…何故増加する、ハーレム達は(2)
僕は、教室のドアの方へと視線を向けた。
視線の先には、美女が居た。赤色に煌く長い髪を後ろでポニーテールに結んでいる、女子生徒だ。この学園には制服はなく自分が動きやすい服装を着る事になっている。ハーレム陣達はルークに見せたいのかスカートばかり履いているし、おしゃれをしてくる女子生徒は多い。だけどその女性はそういう着飾るという事をしていなかった。
そして着飾る事もしなくても、その女性は美しかった。そしてその顔がどこかで見たことがある気がして、僕は頭をかしげた。
「あー、イリちゃん!」
マー先輩は親しげにその名を呼ぶ。そうすればその女子生徒はこちらに近づいてくる。教室に居る生徒達のほとんどがその女子生徒に視線を向けていた。
「ネアラ。貴君はなぜ此処に居る。もうすぐホームルームが始まるというのに、後輩のクラスに入り込んで、何をしているのだ」
「えー、だってぇ、ルー君かっこいいんだもん! てゆーか、流石生徒会長、真面目だよねぇ」
マー先輩の言葉に、納得が言った。
入学式の時に生徒会長の挨拶をしていたのはこの人である。だから見たことがあったのだ。それにしてもこの人も美人だが、ルークのハーレムに加わるのだろうか? なんて思ってしまうのは散々外見の良い女がルークに落ちていっているからだろう。
「ルー君? ああ、貴君は主席のルーク・ヴェーセトンじゃないか。それに、次席のルミ・アイワード、四席のノア・メキシム、五席のミク・セルファード、七席のユウ・リルード。
実力者ばかり集まっておるのだな、このクラスには。ところで、アフライ・シュンドイル。貴君はこのクラスの担任でありますよね? 何を一生徒であるヴェーセトンにくっついておるのですか。一人の生徒を贔屓する事はほめられた事ではないです」
アフライ先生にはっきりと言ってくれるあたり、生徒会長さんに好感が持てる。生徒会長さんの名前は何だったか、そんな事を考えながら頭の中を探るが名前は思い出せない。
「なっ、私を邪魔するというのか!」
「…貴君は言葉を理解できないのですか? 我は一生徒を贔屓するのはどうかと助言しているだけです。周りの生徒達から見れば行きすぎたスキンシップなどはただの害にしかなりません。そもそも邪魔と言いますが、我は生徒会長です。生徒達が勉強しやすい状況を作るのは当たり前ではないですか?」
我に、貴君…。うーん、ギャップがあるなぁ、生徒会長さん。
しかしこうも堂々といってもらえると、今までの嫌な気分が少し晴れていく気がする。というか我とか貴君とか言っているのに、敬語使ってるのが何だか聞いていて面白い。そしてアフライ先生の顔が歪んでいってるのを見て愉快だと思う僕はきっと性格が悪いんだと思う。
「私は! ルークと一緒に居たいんだ! 何故邪魔をするんだ! 私は、周りに迷惑などかけていない!」
「…失礼、貴君は子供のようです。我儘を言っている自覚はおありですか? 周りに迷惑をかけてないとおっしゃってますが、少なくとも我ならば自分の恋愛感情のままに一生徒を贔屓する担任に敬意など持てません。噂で聞いただけですが、貴君は授業中にまでそういう態度をとっているとの事ですよね。それならばなおさら駄目です。学園外のプライベートならまだしも、学園内では貴君は教師であり、ヴェーセトンは生徒なのです」
「アフライをそんなに責めないでやってくれ、悪気はないんだ!」
「ルークっ、優しいな…」
ルーク、そこは黙って見てろよ! お前どうせ自分では強く相手に言えないんだから…。いやもう、此処でアフライ先生の味方するって事は確実にルークって、自分は主席だからそんなに真面目にしなくてもいいみたいに勘違いしてるんだろうなぁ…。自分の実力に対する自信とか誇りはいいと僕は思ってる。でも自信過剰とか自惚れって、駄目だよなぁと思う。
そして、アフライ先生…。ルークが口を出したからって勝ち誇ったように生徒会長を見るのはどうかと思う。
「…ヴェーセトン、悪気がないからとしていい理由にはならない。そして責められるような事をしたのは、シュンドイル先生である」
「ルーク、ルークからアフライ先生にいいなよ。せめて授業中だけでもあの態度やめるように。実際に嫌な思いしてる人もいるだろうし、そもそもアフライ先生は授業中、ルークにばっかあてて、ルークにばっか話しかけて、それで授業進まない事だってあるじゃないか。それに何か言えばすぐに――――」
「リルード! 私の邪魔をするなら単位をやらんぞ!」
「………私情で単位をやらないなんていう馬鹿な事言いだすんだし」
生徒会長さんの言葉に続いて、僕もアフライ先生に言った。だって普段から単位あげない言うから強く反発できなかったし。でも、生徒会長さんが居るなら、言っても大丈夫かなと思った。それに単位やらないって脅しで大人しくしてるなんて正直僕らしくないと思うし。
「貴君、失礼ですが馬鹿なのですか?」
…生徒会長さんの言葉が直球すぎて、僕は思わず噴き出すかと思った。