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…何故増加する、ハーレム達は(1)

 朝、男女混合の学生寮から学校に行けば、何だか頭を抱えたくなる光景が目の前に存在していた。

 いつものハーレム陣―――担任も含めた四人が居るのはまだわかる。だけど、どうしてもう一人いるんだ?

 「ねぇ、ルー君。僕もこのクラスだったらよかったぁ。ルー君と一緒に授業受けたかったぁ」

 僕っ娘という奴ですか、これは。背は僕たちの年代よりも平均的に見て低い。ルークの腕に絡みつく姿は兄と妹にしか正直見えない。黒髪の小柄な可愛らしい少女が、ルークに甘い声で話しかけているだなんて、また女をひっかけたのだろうか?

 というより、彼女は誰だ。見た事はないのだが、同じ学年か…? そんな疑問を頭に浮かべる。

 「あ、ユウ。おはよう!」

 じーっと、教室の入り口からルークと新たなルークに惚れたであろう少女を見ていたら、ルークに声をかけられた。

 僕は、ふぅとため息を吐いて、ルークに近づく。

 「おはよう、ルーク。この子は? 名前と出会ったいきさつを簡潔に述べろ」

 周りの連中の視線が鋭いが、今に気にした事でもないのでとりあえずルークに問いかける。

 「え、この人はネアラ・マーシェスト先輩! 一個年上なんだ。今朝先輩が集団に囲まれててそいつらを追い払ったんだ、一緒に!」

 …先輩だったのか。背が低いし妥協してでも同じ年だと思ってたんだが。にっこりと笑うルークから視線を外して、僕はマーシェスト先輩を見た。

 「マーシェスト先輩、はじめまして。僕はユウ・リルードです。こいつの幼なじみです」

 先輩、だという事もあって、敬語で僕はそう言った。アフライ先生を含むハーレム四人は性格的にアレだけど。先輩がハーレム陣達と同類とは限らないし、ハーレムの一員になったからと敬遠するつもりはない。大事なのは見た目より中身である、と僕は思う。

 「ルー君の幼なじみなのかぁ。幼い頃からルー君と一緒に居たなんて羨ましいなぁ。よろしくねぇ、ユー君」

 「はい、よろしくお願いします。マーシェスト先輩」

 「マーシェストって長いでしょ? マー先輩とか略していいよぉ? 皆そうするから」

 「じゃあ、そうします」

 「ルー君とはいつから仲いいのぉ?」

 悪意のない瞳で、マー先輩はそう問いかけてくる。

 …やばい、感激しそうだ。この学園入学して初めて、僕に悪意を向けないハーレム陣に会ったのだ。何だか、嬉しくなる。メキシムもセルファードも、アイワードもアフライ先生も皆、僕を邪魔みたいに見てたからなぁ…、と遠い目になる。

 「3歳ぐらいからだぞ。ネア先輩」

 マー先輩の質問に答えたのはルークだった。というか、今日出会ったばっかで先輩相手のタメ口って流石、だと思う僕である。というか、どんだけ親しくなったんだ、短い間で。

 僕とルークが出会ったのは、3歳である。父親が公爵家の庭師の仕事を引き受けた関係で知り合ったのだ。…そういえばルークはその頃から、公爵家に仕えるお手伝いさんとかを虜にしていた。

 僕とルークが同じ年だからって、引きあわされて、それで仲良くなって、そのまま親友となって育ったのが、僕とルークだ。

 「へぇ、3歳からなんだぁ。かなりの付き合いなんだねぇ。

 子供の頃の……」

 マー先輩が何か言いかけた時、

 「3歳から…! 羨ましいですわ! わたくしもルークの幼なじみだったらよかったのにっ。リルード、ずるいですわよ!」

 アイワードが突然口をはさんできた。

 …黙れ、といいたくなってくる僕である。

 幼なじみなのがずるいと言われても、そんな変えようのない事実で何で僕が睨まれなきゃいけないんだ。というか、アイワード、マー先輩の言葉を遮るとか年上の先輩に失礼だろ。

 なんて思いながらアイワードに向かって、僕は言う。

 「羨ましいと言われても困る。それにルークと幼なじみなのは結構大変だぞ? こいつ昔からこんな感じだから嫉妬やらなんやらで色々面倒だし」

 「なっ…ルークと幼なじみでありながら、そんな事を言うなんてっ。これだから、低能な男はっ!」

 …低能な男って、何を言ってるんだろうか。

 まぁ面倒だから言い返そうという気にはならない。言い返したら余計睨んでくるようになりそうだし、本当ルークは何でこんなのと一緒に居て嫌にならないのだろう、それが不思議でならない。

 「そうですよ、ユウ君! ルークさんと一緒に居れるのに面倒だなんてっ、何てひどい事を言うんですか!」

 「ルークと一緒に居て大変ってっ、ならルークから離れなさい!」

 「ルークにそんな事を言うなんてっ」

 ルークと僕は腐れ縁という奴だと思う。面倒だし、大変な事はわかってるが、僕は幼なじみで親友なルークを放っておこうとは思わない。そもそも、アル様にもルークと仲良くしてくれって頼まれてるし、それにルークの方が僕を昼ご飯とかに誘ってるのに、離れなさいと言われても困る。

 …というか、本当に放っておいたらルークは堕落していき駄目人間になってしまいそうな予感がしてならない。あの人のためにも、ルークを堕落させるわけにはいかない。というか、幼なじみが駄目人間になっていったら個人的に嫌だし。

 「…ルークに言えば? ルークが僕と縁切りたいとでも言うなら離れるけど?」

 ルークがそんな事を絶対に言わないのを知っていながら、僕は彼女たちに向かってそう言った。

 というより、僕に邪魔邪魔って態度してきて、本当、面倒。前にメキシムがあんたみたいな平凡な人がルークの親友だなんてありえない! とか言ってたけど、僕が平凡な顔だから気にいらないっぽい。まぁ、ルークって、美形だからなぁ、なんて思いながら僕はルークを見た。

 ルークの顔立ちは整っている。漆黒の瞳は吸い込まれそうなほどの美しさで、その目に見つめられると全てを捧げたくなるらしい(ルークの虜であるお手伝いさん談)。銀色の光に反射して輝くその髪は神秘的な印象を人に与え、この人が欲しいと思うようになるらしい(ルークの虜である近所の少女談)。

 まぁ、要するにメキシム達からすればそんなルークの隣に幼なじみだからと平凡な顔立ちの僕が居るのが気に食わないようである。

 「あー、皆、ユウにそんな言わないでやってくれ」

 ルークは困ったように、メキシム、セルファード、アイワード、アフライ先生の三人に言った。

 そんな困ったような表情に、三人は困っているルークもいいっ、とでもいう風にぽーっとしている。マー先輩はそんな会話を聞いて、僕に話しかけてきた。

 「ユー君、いつもこんな感じなのぉ? 大丈夫?」

 「…大丈夫です」

 僕がそう言うと、マー先輩は安心したように笑みをこぼして、次にハーレム陣達の方を向いた。

 「ねぇ、あなたたちはぁ、ルー君の何ぃ?」

 …そうして敵意にも似た感情を瞳に浮かべ、ハーレム陣達を見るマー先輩に、やっぱりこの人ルークに恋してるんだなとただ呑気に思った。

 僕個人の意見としては、付き合うならメキシム、セルファード、アイワード、アフライ先生以外にしてほしい。だって、ルークの恋人にこいつらみたいな自己中連中がなったら、余計面倒な事になりそうだし。

 「私は――――」

 メキシムが、マー先輩の言葉に口を開こうとした時、いきなり教室の扉が勢いよく開かれた。そしてそれと同時に、

 「ネアラ!」

 そんな、マー先輩を呼ぶ声が、響き渡った。

 

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