混乱はしている。
話は約一ヶ月前に戻る。この小柄な少女、神崎るるは、見知らぬ村に居たりする。
村……テレビでしか見たことがないが、山奥にある村って確か、田んぼとか畑とか、いや今は文明の進歩の象徴である車様が運転できる歳の人の人数分、かく家にあるのが田舎というものらしい。広大な私有地がある場所では、普通に未成年が『ちょっと○○くんとこに行ってくるね!』と田んぼから運転していくとかなんとか、都市伝説が…。
無駄なことばかり考えていたルルは、そこでハタッとあることに気づく。
「田舎じゃ都市伝説じゃないッス!!」
「何の話だ」
突然叫んだら、隣で自分とお留守番中のまだ18歳なのに妙な貫禄のある幼馴染みのお兄さん日向澪こと『あに様』もしくは『レイちゃん』が、不機嫌そうと称されるお顔だが親しい人が見れば、心配しすぎな表情でルルの顔を覗きこむ。高身長のせいで30センチ以上差のルルとは目線を合わせるのも一苦労のはずだ。わざわざどーも!と心でお礼する。
「……ニヤニヤするな」
レイはルルのニマニマした態度から別段問題がないと判断したらしく、周りの様子や細かい雰囲気に気を配ることにしたらしい。
……細かい話も説明しようない精神状態で右も左もわからないと自分たちに状況の説明のために話を聞きに行ったルル達のもう一人の幼馴染みに『何か有ると感じたら、僕の安否を無視してルルと一緒に逃げて』と、お願いされていた。実を云えばどちらもがお願いされた内容は、同じだ。つまりは、どちらかが冷静に状況判断できるよね?的なやつだ。
意外とどちらも信用してない内容にルルは納得しているし、自分への信頼度の足りないレイは、リジェの心配りと称していいのか判断の困る気遣いにただ黙って頷いていた。
レイがなんの皮肉も言わずに頷くー…。つまりは、異常事態だと云うことだとルルは納得した。
緑豊かな風景に緑ってカーテンやシーツにしか使わないよね?服とかないない似合わないし。的な容姿なルルは、癒しとかいらないから家庭用ゲームかパソコンのある場所に戻りたい。
せっかく上げた美少女の好感度や読みかけの小説サイトやご挨拶程度のコミュをしていたブクマ先の方々を思い浮かべる。コスプレイヤーの方々以外は顔も知らないけど、ああいう人たちって、いきなり古参常連のコメがなくなったら気にするだろうか。
……一瞬程度かな?
ルルは、悲しいことに気づいた。
「あに様、悲しいことに気づいたッス」
「くだらない内容じゃなければ聞いてやる」
レイは、容赦がなかった。
しかし、なんとなく黙ってるのも癪なので果敢に攻めてみるルル。
「雑談という単語はご存じでしょうか?」
しかし、内容はなかった。嫌だって黙ってんのも気詰まりだから。そして、そんなくだらなくなければ、と言いながらきちんと返事するレイはなかなか律儀だ。
「他人の弱味をそれとなく探る腹の探りあいの意だな」
……雑談ってそんな意味だったっけ?
「あに様、ルルの弱味を握って楽しいッスか?」
とりあえず、気になるので訊ねてみたルルにレイは、少し考えた様子だったがひとつ頷いた後。
「今は、楽しくないな」
『今は、』って何!?ってツッコムべきか。しかし、レイは深く考えての言葉ではなかったらしく、
「リジェが戻れば、ある程度状況もわかるだろ」
だから、安心しろとルルの頭をなでなでする。なんか、別にそこにあんまり不安を感じていないことに申し訳なさを感じつつも、まあ、それもこれも自分ひとりで見知らぬ場所にいる訳じゃないからかと、それだけは我が身の幸運に安堵する。
誰が巻き込まれたか知らないが、カヤの外じゃなくて本気で良かったとルルはそう思っていた。