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捕獲


例によって例のごとく酔ったオジサン達に囲まれた僕は部屋に帰るなりベッドへ倒れ込んだ。

バイトで溜まった疲労からか、スグに寝入った僕が次に目を覚ましたのは10時を少し回った頃だった。


僕は上半身を起こすと寝癖のついた髪をグシグシとかき回す。

窓の外を見ると今日も晴れやかな青空が広がっていた。


「あ……恒例のギフトチェックしないとな」


ホントはバイトが終わったタイミングで確認したいんだけど

バイト終わりはそんな事気にかける余裕すらなくなってるからなぁ……。


ほぼ休みなく歌い続けるのって目茶苦茶ハードだからね。そりゃギフトのチェックも忘れちゃうってもんですよ。

……決して僕がもやしっ子だからという訳じゃないんだからね?


僕はアクビを噛み殺しながら右手にメニューを表示させた。


――――――――――――――――――――――――――――――

【ギフト一覧】


愛 Lv33

祈る Lv0

歌う Lv10

Empty

お呪い Lv0

サバイバル Lv0

サヴァイヴァル Lv0

大自然マスタリー Lv0

手当て Lv0

料理 Lv2

――――――――――――――――――――――――――――――


……もう考えるのは止めよう。

一覧に燦然と輝く【愛】Lv33を見つめたまま僕は溜め息を吐いた。


疑問に思ったり、驚いたりするのも疲れたよ……。

【愛】についてはもう『こういうもんなんだ』と受け入れてしまおう。


見ると【歌う】ギフトも順調にレベルが上がっており2桁に突入している。

【愛】と【歌う】のレベルの上がり方から察するに、どちらも酒場でのバイトの結果レベルが上がったと考えるのが妥当だろうな。


「うん……。今回もたくさんレベルが上がって嬉しいよ」

僕は自分に言い聞かせるようにそう呟くと、寝ぼけ眼をこすった。


「そういえば2人はどうしてるかな?」

かなり寝坊してしまったため寝室に2人の姿はない。

恐らく隣のリビングにいるだろうな。僕はベッドから立ち上がるとリビングへ通じるドアをゆっくりと開けた。


「おはよーございます」

挨拶しながらリビングへ入る。が、予想に反してリビングは無人だった。

僕はつっ立ったままパチリと1回瞬きすると、寝起きで回転の悪い頭で思案した。


えーっと……どういうことだ。

ひょっとして外に出かけちゃったのかな?


寝室にもリビングにもいないんだからそうなんだろうが、だからこそ腑に落ちない。


確か悪質なストーカーどもから身を隠すためにしばらくは宿屋に篭るって話だった気がするんだけどなぁ……。

なのに夜逃げした翌日に外出。どういうことだろう?


ま、考えても無駄か……。

雄也さんの事だし、何か考えがあってのことでしょ。

僕はアッサリとそう結論づけると、大きく背伸びした。


それに【料理】の事もあるし、2人がいないのは僕にとってはむしろ好都合だよね。

んー……今のうちに食材を買い足しておこうかな?

2人の監視の目がない今なら、思う存分食材を買い漁れるしね。


聞いたところによると簡易冷凍庫を作る生活魔法もあるらしいから、生ものも安心して買える。

本来は倒したモンスターの血肉を腐らせないために使う魔法らしいんだけど、食材冷やしちゃダメってこともないでしょ。


そうと決まれば2人が


あ、それと周囲の散策もしないといけないな。

食材を扱うお店がどの辺にあるかもチェックしないといけないし。




今思えばこの時、2人がいないという状況についてもう少し考えるべきだったと思う。

だって、何か事件が起きてるのかと考えれば情報収集のためにコミュニティボード見たかもしれないでしょ?


そしたらこの後起こる悲劇もきっと回避できたはずなんだ……。

周囲の散策を終え、食材を買い込んでホクホク顔で宿屋へ戻ろうとしたその時、肩を叩かれ呼び止められる。

『えっ?』と疑問に思う間もなく、知らない男の声が背後から聞こえた。


「涼太だな」

名前を呼ばれて振り向くと知らない男が立っている。

嫌な予感がした。咄嗟に『いえ違います』と答えるよりも一瞬早く、再び男が告げてくる。


「一緒に来てもらえるか」

嫌です。

そう答えるよりも早く、僕は拉致られてしまった。



+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-



この世界はアレか?

僕を拉致ることに関して何の罪悪感も感じない人たちで満ち溢れてるのか?


「状況は理解できたか?」


テーブルを挟んだ向こう側に座る男――厳つい顔をした大柄のお兄さんが

偉そうな口調で僕に尋ねてくる。


お兄さんの口を借りて言うなら、今回の拉致騒ぎは『僕のため』に『仕方なく』行われたものだったらしい。


なんでも現在コミュニティボードを中心に酒場『ルネシード』で歌手のバイトをしてるプレイヤーがいると大騒ぎになってるらしいのだ。

ルネシードの近くを通りかかったプレイヤーに運悪く見つかってしまい、ちょっとしたお祭り騒ぎなんだとか。


さらに『ハイホー!リョータ!』という酔っ払いおじさんズの声も聞かれてしまっていて

顔こそバレてないものの『リョウタ』という名前もバレてしまっているらしい。


という訳で水面下で密かに開催された『チキチキ!リョウタ捕獲祭り』から僕を守るために

目の前のお兄さんが僕を『保護』してくれたとのことなんだけど……。


嘘ついてんじゃねぇよバーカって感じだ。

話にツッコミ所が満載すぎるんだよバーカ。バーカ。


何が『保護してやった』だよ偉そうに。

お兄さんも『チキチキ!僕捕獲祭り』の参加者なんでしょ?

だったら『保護してやった』なんて言わないで素直に『捕獲した』って言いやがれ。


間違いは正さないとね。そして化けの皮は引っペがしてやんないと。

僕は恩着せがましく『保護してやった』とふんぞり返る男を見つめたままハァと溜め息を吐いた。


「すいませんが、何点かわからない所があったんですが質問していいでしょうか?」

「ああ、構わんぞ」

やっぱり偉そうな口調で男が頷く。


馬鹿め。すぐに吠え面かかせてやるぞ。

僕はニコリと笑顔を浮かべて口を開いた。


「えっと、まず最初から意味不明なんですよ。

お兄さんとは初対面ですよね?どうして僕が『リョウタ』だってわかったんですか?」

「大通りで名を尋ねただろ?」

「つまり手当たり次第に名前を確認していって、リョウタって名前の男を探してたところ僕がヒットしたと?」

「ああ、効率の悪い手段だが確実だろ?」

ハイ。ダウトです。


確かに食材屋の前で『涼太だな』と声をかけられた。

名を尋ねるというより、ほとんど断定に近かったと思うけど名前を呼ばれたのは事実だ。

だけどさ――


「僕、返事してませんよ。

それなのにどうして僕をそのリョウタって人だと断定できたんですか?」


そう指摘すると、お兄さんの目元がピクッと痙攣する。

もしかして動揺してる?だとしたら雑魚すぎるんだけどこの人。


しかしこれでハッキリしたな。

手当たり次第に声をかけまくったなんて嘘っぱちだ。


僕は動揺がダダ漏れになっているお兄さんの様子からそう判じた。


恐らく最初から僕が『リョウタ』だと知った上で、僕だけに声をかけてきたんだ。

となると事前に『僕=リョウタ』だという情報をどこからか仕入れたってことになる。


そしてそんな情報を握ってて、なおかつ目の前のお兄さんに情報を流しそうな人といえば――

一人しかいないわけですけどね。


要警戒中だというのに宿屋にいなかった男が頭を過る。

ホントあの人に関わるとロクな事にならないな。何やらかしてくれてんだか……。


お兄さんはしばし逡巡した後、低い声で返答してきた。


「いや、お前は確かに返事をしたぞ」

うへぇ。何その言い訳。

考えてた挙句に出した結論がそれって、そうとうヒドいですよお兄さん。


「してませんって。本人が言うんだから間違いないです」

なので改めてそう念押しすると、お兄さんは眉間にシワを寄せて唸るように反論してきた。


「……確かに聞いた」

「いや、返事してませんって。というかするわけないですって」

僕はそこでいったん言葉を切ると、改めてニコッリ笑ってお兄さんへ告げた。


「だって僕。『リョウタ』なんて名前じゃないですもん」

「な……!?」


流石に驚いたのか、本気で言葉を失うお兄さん。

無理もないよね。だってこの人は僕がリョウタだって知ってるわけだし。


けど強く否定できないってことくらいは残念な頭でも考えついたようだ。


だって、手当たり次第に声をかけまくって僕を見つけたって建前だもんね。

その本人に『僕はリョウタじゃないですよ』と否定されては打つ手がなくなってしまう。


僕が『リョウタ』だと知ってるから、どうにかして引き止めなくちゃいけない。

けど僕が『リョウタじゃない』と否定している以上、引き止める手段がない。


何と声をかけるべきかお兄さんは悩みまくってるようだ。

僕はそんなお兄さんを無視して畳み掛けるように告げた。


「という訳で残念ながら僕はお目当てのリョウタって人じゃないので今すぐ解放してください。

あ、引き続きリョウタさん捜索頑張ってくださいね」

言って勢いよく立ち上がると、つられたようにお兄さんも立ち上がる。


「ま、待てッ!」

「どうされたんですか?」

しらじらしく聞き返すと、お兄さんは再びグッと言葉に詰まってしまった。

僕は首をかしげてお兄さんの顔を見上げた。


「まだ何か用があるんですか?

残念ながらお探しの『リョウタ』って人には心当たりがないので、お力にはなれないんですが……」

「そ、そうだ!ならお前は何て名前なんだ!?」


あららー。そう来ますか。

ではもっと混乱していただきますかね。

僕は一切迷わず笑顔のまま元気よく告げた。


「あ、これは申し遅れました。僕は高階雄也っていいます」

するとお兄さんの顔がみるみる驚愕に染まっていく。

そりゃそうか。情報提供者の名前を堂々と名乗られちゃってますもんねー。


あ、別にお兄さんをビックリさせたかった訳じゃないんだよ。

結果的にそうなっただけで。


ただ確かめたかっただけなんだよね。どうして『偶然見つけた』なんて嘘吐いたのかを。

素直に『ある人から聞いて知っていた』って言わない理由はなんだろう?

それを確かめる為にも、盛大に自己紹介を偽装させてもらいました。


すると

「お前……どこまで知ってる」

意外とアッサリお兄さんが陥落する。

陰鬱な表情で呻く彼を見て、僕は笑みを深めた。


「んー。何の事でしょ?」

「とぼけるな。本当に雄也の言ってた通りの性格らしいなお前は……」

あの人非人からどんな事を吹き込まれたのか非常に気になるけど、今は我慢。

っていうか随分とストレートに自供してくれるもんだなぁ。単純な脳筋さんはこういうところが潔くて楽だ。


「えっと、偶然見つけたなんてクソくだらない嘘吐いてたって認めるってことでいいんでしょうか?」

問い詰める代わりにそう確認すると、お兄さんは苦笑いして頷いた。


「本当に嫌なヤツだ。ああ、初めからお前だけを狙った。

宿屋の前で見張って、適当なタイミングで声をかけたんだよ」

「1つ疑問なんですけど『偶然見つかったから保護した』ってクソくだらない建前は何の意味があったんですか?」

「そりゃお前……」

ずっと疑問だったことを尋ねると、お兄さんが口ごもる。

何だ?この期に及んでまだ何か隠そうとしてるのかな?


しばらく難しい顔をして何かを考えていたお兄さんは

眉間にシワを寄せたままポツリポツリと話出した。


「言葉は悪いが、お前は雄也に……その、売られたわけだろ?

知り合いからそんな事されたなんて、知らずに済めばそれに越したことはないと思ったんだよ」

「あぁ、なるほど。お気遣い感謝です」

つまり、僕が落ち込まないように気を回してくれたってことか。

でもお兄さん。アナタは1つ勘違いしてます。


「でもそういう気遣いは結構ですよ」

アッサリとお兄さんの言葉を否定すると、彼は目を見開いて僕を見つめてきた。


お兄さんみたいな単純で純粋そうな人には分かんないかもしれないですが

僕と雄也さんは『友情』とか『信頼』とかそういう美しい絆で結ばれてるわけじゃないんですよ。


雄也さんの言葉を借りるなら『汚い大人』の関係ですからね。

そりゃ、売られたり裏切られたりするってもんですよ。ハハッ。


「あの人はあの人の利益のために動いてますからね。

理由があれば、僕1人くらい笑って売っちゃいますよ」

淡々と事実だけを伝えると、それまで停止していたお兄さんが焦ったように動き出す。


「ア、アイツもお前の身を案じていたぞ……!

方法は褒められたもんじゃないが、それだけは信じてやってくれ……!!」

「えーっと……。信じてますよ?」


イキナリ何言い出すんだこの人は。

雄也さんが僕の身を案じてくれてる事について疑ったことなんてないですよ?


だって雄也さんにとって僕は非常に『役に立つ手駒』ですよ。

そんな自分の利になる人間を粗末に扱うわけないでしょ。あの人が。


奪われて、壊されでもしたら利用できなくなっちゃいますからね。

そうならない為にも僕の『身を案じる』のは当然の話だと思うんですが。


そんなことより気になるのは――


再び固まってしまったお兄さんにさらに質問しようとしたその瞬間

部屋に1つしかない木製のドアがキィと音を立てて開く。


思わず音のする方へ振り向くと、開いたドアの先にはバツの悪そうな表情をした一人の男が立っていた。


「雄也さん」

名前を呼ぶと、男――雄也さんは困ったような笑顔を浮かべた。


「本当は出てくるつもりなかったんだけど……。

どうも取り返しがつかない事態になりそうだったから思わず出てきちゃった」


言って、ゆっくりと部屋の中へ入ってくる。

テーブルの傍まで近づくと、雄也さんは改めて告げてきた。


「まず言い訳させて欲しいんだけどいいかな?」

「えっと、その後質問に答えてくれるんだったらお好きにどうぞ」


やや突き放したような言い方になっちゃったけど、まぁ言い返したりはしないだろう。

だって雄也さんの事だ。とっくに気がついてるだろうからさ。


何にって?愚問だよ。

そんなの1つに決まってるじゃないか。



つまり僕が――

メチャクチャ怒り狂ってるってことにですよ。



メラメラと燃える心をひた隠し

僕は椅子に座る雄也さんを睨めつけた。


傷つく?悲しむ?とんでもない。

そんなセンチメンタルな感情を抱く隙間なんて1ミリたりとも空いてない。

この胸を満たすのは、ただただ純粋な雄也さんへの怒りだけだからね。


ホント……よくも人のこと売ってくれやがりましたね。コノヤローが。

キッチリ落とし前つけさせてもらいますからね……。


暴走しそうな思考を押さえ込んで、僕は今後の事について暗い考えを張り巡らせた。

雄也裏切るの巻。雄也も悪い奴じゃないんですけどねホントは……。

まぁ実際目の前に居たらグーパンチで鼻を殴りたくなるでしょうけど。


こういうシーンってどう書けばいいか分かりません。

いつもが乱文くらいなら、今回は超乱文ですね……。精進しますorz

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