異世界らしいことを再確認。
「……精霊さんが土台になっているスキルッスよね?」
思わず聞いてしまうくらいに不安なんですがと暗に示してみたが、リジェは何でもないように笑顔だ。
「はい。『彼』が中継役になり、ルルの魔力を用いて能力を形付けてくれます」
なるほど、ルルの精霊は『彼』なのか。……女の子が良かった。かわいい美少女を眺めたいのに。などとのんきに考えてみる。
「使ってみての不具合を確認したほうがいいな」
「……疲れてませんか?明日でも」
「ノーッス」
リジェを遮り、能力の事をイメージする。使い方…使い方。とウンウン唸ると、誰かの声が聞こえた。
ーースキルの名を叫べ。と、ふむ。
「『攻略本』」
もっと格好いい名前が良かったかなー的な。後悔が一瞬過ったが、別に構うもんか。
ぼふん、と間抜けな音と共に簡易テーブルの上に翠の石が埋め込まれたB4サイズの赤い本が出た。
「……これ?」
なんの気もなく、リジェが手にとって、ルルに手渡してくれた。……普通、スキル保持者以外持てないとかじゃないの?とルルは疑問符。とりあえず、確かめてみることにする。
「あに様、持てるッスか?」
確認のため、レイにも触って貰った。……触れた。残念能力!
「開いてみろ」
そう言われたら、どのページだ?
幼馴染は、プライバシーを侵害するつもりはないし、…そうなると必然的にアレンか。
「な、なんだ」
ジーッと彼を見つめたら、不審者丸出しで動揺し始めた。挙動不審。
とりあえず、ど真ん中のページを開いてみる。……あれ?
「『祖は、王家に代々仕える』……七代前はとか、いらん情報なんすけど?」
膨大すぎる量の情報にアレン個人の情報へたどり着くまでどれくらいかかるんだ。
「これは限定的な情報って絞らなかったせいですね。ルルが慣れれば問題なく、必要な情報だけをピックアップできますから、問題はありません」
リジェが何でもないことみたいに言いやがった。いやいや、ルル、このガッカリ感から回復出来なかった。
活字中毒までいかないから文字がたくさん並んでるのに辟易しているし、そもそも、手軽にーー簡単に他人のプライベートを明かしてくれるから、この能力にしたんだよ。
……説明しがたい不快感が、ルルを悩ます。ぐるぐると今更この能力で良かったのか悩み始める。
異世界だから、と出来る諦めの範囲での罪悪感はまったく起きない。まったくー…、そう、『自分の世界の常識の通じないモノを呼び寄せた誰か』が悪いだけで、じゃあ、『呼び寄せやがったバカを害する気はある』のが三人共通の思考だがーーそれの巻き込み具合が、ルルと二人では違う。二人だって互いに違う。
ルルは、協力した奴全部不幸になればいいと願うタイプだし、リジェは、関係なくても必要なら巻き込むだろう。
そうと考えたら、やはり、レイが一番自分たちの世界の『法律』や『常識』に準じている。
これって弱味にならないのか。どこまで、……色々、考えていたら具合が悪くなってきた。なんだろ。貧血やお腹が空きすぎた時に起きるアレだ。くらくらしてきた。
「……魔力の消費が激しいですね。ルル、スキルを解除してください」
なぜ、そんなことがわかったんだろう。しかし、なんの利益も得ずにスキル解除とは、……納得できんとルルは思った。ーーうん。
ざーっと、文字の羅列に目を通す。辞書や小説で、面白い表現や単語は目につくものだ。
……………あった。
「おおい…?」
ーー“王位継承権第16位・アレン・クォーカ=ファーレン”。
ルルは読み方間違ったのも訂正できずにぶっ倒れた。
そして、次に目を覚ましたらピニョーンと獣耳をはやした美少女に膝枕されていたことにルルは一瞬思考が飛びかけた。
「あ、ご主人様の妹様。おはようございます」
うん、とりあえず、異世界志向にハマった方、こっちへ来い。説教だ。とルルは握り拳を握った。




