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弁明をどうぞ。


「『魔力酔い』を起こすのは、例外を除き、魔力の高い者だ。それが昏倒し治療の手立てもないまま放置され、ある日いきなり、その者を中心に巨大な力が暴発する。それを過去の者たちは『魔神』と称したのだ」



 アレンの感情を込めない淡々とした物言いになんとなく、突っ込まれたくない内容を感じとると他の二人に視線を向けるーー同じ考えなのか同時に頷くので、代表としてルルが口を開く。


「差別したり、隔離したり、それ以上の血なまぐさいことをしたから、悪者は『魔力酔い』なんかするやつってことにしようと仰々しいお名前を付けたんすか?」



 私、純粋な質問をしてるよー。わくわく。と、ルルはアレンを見つめる。アレンの口元がひきつった。


「ーー悪意に満ちた論だな」

「え?図星っすか?」


 否定してないよね。強く、否定してないよね。

 大事な事だから、二回言いました。とばかりににっこり笑むルル。

 

「敵国に爆弾としても送れそうだな」

「過去にはそういった事例もあるが、今では各国で話し合い決めた条例もあり、『魔力酔い』の患者は、とある機関に送られる事になっている」



 レイの辛辣な言葉にアレンが反論する。


「……は?人間兵器をひとつの場所にか」

「治療のためですか?」


 レイは唖然とし、リジェも思わず質問してしまった。やだ。この世界、おめでたいかも!と三者三様に心から思う。



「当たり前だろ。それ以外に何がある。いずれは、魔力が暴走するのだぞ。そんな人間を抱え込むなど、徳の高い…」

「治療の様子や治療された人間を見たことがあるのか?」



 畳み掛けるようにレイに訊かれ、アレンが固まる。……そのまま、十秒くらい固まっていただろうか。


「そう、……訊いたことがある」



 気まずそうだ。実に気まずそうに視線を下にした彼にルルたち三人はそれぞれ目配せし、頷きあい互いの確信を悟った。

 ーーその機関、怪しい。

 まず、近寄らない関わらない方向だな。とお互いにアイコンタクトやらジェスチャーをする。

 しかし、アレンは随分と騙しがいがありそうで怖い。いつか、もちゃっとした嘘で騙してみよう。とルルは心で決めた。



「この話は置くぞ。アレンだけの話じゃ騙されかねん」



 レイの辛辣さにアレンもグッとなったが押し黙った。



「じゃあ次は精霊さんについてっすね。ルルに憑いてるのなんすか?『亜種』ってなんすか?」



 魔法が駄目なら、精霊だ!とばかりに気合いをいれるルル。異世界だぜ。私、異世界らしい行事カモン!

 ルルの目は輝いてるぜ。あにさんとばかりに見上げると、にっこりと笑む。


「そうですね。じゃあ、精霊を見ながら説明しましょうか。レイちゃん。喚んでくれますか?」

「ああ、無理だ」


 あっさり、拒否するレイにリジェが目を丸くした。え?って感じで。


「さっきから煩く喚くから、黙らせといた。今は泣き声が煩い」

「うん。さあ、ルル、精霊ってね。大まかにいえば六属性なんだよー」


 リジェが爽やかな笑顔でなかったことにしたが、ルルはぷくーっと頬を膨らませ、不満だとアピールする。



「泣いててもいいから出して欲しいッス」


 精霊見たい。と可愛らしくルルが主張したら、レイがにやり。



「耳元に置いていいならな」

「それは大変ウザイッス」



 なんだか部屋の片隅にある花もイケてない花瓶がガタガタしている。レイがひと睨みしたら、止まった。



「レイちゃん。精霊って強いんですよ」

「知ってるが?」

「仲良くしてください」

「やだ」


 三日の間に何が有ったのだろうかとルルは首を傾げる。

 レイは、プイッとソッポを向いた。二文字で断られたリジェは、あははっと気まずそうに笑う。



「六属性の説明はしないのか?」


 空気を読んだらしいアレンがリジェに続きを促すと、ため息をひとつ吐いてから、それでは…と続ける。


「六属性は四大素の他、闇と光があります。これは、基本的な大きな枠での区分け的な説明です。『亜種』はその枠での説明しようのない存在になります。ルルのフォローをしてくれている精霊は、誰かの魔力がないと生きていけない存在だと……だから、頼みに行ったんですけどね」



 リジェの話は途中までかわいそうな存在を語る悲痛な感じでした。しかし、後半につれ、だんだん苛立ちを隠しきれず、フッフッフッと不気味な笑いする年上の美男子に恐怖すら感じるルル。

 突然どうしたんだろうと、首を傾けるとレイが、ああっと思い出したように。



「ボロ雑巾のような物体が、宿に放り込まれた瞬間、『ああ、俺、異世界にいるんだな』と、感慨深く思ったものだ。凄いな。異世界。しかし、この世界での常識内で驚くのは芸がない。だいたい何故、俺が驚かなければならないのか。……学んだところで、元の世界に戻って、うっかり異世界常識をやったら、変人だろ。異世界とか言っていいのか?」

「すみません。レイちゃんがどの層に喧嘩売ってるのか把握できませんし、もっともだ。って言われたらそうだよね。としか言えない喧嘩の売り方は卑怯です」

「……俺はどこにも喧嘩は売ってないぞ?」



 心底心外そうなレイは、正しいとルルは思う。



「それに初異世界ならもっと驚きをもって挑んだほうがー」

「断る」



 レイは頑なだった。



「ボロ雑巾のような精霊様も見れないんすか?」

「あれは、18歳未満お断りだ」



 レイの真顔の拒否にそれは、どんなハレンチなヤツなんだ。とツッコムのを躊躇ってしまったルル。


「そんなにボコボコになさったんすか?」



 恐怖のあまり訊いてはいけない内容を口走ってしまった。案の定、リジェはにーっこりと笑顔。聞かないほうが良いことですね。わかります。なんだか室内が寒いなと思わず腕を擦ってしまったルル。



「いや、ただアレがオレ達の癪に触っただけだ」



 しかし、レイはハッキリ白状した。それに同意し、リジェは頷いた。



「もっと良いの見つかるまでの我慢だから」



 ……ルルには、会ったこともない精霊さんの良し悪しは今のところ、判別不可です。と心では思ったが反論はやめておいた。

 どこかでガタガタと何かが揺れている。抗議だろうか。



「まあ、『亜種』にはそれぞれ特性がありますが、守護する人間の望む力の形を具現化出来るらしいです。本当かどうかわかりませんが」



 望む力の具現化…?

 それはまた小難しい。下手な力を願って変な具現化をされたら目も当てられない。…と。ルルは考えた。

 魔法は使いたいが、思いで作り程度で良いし。世界を揺るがす巨大魔法?ないない。使いどころがない。……あ、そうだ。


 ポンッとるるは手を叩いた。



「ルル、本がほしいッス」




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