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様子を見に行ってみた。

 「ルークのやつを見に行くんだろ? いってきなよ」

 術式を刻む仕事がひと段落つく中で、リアーナさんはそういって口を開いた。

 まぁ、確かにひと段落はついた。やろうと思ってたことは終わった。だから、僕はリアーナさんの言葉に甘えることにした。

 見に行くとはいっても、本当に見に行くだけですぐ帰るけど。

 だってこういう事やってるルークハーレムってなんか見てて怖いし。すごい張り合ってるから。

 「じゃあ、私とギルは引き続き仕事してるね! どんな様子か教えてね、ユウ」

 「なるべく早く帰ってこいよ」

 僕はナタリーとギルの言葉に頷いて、立ち上がる。そして工房を後にして、そのまま店を出た。

 さて、どうせ騒がしい場所にいるだろう。そう思いながら僕は歩き出した。









 水のあふれるこの街は、噴水などがよくみられる。住人達はこういう出来事に慣れているからか、一緒になって騒いでいる。

 一番最初にこのような出来事が起きた時は周りは何事だと騒いだものだけど、もうすっかり町の行事的なものになっている気がする。

 こう考えると地元ハーレムの人たちのやる気って凄まじい。

 うん、学園ハーレム達もこんな風にやる気だして、平和的に解決すればいいのに。毎回言い争ってて何なんだろうね?

 さて、何処でルークは料理を食べているんだろうか。

 あの人達やる事派手だから、どうせ外でやらかしてるんだろうけど。

 あ、ちなみに料理コンテスト的なのを地元ハーレムはよくやる。だから、料理コンテストとかになると広場に、調理場がそのままどんっと設置されそこで作ってルークとかあと、巻き込まれて審査するように言われた住民達がどれが一番美味しいかって事で色々ある。

 地元ハーレムは正々堂々って感じだからまだいいけど、学園ハーレムはなんか文句いいそう。もしそれで負けたら。

 僕も何度か料理の審査頼まれたことあったけどやりたくなかったから断った。だってめんどくさいし、そんな事に時間裂くより、魔法具作りとかしてた方がいい。

 僕は基本的に、趣味のために時間を使う。魔法具作りも、剣の練習も、色々とやりたい事はいっぱいあるのだ。

 本当に何処にいるかなと歩く中で、

 「よ、ユウじゃんか」

 声をかけられた。

 振り向いた先に居るのは、茶髪の若い男だった。見知ったその顔に、僕も返事を返す。

 「レオルドか。レオルドも帰ってきてたの?」

 「ああ。休暇もらってさ」

 レオルドは僕よりも一つ年上の、ナタリーと同じ孤児院育ちだ。ギルドの下っ端をやっている。レオルドが所属しているのはそこそこ大きなギルドだ。下っ端は先輩のギルド員に面倒を見てもらってまずは依頼になれてもらうようになっているらしい。

 それでレオルドはギルドに住み込みで働いている。で、休みになると地元に帰ってくる。

 「そうなのか。僕、ちょっとちらっと様子見にだけいくかなと思ってルークの所行く予定」

 「……俺の前でアイツの名を出すな!!」

 「ああ。相変わらず嫌いだね。ルークの事」

 思わずレオルドの言葉に苦笑を浮かべてしまった。

 「うん、まぁ頑張れレオルド。カトリーナだってルークを諦める可能性もあるだろ」

 続けて僕はそんな言葉を口にする。

 レオルドって昔からルークハーレムの一員の花屋のカトリーナの事大好きだから、ルークを嫌っている。というより、ルークハーレムに好意を抱いてる男性陣はルークに妬みとか嫉妬とか色々感じている。

 「………くそ、アイツマジむかつく。ぼこりたい」

 「うん。レオルド、ルークに勝てないでしょ」

 「あー、マジそれもむかつく」

 レオルドってルークに正当法で真正面から突っかかっていくもんね。戦う時。それじゃ普通に、勝てないのは当たり前だ。

 「まぁ、僕魔法具使いまくってルークにギリギリかったけど」

 「マジ?」

 「うん。でも終わったら魔力切れで倒れた」

 「それ、大丈夫なのか」

 「平気。あれだよ。ほら、リアーナさん所で作った試作品の魔法を使えなくする空間を創る魔法具。あれしばらく使って、武器も奪ってそれでようやく勝てた…」

 本当、そこまでしないと勝てないのが悔しい。もっと魔力量があって、剣技の才能があって、運動ができて、魔法の才能があればきっとそんな風にしなくてもルークに勝てたんだろうけれども…。でもないものを嘆いても仕方ないから色々と強くなろうとしてるんだけど。

 「魔法具か…。俺魔法具くわしくねぇしなぁ。つか魔力切れで倒れるとか。俺ユウより魔力少ないから俺には無理な方法だな」

 「レオルドって、魔力少ないもんね。馬鹿力はあるのに」

 立ち止まってそうやってレオルドと会話を交わす。

 レオルドは腕力は強い方なんだけれども、魔力は平均よりも少ない。魔法もそこまで得意でもないし肉弾戦の方が好きっていう奴なのだ。

 「つーか、アイツが何でもできるのが異常なんだろーが!!」

 「まぁね。さてと、僕今バイトの休憩中だしちょっとルーク見てバイト戻るから」

 「ああ…。俺はあいつとカトリーナが一緒に居るの見たくないし他ん所行く」

 「うん」

 そのまま僕はレオルドと別れて、ルークが居るであろう方面へと向かった。






 

 「ルークさん、これ食べてください」

 にこにことそういって、メキシムが皿に置かれた料理を差し出している。

 それは割と簡単な野菜炒めや卵焼きなどの料理。前にお弁当を作ったといってメキシムが差し出してきた時も、簡単な料理ばかりだったから、多分メキシムは習いだしてまもないのだろう。

 難しい料理はできないから簡単なものを作ったのだ。

 丁度、今は学園ハーレムの連中の料理が出来た所らしかった。地元ハーレムの人達のはもう終わったのか、この後のようだ。

 「ルークさん!! 出来ましたわ」

 アイワードがそういって差し出すのは…、何が何だかわからない物体だった。

 というか、あれ料理? と思うような謎の物体。何のつもりで作られたかは一切不明。見てて何かわからない。でも食べたら体に悪そう。

 「ルーク、見ろ。自信作だぞ」

 とかいっているアフライ先生の料理も同様、なんかアレだった。

 見ていて本能的に食べない方が良いと思わせるような見た目。あれどうやって作るんだろう。作れって言われても普通に作れない気がする。何をどうしたら料理なの? と思うようなものが出来るんだか…。

 「ルー君、出来たよー」

 マー先輩はにこにこと可愛らしく笑っている。

 差し出したのは、魚の煮つけやサラダなど結構な品数だ。料理になれているのかもしれない。マー先輩は。美味しそうだ。

 能天気に笑っているルークはともかく、他の審査する住人達がアイワードとアフライ先生の料理に何だか青ざめているのはきっと見間違いではないだろう。

 実際、僕もあんなもの食べたくない。

 地元ハーレムは食べられるくらいにもう成長を遂げているのだが…、あの二人はきっと料理した事ないのにやってミスしてアレが出来たって事だろう。

 とりあえず、僕は他の見物者達と一緒にただ視線を向けていた。

 ルークは、差し出された順に料理を食べる。メキシムの料理はお弁当を作っていただけあって食べられるらしい。

 その後のアイワードとアフライ先生の料理は言うまでもないだろう。ルークは顔を一気に青ざめて、慌てて水を流し込んでいた。だけれども、「おいしかった…」と頑張って言うあたりルークらしい。

 他の審査の人間達は恐る恐る食べて、「まずい」と正直に答えていたけれども…。

 マー先輩の料理は割と好評だった。審査員に美味しいと言われて、にこにこしていた。そんなマー先輩をアイワードとアフライ先生は凄い睨んでいたけれども…。

 睨まれても凄くいい笑顔浮かべているマー先輩は、ルークに料理の事で話しかけている。

 それにしてもアフライ先生ってセト先輩に言われて、学校では自重してたっぽいけど外では本当に相変わらずでしょうもないなぁとただ思った。

 まぁ、地元ハーレムとマー先輩がいるならもしあの料理か何かわからない物体のせいでルークが体調崩しても何とかなるだろう。僕はそう結論づけて、バイトしなきゃなぁとそのままお店に戻ったのであった。

 ルーク達が海にいってる間に僕は家に帰ろうかなぁ…。それが一番平和そうだ。



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