断るルル。あとは、自分が酒を飲んだ場合の弊害が分からないのも理由だ。


「占いをやるときって、ギルドカード欲しいッスか」

「いや、いらないと思うが…。一応、どこの所属かはっきりさせとくのは得だが…、お前、もし召し抱えられるならファーレンを狙っているんだろ?」



 歯切れの悪いアレンの思案の先が自分と同じだったことにルルは、驚嘆した。一応復讐を視野に入れてはいるが、もののついでのようなことなので、リジェにもレイにも言ってなかったがわかりやすかったんだろうか。



「では、どこの国の所属かをはっきりさせるのは好ましくないだろう。いや、そもそも、ファーレンが異世界人の占い師を召し抱えるか」

「無視が出来ないくらいにグレンダを発展させるとかもいいッス。まあ、それは別におまけくらいなので。ルル的にあに様やあにさんがお仕事中にルルでも出来そうなお仕事が欲しかったんです」

「では、場所の確保が必須になるぞ」



 ジェイドが串カツを何本か持って現れ、ルルに手渡す。



「おお、ありがとうッス」

「いや、話を聞いてから選べという指示に従って良かった。本当に女が発注していた依頼の方が俺の目的に合うものだったからな」



 ルルの隣の椅子に座るジェイド。

 かつての仲間である女性とトラブルになったらしく、それ以来、女が絡む依頼を意図的に忌避していたらしいジェイドにルルは、だったら、話を聞いてから依頼を受けろと進言してみた。そのせいで、かなりの時間を待たされたが、能力把握の為、色々な人間に能力(ルールブック)を試せたので結果的に良かったのかもしれない。



「幸運の女神という占いに従っただけッス」

「?なんだそれは」



 怪訝な表情をしたアレンとジェイドにはむはむと、串カツを驚異的なスピードで消費し、むむっと眉間に皺を寄せてごっくんと飲みほした後に



「精霊さんに一言どうぞって念じたら、書いてあったッス。どうも、なかなか面白い性格の方のようッス」

「ああ、リジェに出てくるなと言われたアレか」



『亜種』に対してあまりいい感情がないらしいアレンは、少し顔を顰めたが、ルルはお世話になってる身ですからと苦笑する。



「ジェイドさん、お仕事は明日からですか?」

「そうだ、出立前にもう一度占ってくれないだろうか。ゲン担ぎにちょうど良い」



 酒が入ったせいか饒舌になっているジェイドにアレンは、酔っ払いに何かされると困ると少しルルの身を自分の方に引き寄せた。その瞬間、少し、表情を変えるルルを確かに見てしまい、驚く。



「どこか痛めているのか?」

「ちょっとッス」

「そういえば、けられていたな。」



 余計なことをとルルは、ジェイドを睨み付けたが、まだまだ修行が足りなかった自分を嘆きつつ、アレンの口止めを開始する。



「回復魔法は嫌ッス」

「怪我の程度次第だ。」

「右腹の辺りッス。でも、脱がねえっすよ」

「……クレイマン殿、ここに女性職員は?」

「おい。アーシア」



 事の成り行きを見ていたクレイマンに呼ばれたおっとりした雰囲気の女性に連れられ、個室に行くルル。

 ちょっと、恨みがましい目で、アレンを見てしまったが、アレンは頭を振る。言いたいことはわかる。

 リジェとレイに何を言われるかと、言うことか。シロの為にもここで治しておいて、証拠隠滅の方がいいのかもしれないが、慣れていない行為はつい嫌煙してしまう。



 個室に入り二人きりになるとさっそくアーシアに服を捲られ、まあ、と驚きの声を上げられた。ルルの右わき腹は、真っ赤に腫れ上がっていたのだから仕方ないのかもしれないが。一部は青あざになり黒ずんでいる。



「折れているかもしれませんよ」

「経験則から折れてはいないッス。冷やしたいので濡れタオルをください」



 そういう訳にはいかないと、ギルドの契約医を呼びに行くアーシア。ルル的に幸いにも来た医者に回復魔法はいらないと判断されたことに安堵する。



「しかし、しばらく痣が消えんぞ」

「いえいえ、どうもッス」

 

 後は、あにさん(リジェ)との戦いだけだ。



 レイの方は治療を受けたことで怒りを緩和できるだろうが、リジェは治療しようとしてくるだろう。ルルには有り難迷惑だ。……慣れたらどうするんだろう。

 シロも慌てるかもしれないが、フォローをいれて置かねばならない。






 席に戻ると、いつの間にかジェイドは居なくなっていた。

 アレンが一瞬何か注意しようと口を開きかけたが短い葛藤の中、言うのを止め、伝言を伝えることにした。



「ジェイドは、明朝うちの宿に来るらしいが、起きれそうか?」

「はい。基本的に寝汚いほうではありませんッス」



 正直、微妙な表情をするアレン。

 彼の前では、ぶっ倒れる姿を見せているので仕方ないのか。



「ところで、実際、お前の能力は予知なのか?」



 あの得体のしれない本の能力に形が出来るだけでも有りがたいと正直アレンは思っている。確かに予知ならば、脅威的だが、それでも得体がしれないよりものよりわかりやすくていい。

 しかし、ルルは困ったように唸る。



「そこなんスよ。攻略本だから、ある意味問題はないんすけど。枠を広げれば広げるだけ問題が……いくらでもルートが変わってしまうんす」

「どういう意味だ、」



 リジェも調べていた時によく乾いた笑みを浮かべていたが、アレンはそういう時はあまり近づかないようにしていたので、ルルが説明出来るならしてほしいところだ。あむあむと焼き肉を消費しつつ、



「うーん、今日は多分能力を使わない方がいいと思うッス。少し具合が悪いので『魔力の枯渇』にそろそろなるんじゃないっすかね。説明は見せながらするッス」


 そう言われると無理強いは出来ないと、アレンが引くと、クレイマンがこちらに近づいてくる。野菜も食うかともってきたので喜んで食べる。肉の礼らしい。


「おい、嬢ちゃん。占い師をやるつもりか?」

「そうっす。出来れば、所属とか無しでしたいッス」

「ふーん。じゃあ、場所だな」


 ジェイドと同じことを言う。


「ギルドに所属したら提供が有ったッスか?」

「いや、管轄外だからな。まあ、問題が起きた時に助けにはなるかもしれんが」


 思案するクレイマン。

 そこ酔っぱらったおっさんたちが割って入ってくる。


「しばらく、ギルドの中に置いてやればいいじゃねえか」

「おいおい。」


 無責任なこと言うなよとぼやくクレイマンに酔っ払いは続ける。


「ジェイドも言ってたけどよ。軽いゲン担ぎになるんじゃねえか。腕が確かって認められて、金がたまれば、シャバ代も自分で払えるようになるって。面倒見の良いクレイマン様が守ってりゃあ、悪さする輩もそうそう出ないって」


 ルルは、なるほどと頷く。確かに初期投資費がなかった。それにここなら、自分が倒れても面倒がなくていい。


「貴重なご意見ありがとうッス」

「確定してはいないぞ」

「冷たいぞ。クレイマン」


 他の酔っ払いにまで冷たいと非難され、クレイマンはやれやれと、ルルに視線を落とし、兄達の許可を貰ったならなと頭をクシャクシャと撫でる。そういえば、この人は幼なじみの話では自分が『魔力酔い』になる程の魔力の持ち主だと知っている筈なのに普通に接しているなと、ルルは器の大きさにおおっ眩しいと、思った。


 レイが美里達とともに帰ってくると、何故か一緒にリジェも居た。


「今日の稼ぎの分け分だ」

「ありがとう」


 ルルは、アレンが美里の隣にいる黒目黒髪の少し軽そうで軽装な装備をしている男に視線も向けないことに首を捻る。


「『お前の立場は本当は俺のものだった』らしい」

「……」


 ルルをもってしてもなんも言えなかった。

 ルルの疑問に的確に答えるレイは、クレイマンに採取した品を渡し、ランクアップに対する説明を受け始めた。それから、犬がどうとかも聞こえた気がしたがあまり気にしていられなかった。

 リジェの視線は痛いが、思いだしたことを聞いてみる。


「服買わなかったッス」

「あ、忘れてましたね」


 もう暗いので、古着屋は開いてないだろうと落ち込むリジェに美里がワンピースなら合うんじゃないと、どこから、ともなく服を数点取り出す。


「アイテムボックス?」

「あら、貴女の世界にもあるの?」

「RPG常識ッス」


 キラキラとした好奇心でどんなものかという説明を受けるルル。


「アイテムが255個入るんだけど。うっかりすると腐っちゃたりするの」

「ほうほう、不便っすね」

「腐らない加工も出来るんだけど。そうすると、物がはいらなくなっちゃたり」

「はー、良いっすね。便利過ぎないその面倒くささ」


 うんうん頷くルルにさらに不便を語る美里に罪悪感たっぷりに無尽蔵を誇り、腐らない加工もしっかりしている蔵?ーー空間持ちのリジェは、これも喋ってはいけないことかと、そおっと身を引くがその姿を見ていたレイにすっかり察されていたりもする。


 美里達とも別れ、酔いつぶれたシロをレイが背負い、転移魔法で宿の前に戻ると、アレンは顔色を悪くした。酔ったらしい。


「駄目になりそうな便利さだ」


 レイの呟きに苦笑し、リジェはルルに向き直る。


「ルル、疲れてますね」


 疲れてますか。ではなく、確定系のリジェに今度はルルが苦笑しながら、確かにと頷く。


「ちょっと、検証しすぎた見たいッス」

「そうか。じゃあ、結果を夕餉の後に訊くか」

「了解ッス」


 ビシッと、敬礼の真似ごとをするルルに幼なじみは優しい顔をしたが、アレンだけは化け物を見る眼で。


「お前、ギルドであれだけ食べて」

「確かに食べ過ぎたので、今日は、五人前ッス」


 胸を張ったら、ああそう。と返された。



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