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幸せの可能性

雄也さんとキタナイ大人の話し合いをしてたら、いつの間にやらお昼を回っていた。

丸1日以上何も食べてない僕のお腹が空腹でヤバいです。


でももうしばらくは我慢だ。我慢。

まずは急成長した【愛】ギフトについて質問すべく、僕は右手をテーブルに乗せるとメニューを表示した。


「えっと、ギフトのレベルが上がったんですけどちょっと上がり方が不自然なんですよね」

そう言ってギフトタブをタッチし、ギフト一覧を表示する。

すると一覧を覗き込んだ雄也さんの目が少しだけ見開いた。


「Lv21……。確かにスゴいことになってるね。どうしたのこれ?」


あ、やっぱりいきなりLv21になるのって非常識な事なんですね。

でもごめんなさい。どうしたと聞かれても、僕もサッパリなんですよ。


「それが全く心当たりがなくて……。

さっき確認したときには既にこの状態でだったんですよ」

正直に答えると、さらに雄也さんは驚いた表情になった。


そりゃ驚きますよね。

『気づいたらレベルアップしてました』って、お前無意識に何やったんだよって話ですもんね。

しかもLv1とかLv2とか可愛らしい数字ならまだしもLv21まですくすく育っちゃってますもんね。


何か有力な情報が得られるかと思ったけど、この様子では厳しいかなぁ……。

そんな打算的な事を考えながら僕は口を開いた。


「それで質問なんですけど

ギフトってこんな急激にレベルアップするもんなんですか?」

まず1つめの疑問をぶつけると、雄也さんはスグさま首を横に振った。


「そんなに急成長するギフトの話は聞いたことないね……。

1日中がむしゃらに頑張ればLv10くらいまでなら成長するかもしれないけど、Lv21はちょっと考えられないよ」

「なるほど……。ってことは2日分以上の成長をしてるってことなんですか?」

1日でLv10、ならば2日でLv20だろうと単純計算してみたんだけど、どうやらそれは大きな間違いだったらしい。


「いやいやいや。1日でLv10まで成長するって言ったけど2日でLv20は普通無理だからね?

ギフトのレベルが高くなればなるほど成長しずらくなるから、Lv20まで成長させるには最低10日くらいはかかるよ?」


思った以上にありえない成長だったみたいだ。

流石に予想を大きく上回った成長率に、僕は一瞬ポカンと呆けてしまった。


10日もかかるの?

しかも『最低10日』ってことは普通はもっとかかるって意味だよね?

それを1日で上げちゃったわけだよね僕……。


「ホント、一体何があったの?」

心底不思議そうな顔の雄也さんにそう尋ねられ、僕は改めて昨日の記憶を掘り起こした。


昨日最後にギフトを確認したのは、この部屋で歌の練習をしてた時

――そう『歌は自力で頑張るんで、見守っててください』って神頼みした後だったよね。

で、そのときは全てのギフトはLv0だった。


ということは、少なくとも午前中に遭遇した拉致犯は

この急速レベルアップに関与してないってことだよね。


となるとやっぱり疑わしきは――

「心当たりといっても、歌唱依頼でルネシード行ってきたくらいなんですけどねぇ……」

ポツリとそう呟くと、雄也さんの目がキラリと光る。


「あ、早速ルネシード行ってきたんだ。

どうだった?ちゃんと仕事はできたかい?」


あ、そうでした。

雄也さんは、僕が昨日ルネシードでバイトしたこと知らないんだった。


「えぇまぁ。ちゃんと出来たと思いますよ。と言っても歌うたってきただけですけどね。

次の出勤日も決めてきたので、クビにはなってないと思います」

だいぶ端折ってしまったけど、つつがなく仕事が終わったことを告げると雄也さんは少しだけホッとした表情になった。

まさか酔っ払ったオッサン達とハイホーハイホー叫び合った挙句、ぶっ潰れたとは夢にも思うまい。


「へぇ。俺も涼太君の歌うところ見たかったなぁ。

でもそっか。うまくいったんだね。君には是非このまま頑張って欲しいからねぇ」


『株式会社的な意味で』

セリフの後に、そんな心の声が聞こえて来た気がしたけどそんなもの無視だ。無視。

何かを伺うような視線も感じるけど、僕は気づかないふりでやり過ごした。

せっかく通常モードに入ったっていうのに、誰が好き好んで交渉モードに戻すものか!


「ま、本題から逸れるからこの話は追々ね」

素っ気ない僕の態度を見て諦めたのか、案外すんなりと雄也さんが引き下がる。


アレ?

もっと粘られるかと思ったのに逆に肩すかしをくらった気分だ。

いや、物足りないとか思ってるわけじゃないよ?らしくないなぁとは思ったけど。


でも、やっぱり雄也さんは雄也さんだった。


「あ、つまりそういうことか……」

突然、意味不明なことをボソリと呟くと、彼はニヤニヤした締りのない表情になった。


「そういうことって……どういうことですか?」

そこはかとなく嫌な予感がするものの、そう聞き返すと彼はゲスい表情のまま告げてきた。


「ヤダなぁ。

深夜の酒場に初めて訪れた少年が、たった1日で【愛】を急成長させるなんて考えられるのは1つしかないじゃない」

「いやいやいやいや」


やっぱり変な勘違いしちゃってるこの人!

確実にロクでもないことを考えてるであろう目の前の男は、僕の静止など聞きもせずに上機嫌に続けた。


「えー。隠さなくてもいいじゃない。

夜の酒場でしょ?綺麗なオネーサンでも居て一目惚れでもしちゃった?」


いや、そんな余裕なかったですから!

ただひたすら歌いまくってただけですから!

でもそんな僕の心の声は当然雄也さんには届かない訳で。


「あー、でも一目惚れくらいでLv21はないか。

ということは思わずレベルアップしまくっちゃうような気持ちいい事でもあったのかなー」


ギャー止めてー!

そんなピンクな背景が似合いそうな想像は止めてくださいッ!


声を出すこともできず、ただひたすらいらん事を言いまくる雄也さんを睨んでいると

彼は、フフッと鼻で笑って告げてきた。


「とかなら急速なレベルアップもある程度は納得できたんだけど

その様子だと……どうも違ってたみたいだね」

「最初から知ってたくせに……」


気づいてないとでも思ってたんですか。

途中から明らかに僕を揶揄うためだけに煽ってたくせに。


「アハハ。ごめんごめん。ちょっとした冗談のつもりだったんだけど

君の反応があんまり素直だったから悪乗りしちゃった。……って顔真っ赤だけど大丈夫?」


張本人の貴方にだけは言われなくないです。

赤い顔を晒したくなくて両手で顔を覆うと、僕はボソボソと告げた。


「顔面ぶん殴った上で、鼻血出てるけど大丈夫って聞いちゃうような人僕は嫌いです。

あまり気は進みませんけど、そっちがその気なら僕はいつでも敵対しますからね」

軽く脅すと、雄也さんの椅子がガタッと音を立てた。

このくらいの意趣返しは許して欲しい。主導権とられっぱなしっていうのも面白くないしね。


顔を覆ったまましばらくジッとしてるとぎこちない口調で雄也さんが告げてきた。


「えっと、スイマセン……。

そんなに過剰反応されるとは思わなくて、少し調子に乗りすぎました。

反省してますんで、とりあえず敵対はしないでくれると助かります」


意外にも殊勝なその態度に思わず吹き出しそうになる。

ダメだ。こらえるんだ……。まだだ。まだ笑ってはいけない……。


「反省だけならサルでもできるらしいですよ?

もっと誠意ある対応を要求します」

顔を隠したままそう告げると、雄也さんの溜め息が聞こえた。


「分かったよ……。今度必ず埋め合わせするから、とりあえず敵対宣言は撤回してもらえないかい?」

「そういうことでしたら」


僕は顔から手をはがすとニコリと微笑んだ。

多分顔はまだ少し赤いと思うけど、もう茶々を入れられることもないだろうし平気だよね。


視線の先では雄也さんが苦々しい表情をしている。

ちょっとだけサマーミロだ。因果応報ですよ。因果応報。


けど結局、【愛】の超高速レベルアップは分からずじまいだ。

αテスト参加者の雄也さんでも心当たりないんだから、僕なんかが悩んでも仕方ないか。


「たくさん成長したのは良い事なので、とりあえずは様子を見ることにします」

だから、そう宣言して締めくくった。


分からない人間と分からない人間が議論する事程無駄な事はないからね。

絶対に解決しない議論なんてしてたら僕のお腹がさらにヤバい事になりそうだしさ。主に空腹的な意味で。


「力になれなくて面目ないね。

でも涼太君はギフトに関しては色んな意味で規格外だよね。

ラインナップもそうだけど、成長率まで破格なんてスゴい事だよ」

一瞬、皮肉かとも思ったけど純粋に褒めてくれてるみたいないので素直にお礼を言っておく。


「ありがとうございます。

でもオンリーワンすぎて色々と不自由な面もあって大変ですけどね」


どうやればレベルが上がるのか分からない。

どういう効果があるのか分からない。

どうやって使えばいいのか分からない。

――アレ?思った以上にヒドくないか。この状況?


「いやいや、それを楽しんでこその人生だよ。

さっきからロクなアドバイスできてないけど他に相談したいこととかある?」

スゴく悲しい事実と向き合っていると、雄也さんの声で現実に引き戻される。


そ、そうだよね。ド・マイナーなギフトだからこそ誰も知らない未知の可能性を秘めてる訳だし。

地道にコツコツ頑張っていかなくちゃね……。


そう。その手始めとしてまず【料理】にチャレンジしてみたい。

ちょうどお腹空きまくってるし、夜までは時間あるしさ。


まぁ、素直に雄也さんに相談してもいいんだろうけど、【料理】ギフトに対しては並々ならぬ期待をもたれてるみたいだからなぁ……。

上手くいったらいったで色々と面倒な交渉されそうなのがちょっと怖いかもしれない。

……まずは軽く探りを入れてみよう。


「あの、質問というか確認したいことがあるんですけどいいですか?」

「ん?俺に答えられる事ならなんでもどうぞ」

よし。言質はとった。それじゃ遠慮なく行かせてもらうことにしよう。


「ありがとうございます。

早速なんですけど、雄也さんは武器ギフトって何かとってますか?」


よもや自分の事を聞かれるとは思ってなかったのか、雄也さんが少しだけ戸惑ったような表情をする。

多分僕が何のためにこんな確認をしてきたのか考えてるんだろう。抜け目無いからなぁこの人……。


「えっと。俺は【剣】と【槍】を持ってるけど……。どうしたのいきなり?」

「いや、ご存知の通り僕は武器ギフト持ってないんで、どんなギフトかなぁと思いまして。

確か武器を召喚するためのギフトですよね」

やはり戸惑い気味の雄也さんをあえて無視してドンドン話を進める。


「武器が召喚されるって言葉で聞いただけじゃピンと来なくて

実際に見せてもらいたいんですけど、お願いできますか?」


そう。要するに僕は剣なり槍なりが召喚されるところを見てみたいんだ。

召喚っていうくらいだから、どこからともなくポンッと出てくると予想してるんだよね。


ギフトの説明文っぽく言うなら

『剣をポンッと召喚するよ。モンスター退治の時に召喚してね』ってところかな。


で、これってさ、ちょこっとだけだけど【料理】の

『食材さえあればキラッと料理がつくれるから、色々試してみてね』って説明に通じると思わない?


半ばこじつけではあるんだけど

【料理】ギフトを使うためのヒントにでもなればいいなと思ってお願いしてみたんだよね。

まぁダメ元覚悟ではあるけどね。


「僕も男の子ですからね。剣とか槍とかには興味あるんですよ」

なかなか行動に移さない雄也さんを急かすために、心にもないことを言うと彼は困った顔で笑った。


「そういう男の子は、ギフト選択の時真っ先に武器ギフトを選びそうなもんだけどねぇ……。

まぁいいや。君が何考えてるか分からないけど、お安い御用だよ」

雄也さんは気安く請け負うと、椅子から立ち上がった。


そのまま2歩程後ずさり距離を取ると右手を握り締める。

そしてその握った拳を見つめ、平素な声で唱えた。


【剣】


その声に反応し、雄也さんの握った右手の周辺がキラッと輝く。

――いや輝いたかと思った時には、その手に鈍く光る1本の長剣が握られていた。


僕はその非現実的な光景の一部始終をただただ眺めていた。


いや、話には聞いてたんだけど、実際に見るとスゴいな……。

まるで上等な手品を見てるような、魔法を見てるような、そんな気分だった。

そんな僕に気がついたのか、雄也さんは少しだけ声を出して笑った。


「ハハハ。なんか懐かしいな。

俺も初めて【剣】ギフトを使ったときは感動したなぁ。

それが今じゃ魔物退治する前に行うルーチンワークだもんねぇ」


少し寂しそうにそう言うと右手を開く。

剣は雄也さんの手から滑り落ちるように離れた瞬間、再びキラッと輝いて跡形もなく消え去ってしまった。


「以上が【剣】ギフトの一部始終だよ。

【槍】も同じような感じだけど一応見てみる?」

「あ、いえ。もう大丈夫です。ありがとうございました」

僕はギュッと目を瞑ると、今しがた見た光景を頭の中で反芻した。


不覚にも見とれてしまった。

予想通りどこからともなく剣が出てくるだけのギフトだったけど、実際に見るとあまりに非現実っぷりに目を奪わてしまった。


いや、全くの予想通りってわけでもなかったか……。

むしろ嬉しい方向で予想を裏切ってくれたよね。


ようやく回り始めた頭でそんなことを考える。


剣を召喚するとき一瞬だけだけどキラッと光ったよね?

ということは【料理】ギフトで料理を作る時も、今見たみたいにキラッと光った瞬間料理ができるんじゃないかな?


あ、ただ【剣】の場合は何もないところから呼び出せるけど

【料理】の場合は食材は必要みたいだから、食材を並べて「料理」とでも唱えればいいんだろうか?


いや「料理」だと流石にマズいかなぁ……?

せめて「焼く」とか「煮る」とか調理法を指定したり

「ステーキ」とか「寿司」とか料理名を指定したりしないといけないかもしれない。


ほら卵とかの場合、同じ材料で卵焼き、目玉焼き、ゆで卵、オムレツとたくさんのレパートリーがあるわけだし

さすがに「料理」の一言で済ますことはできなさそうでしょ?


でも待てよ……。

僕はある考えに思い至って目を開いた。


「あの、さらに1つ確認したいんですけど、他の形状の剣も出せたりしますか?

例えばもっと小さな短剣とか、逆に両手持ちの大剣とか」

そう尋ねると、雄也さんは離れた位置につっ立ったままコクリと頷いた。


「うん。短剣でも細剣でも大剣でも剣だったら、どんな形状のものでも出せるよ。要はイメージの問題だからさ」

ほうほう。イメージの問題ですか。これはもしや久々のキタコレかもしれないぞ。

思わずニヤケそうになる表情を何とか堪えつつ、僕は確認を続けた。


「つまり、頭の中でイメージした形状の通りの武器が召喚されてくるってことですか?」

「うん。その通りだよ。

まぁボンヤリしててもオーソドックスな形の武器が出てきてくれるから失敗は基本的にないけどね」

「なるほど。そんな仕組みになってるんですね」


なんて感心したような事言ってるけど、頭の中は別の事でいっぱいだった。

まだ確証はないけど、【料理】ギフトも同じような仕組みだとしたら僕は一気にハッピーになれる可能性があるからだ。


だってイメージでいいんだよ?

卵を手に持って、頭でフワッフワのオムレツを想像して


【料理】

【焼く】

【オムレツ】


みたいな魔法の呪文を唱えれば、あら不思議。

おいしいおいしいオムレツの完成です。なんてことになったら幸せ過ぎて太ってしまうかもしれない。


もちろん実際にフライパンで調理しなきゃいけないって可能性もある。

それにせっかく作っても、コノセカイ・クオリティのマッズい食べ物が出来上がる可能性だってなきにしもあらずだ。


だけど、それでも期待してしまうよね。

だってギフトの説明文だと『キラッと作れる』ギフトだって話だったし

それにハッキリと『おいしいご飯が作れる』ギフトだとも書いてあった。


それになりより、ここで冷静に考えられる程、今の僕は我慢強くないんだ。

丸1日絶食した男子高校生の食欲を舐めてもらっちゃ困るんですよ。


「……涼太君?」

突然うつむいたまま黙りこくってしまった僕を不審に思ったのか、頭上から雄也さんの声が聞こえた。

僕はゆっくりと頭を上げながら、今後のことについて考えていた。


"今夜の夜逃げに向けて荷物の整理をしますから、いったん解散しましょうか"

手荷物1つ満足に持ってないのはバレバレだろうけど、そんなの問題じゃないんだ。

遠まわしに『そろそろ出てってください』って伝えてるだけなんだから。


そして1人になったらまず食材を買いに出かけよう。

ただ、食材を余らせる訳にはいかないから量は控えめにしとかないとね。


なに問題はないさ。食べ足りなければ、後で買い足しに行けばいいんだ。

まずはこの堪えきれない程の空腹を満たすことだけを考えようじゃないか。


雄也さんごめんなさい。

まずは僕1人で幸せになることにします。


ようやく視界に入った雄也さんを見つめ、僕は心の中でそう謝罪した。


でも約束しますよ。

キチンと【料理】が作れる事が確認できて、雄也さんにおかしなお願いされずに済む方法が見つかり次第ちゃんと2人の分も作ってあげますからね。


あ、でも。その代わりと言ってはなんですけど

その他大勢の皆さんへの対策とか周知方法とか、その辺の方法を一緒に考えてくださいね?


「…………涼太君?」

心配そうに僕の名前を呼ぶ雄也さんを見つめ、僕は口を開いた。


「早めに荷物の整理とか終わらせときたいんで、そろそろ解散ってことでいいですか?」

何の脈略もなくそう告げると、流石に雄也さんもギョッとした表情になる。

しばらく見つめ合った後、雄也さんが言いにくそうに聞いてくる。


「えっと……ずっと気になってたんだけどさ。

俺の【剣】ギフトを見て、結局君は何が知りたかったのかな?」

「嫌だなぁ。言ったじゃないですか。ただの憧れだって」

白々しくそんな返事を返すと、雄也さんは眉根を寄せて溜め息を吐いた。


「うん。そうだったね。

でも悔しいなぁ……。君が今何を企んでるか俺にはサッパリ分からないよ。

これが逆の立場だったら、きっと君はスグに俺の企みを察して探りを入れれるんだろうね」

「安心してください。近いうちにきっちネタばらししますから」

否定するのも面倒で、『何か企んでる』事だけは認める。

雄也さんは何とも形状しがたい微妙な表情になると、小さな声で呟いた。


「……それじゃまた夜に来るね」


そのまま静かにドアを開けて部屋を出ていく雄也さんの背中は少しだけ煤けて見えた。

彼が退室し、廊下を叩く靴音が遠ざかるのを確認してから僕は小さく呟いた。


「さぁ実験の時間だ」


僕は絶対に幸せを手にしてみせるからね。

口の端から垂れるよだれを手の甲で拭うと、僕はニヘラと幸せそうな笑みを浮かべた。


またしてもほとんど話が進まなかったです。

次もご飯作って食べるだけとかになりそうで、これまた進まなそうです。


夜逃げするのはいつになるんだろうね(他人事)

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